佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

二月の読書メーター

2月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:4282ページ
ナイス数:2213ナイス

 

先月もたくさんのナイス☆をいただきました。ありがたいことです。

『Story Seller』は第一弾、第二弾ともに読みごたえあり。杉浦日向子氏のエッセイ『うつくしく、やさしく、おろかなり』も素晴らしかった。他の作品も読みたい。連城三城彦氏の『戻り川心中』は実に味わい深いミステリであった。山本兼一氏の『利休にたずねよ』もさすがは直木賞受賞作だけあって読み応え充分。山本氏の小説を読むのはこれがはじめてだったが、別の作品も読みたい。『火天の城』にロックオン。

Story Seller (新潮文庫)Story Seller (新潮文庫)
読みたかったのは「プロトンの中の孤独」(近藤史恵)。やはりイイ。ロードレースものとして『サクリファイス』のサイド・ストーリー的な物語だ。男たちを惹きつけてやまないロードレースという競技の本質を見事に描いている。伊坂幸太郎氏、有川浩氏はそれぞれ持ち味を存分に発揮している。道尾秀介氏「光の箱」はとても素敵な物語に仕上げているものの、氏の世界に私は違和感を持つ。逆に米澤穂信氏、佐藤友哉氏、本多孝好氏はそれぞれ独特の世界観と作風に唸った。三氏の小説を読むのはこれが初めてだが、他の作品も読んでみたい。
読了日:02月03日 著者:


偽小籐次―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)偽小籐次―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)
ついに十六、七年もの間、想いを寄せたただ一人の女(ひと)、おりょう様と……。これは夢じゃ、夢にございますな。夢なら醒めんでくれ。あぁ……ついに……
読了日:02月05日 著者:佐伯 泰英

 


うつくしく、やさしく、おろかなり―私の惚れた「江戸」 (ちくま文庫)うつくしく、やさしく、おろかなり―私の惚れた「江戸」 (ちくま文庫)
「ソバ屋で憩う」を読んで以来、杉浦氏の世界に傾倒しつつある。杉浦氏が惚れ込んだ江戸風俗について存分に語って下さっています。二六〇年にも及ぶ泰平の世にあって形作られた江戸という町と風俗、そこには「無用の贅」という座興に価値を見いだす「粋(イキ)」という美学が息づいていた。それは、現代において一部の高等遊民のみが獲得しうる境地であろう。そのような精神の高みに一般庶民(それも裏店に住むような貧しい者までも)が到達した「江戸」という時代に驚きを禁じ得ない。日本という国に生まれたことがちょこっと誇らしく嬉しい。
読了日:02月07日 著者:杉浦 日向子

 


杜若艶姿―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)杜若艶姿―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)
「杜若艶姿」には(とじゃくあですがた)とルビが振ってある。「杜若」をカキツバタと読むならば、カキツバタの艶やかな姿とは何を指しているのか。やはりおりょう様であろう。「いずれがアヤメかカキツバタ」という言葉もあるが、カキツバタおりょう様とすれば、アヤメは水野家の奥方お登季様だろうか。その二人をエスコートしてモクズガニ似の不器量小籐次が芝居見物に出かける。こういっちゃなんだが小籐次に華やかな表舞台は似合わない。しかしまあ、これも小籐次の十数年にわたる秘する想いに対する著者のプレゼントか……
読了日:02月08日 著者:佐伯 泰英

 


殺人にうってつけの日 (新潮文庫)殺人にうってつけの日 (新潮文庫)
主人公には復讐すべき理由が充分すぎるほどある。元KGBのスパイの裏切りにより投獄され、しかもそいつに妻まで奪われたのだ。しかしこの主人公がまた悪党なのだ。CIAのエージェントでありながら、祖国を裏切りKGBに情報を流すは、妻には虐待を加えるはというとんでもない野郎である。金と快楽のために人を利用することなど屁とも思っていない自己中。読者としてはとても感情移入できない。しかし、読み始めたが最後、因縁のスパイ同士が追う側、追われる側として繰り広げる心理戦から目が離せなくなり、一気読み。
読了日:02月10日 著者:ブライアン フリーマントル

 


戻り川心中 (光文社文庫)戻り川心中 (光文社文庫)
花にまつわる五編のミステリ。描かれているのは恋。いや、秘めたる深い情念という意味では「色」といったほうが適切か。私がこの物語にみたのは滅びの美学、そして耽美。男と女の情念を深くえぐって描きながらも、書き手自身の心は醒め、まなざしはあくまで冷徹と見える。作者は登場人物の激情をいかに読者に伝え汲み取らせるかを計算しつくして書いており、作者の抑えた筆致に、かえって読者は登場人物の心情を己の心の目を通して慮ることとなる。謎解きの妙味も素晴らしいが、読者が真に唸らされるのは主人公が罪を犯したその動機である。
読了日:02月16日 著者:連城 三紀彦

 


武士道エイティーン (文春文庫)武士道エイティーン (文春文庫)
本筋と関係ないのだが、前作を読んだ後、私はひそかに香織が中学の剣道部で一緒だった清水の存在に注目していた。清水君はヘタレで糞握りで優柔不断な男。案外さっぱりと男前な性格の香織の母性本能をくすぐって、意外や意外……などという驚きの展開をちょっぴり期待たのだが、ほんのちょい役での登場にとどまった。まぁ、当然でしょう。なにせ、「ヘタレで糞握りで優柔不断」ですからねぇ。しかし、私は諦めない。清水君がいつか大人になった香織の前に現れた時、高校の頃とは似ても似つかぬ凛々しい男になっていたりして……と私の妄想は膨らむ。
読了日:02月17日 著者:誉田 哲也

 


利休にたずねよ (PHP文芸文庫)利休にたずねよ (PHP文芸文庫)
利休はどうして秀吉から死を賜ったのか。作者の解釈は誰よりも優れた審美眼を持ち、いつも取り澄ました利休の態度が秀吉にすれば自分が蔑まれているように感じられ逆鱗に触れたというものであろう。では、利休はなぜ、命がかかる局面に際してなおその態度を改めようとしなかったのか、秀吉に詫びることを拒んだのか。それを時を溯って解き明かしていく。天下人・秀吉を単なる独善的な暴君とし、石田三成を偏狭で邪な男として描いていることに些かの不満をおぼえるものの、歴史小説として、ミステリとして、恋物語として存分に楽しみました。
読了日:02月22日 著者:山本 兼一

 


二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
読み始めてはたと作者名を再確認。デイヴィッド・ゴードンとある。ハンドラーではない。私が一時期はまっていたデイヴィッド・ハンドラーの小説家探偵ホーギー・シリーズにテイストが似ている。売れない小説家で、ちょっと頼りなく、頭は良いけどそれをひけらかさない凡庸さ、決して強くはないけどちょっとした勇気はある。そんな主人公、ハリー・ブロックがステキだ。そして、そのパートナーのクレアが可愛い。ハリーのお母さんが死に際に遺した「あと数年待って、クレアと結婚しなさい」の言葉どおりになるのかならないのかを知りたい。続編希望。
読了日:02月25日 著者:デイヴィッド・ゴードン

 


Story Seller〈2〉 (新潮文庫)Story Seller〈2〉 (新潮文庫)
お気に入り順:①近藤史恵(ぶっちぎり、物語の結末もぶっちぎり)②本多孝好(弥生さんのキャラに特別ポイント)③沢木耕太郎(この人のエッセイは格別)④伊坂幸太郎(前作「首折り男の周辺」との繋がりが楽しませてくれる)⑤佐藤友哉(前作「333のテッペン」のシリーズ物として良し)⑥米澤穂信(登場人物の魅力に欠ける)⑦有川浩(有川さんは私の大好きな作家さんだが、前作「ストーリー・セラー」も今作もいただけない。物語のシチュエーションからすれば仕方ないとはいえ、人に対する非難攻撃ばかりを読むのはつらい。敢えて、最下位)
読了日:02月28日 著者:

2012年2月の読書メーターまとめ詳細
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