佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

顔をなくした男

おれは自殺を考えたことなど、絶対に、一度としてない。だが、最終的には殺されるということは、意識の深いところで受け入れている。おれを亡き者にしようと躍起になっているグループのどれかに殺されることになるのだろう、と。

だが、それは馬鹿げているし、ありそうにもかいことだ。おれは何に対しても、だれに対しても、降伏したことは一度もないし、自ら仰向けになって寝転がり、大人しく両足を広げるつもりもない。この人生がどんなに困難であろうと、あるいは、無意味であろうともだ。

                                   (本書上巻P23より)

 

 

『顔をなくした男 上・下』(ブライアン・フリーマントル・著/新潮文庫)を読みました。

一見、風采のあがらないチャーリーだが、実は見かけによらない切れ者。というより、野暮ったい見かけは”切れ者”であることを人に悟られないための隠れ蓑なのです。チャーリーにとって、人の裏をかき、”自分だけが”生き延びることが至上命題であって、人の評価など二の次であった。しかし、今回は違う。妻ナターリヤと娘サーシャに危険が迫っている。自分が生き延びることより二人を守らなければならない。果たしてそのことがスパイのチャーリーにとってアキレス腱となるのか、あるいは妻子を思う強い心がチャーリーをさらに強くするのか、やきもきする展開です。そして下巻を読み切ったところでチャーリーが絶体絶命のピンチ!! いったいどうなるのだーというところで次作につづくである。こうなることは分かっていたが、つらいよー新潮社さん。早く読ませろ、早く出版せよ新潮社、早く翻訳せよ戸田さん。続けて読んでいても外国人の名前は覚えにくいのだ。登場人物を忘れてしまうじゃないの。おねげえしますだ~~新潮社様、戸田裕之様 m(_ _)m

 

裏表紙の紹介文を引いておきます。

 


 

(上巻)

MI5のチャーリー・マフィン、ついに引退――。ロシアの陰謀を暴き、英国の危機を救いながらも例によって淡々と祖国へ戻ったチャーリーを待っていたのは政府からの引退勧告だった。彼の素性が割れてしまい、諜報活動はもはや困難だというのだが……。そんな折に持ち上がったロシア高官の亡命話。チャーリーはモスクワに残した妻子の安否に危機感を募らせる。大好評シリーズ開幕!

(下巻)

 ロシア連邦保安局副長官の亡命計画にMI6も乗り出し、事態は内部抗争の様相を呈しだした。政府や同僚の助けを得られぬばかりか尾行まで張りついたチャーリーは、それでも密かにイギリスを出国、妻と娘を逃すべくモスクワへと向かう。孤立無援の潜伏生活の末に、やっとの思いで接触した妻ナターリヤは、だがこの計画に動揺する。頑ななまでに怯える妻の陰には新たな陰謀が――?

 


 

 (2012/6/3 読了)