佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

6月の読書メーター

2013年6月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3973ページ
ナイス数:2888ナイス



そんなバカな!―遺伝子と神について (文春文庫)そんなバカな!―遺伝子と神について (文春文庫)感想
人間たるもの所詮は利己的遺伝子<セルフィッシュジーン>と利己的ミーム(両方併せて利己的自己複製子<セルフィッシュリプリケーター>)の乗り物<ヴィークル>なのであって、どうあがこうともその事実からは逃れられない。これが本書に一貫して流れる考え方である。我々が何らかの行動(それが他から賞賛されようと、軽蔑されようと、生き延びようとする行動であろうが、破滅の行動であろうが)をとろうとするとき、すべては遺伝子によってプログラムされたものなのだと。それを理解した今、私の世界を見る目は全く変わってしまった。
読了日:6月1日 著者:竹内 久美子


あやしい探検隊 焚火酔虎伝 (角川文庫)あやしい探検隊 焚火酔虎伝 (角川文庫)感想
シーナ調昭和軽薄体は平成の世が長くなった今も錆び付くことなく矍鑠たり。この文章に「重厚長大」という言葉ほど無縁な言葉はなかろう。かといって「軽薄短小」かといえばさにあらず。では「軽佻浮薄」かといえば、これまた当たらない。軽妙に語られる内容は、実はシーナ氏の確固とした考えに裏付けられており、ちゃらちゃら浮ついたものではないのである。シーナ氏の一言で集まり、海に、山に、川に、島にどかどかと踏み入って焚き火を囲んで旨いものを食い酒を飲む。ここには昭和のニオイが染みついたオジサンの正しい姿がある。
読了日:6月3日 著者:椎名 誠

 

 

 

男坂 (文春文庫)男坂 (文春文庫)感想
あぁ・・・なんてカッコイイんだ。収録された七つの短編、すべてが終わりの一文にしびれる。この余韻。これぞシミタツと思わせる。余計な説明をしない削ぎ落とされた文章。しかし志水氏が読者に伝えたいものは確実に伝わってくる。この文章は計算し尽くされ考え抜かれた職人技と云えるだろう。登場人物の魅力も独特である。人生の下り坂を迎えた男。決してヒーローではない。強くもない。それでもカッコイイのだ。彼らに共通するもの。それは寡黙であること。損得で動かないこと。己の中に規範を持っていること。それが生き方として下手であっても。
読了日:6月6日 著者:志水 辰夫


アザラシのひげじまん (文春文庫)アザラシのひげじまん (文春文庫)感想
つまらん若者にはスルドイ「世の中なめんなよ。バキッ!」光線を浴びせ、神聖な大自然にはひたすら畏敬の念と穏やかな視線をそそぐ男、椎名誠。彼を取り巻くアホバカ野郎とともに昼は砂浜で野球に興じ、夜は焚き火料理で酒を飲む。今日も西に東に北に南に人と出会い、うまいものと出会い、ヘンなものと出会う。そうした椎名氏の日常は一般人にとっては非日常であって、ウヒヒと訳の分からない笑いとともについつい読み進めてしまうのである。それにしてもいつも便所がらみの話題が多いなぁ。
読了日:6月8日 著者:椎名 誠


図書館危機図書館危機感想
うわぁ~、こりゃたまらん。赤面することしきり。有川氏の妄想全開にして、今更ながら氏が女子であったことを再確認。相変わらずのツンデレぶりも最高潮にして、胸きゅんきゅん。って、五十過ぎのオッサンにこんなレビュー書かせるなっちゅうねん!! 恥ずかしながらシリーズ第四弾『図書館革命』も読むぞっ! なんじゃそりゃ。(余談ではあるが「床屋」というのは不適切な言葉なのか? マスメディアってのはつくづく上から目線で心の底では他者を見下しているからなぁ。おまけに偏見を持っているのは自分たちだと気づかない鈍感さ。あぁイヤだ)
読了日:6月9日 著者:有川 浩


HEARTBLUE (創元推理文庫)HEARTBLUE (創元推理文庫)感想
論語に「父は子の為めに隠し、子は父の為に隠す、直きこと其の内に在り」とある。法律上正しい振る舞いも、情に適っていなければ正しいとは言えないのではないか。たまに間違ったことをしてしまうことがあっても、人を思いやり真面目に生きている者が平穏に生きられることを大切にする。小路氏の価値観はそこにあるのではないか。厳格に法を守ったとして、それが真っ当な人間を不幸にするとすれば、そのことに何の意味があるというのか。小路氏の描く世界は人を思いやる温かさにあふれている。幸せを願って真っ当に生きている人に幸多かれと祈る。
読了日:6月12日 著者:小路 幸也


出世花 (祥伝社文庫)出世花 (祥伝社文庫)感想
四つの短編すべてが切ない話だが、わけても「落合螢」がやるせなく心に残る。お縁の中に岩吉を密かに慕う気持ちが芽生え始めていたのではないか。岩吉には慕う相手として、お紋よりお縁こそが相応しかったのにと悔やまれる。しかしそれが恋というものだろう。「恋に落ちる」とはよく言ったものだ。お縁が岩吉を想う気持ちは「愛しみ」、岩吉がお紋を想う気持ちは「恋」と言うことか。
読了日:6月14日 著者:高田 郁

 

 

図書館革命図書館革命感想
ついに図書館シリーズ完結編。本が検閲され、権力に不都合な発言が抹殺されるというディストピア小説として、甘々悶絶ラブコメとして存分に楽しみました。ただ本書の中ではメディアは弾圧される側として描かれていますが、現実にはメディア自身による差別的用語の自主規制が気になるところ。メディアに良識があるというのは幻想であって、それどころか浅はかで偏った考えにをまき散らし、さもそれが正しいかのように振る舞うマスメディアにこそ危険を感じるのは私だけでしょうか。だからといってマスメディアを規制せよとは言いませんけれど。
読了日:6月17日 著者:有川 浩


一夢庵風流記 (集英社文庫)一夢庵風流記 (集英社文庫)感想
私の好きな重松清氏の短編『シド・ヴィシャスから遠く離れて』に「パンクは生き方じゃない、死に方だ」という一説がある。パンクを傾奇者に置き換えてもスッキリなじむ気がする。薄汚く生きるくらいなら美しく死ぬ。そうすることで人の記憶の中で美しく生き続ける。つまり死に様を考えて生きる。だから褌は己の心のように真っ白であらねばならないとする。美しい死を心の底から欲しても類い希な強さ故生き残ってしまう男の美学。それは滅びの美学。勝つ側に味方するなどと薄みっともないことはしない。辛苦(たしな)みつつ降(くだ)る男は美しい。
読了日:6月20日 著者:隆 慶一郎


眠りの森 (講談社文庫)眠りの森 (講談社文庫)感想
いかにも犯人につながりそうな伏線に翻弄されてしまった。叙述トリックにも騙されっぱなしである。東野圭吾氏にもてあそばれた感じである。クヤシイぞっ! しかし私の躰はもうミスディレクションの罠にはまる快感を覚えてしまったのだ。もう昔のような自分ではないのだ。本棚にずらりと並んだ積読本の中から加賀恭一郎シリーズ第3の事件『どちらかが彼女を殺した』が「次は私を手にとって」と誘ってくる。抗いがたい魔力。あぁ、もうどうにでもしてくれっ。弄ばれる快感に墜ちてゆく~~~。
読了日:6月22日 著者:東野 圭吾


どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)感想
東京で孤独に暮らすOLに不意に訪れた恋。倖せも束の間、恋人と親友に裏切られたうえ自殺に見せかけられての死。ただ一人の肉親の兄は二人の非道を探り出し「てめえら人間じゃねぇ」とばかりに復讐に動く。復讐ものの面白さ。冴え渡る推理。偽のアリバイを崩し、容疑者の嘘を鋭敏な頭脳で見抜き真実に迫る快感。さらに最後の最後、二人のうちどちらが殺したかをあえて書かず、その真相を読者に推理させるという斬新且つ挑戦的な趣向。出だしから読者の心をつかみ、最後の最後まで息もつかせぬストーリー展開。これぞ東野マジック。いいじゃないか!
読了日:6月24日 著者:東野 圭吾


かぶいて候 (集英社文庫)かぶいて候 (集英社文庫)感想
此れも隆慶一郎氏の遺作とは。『死ぬことと見つけたり』『花と火の帝』もそうであった。飛び切りおもしろい小説が不意に途中で読めなくなる悔しさは筆舌に尽くしがたい。かつて椎名誠氏が『もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵』に著した苦悶に匹敵するほどの苦しさに悶え苦しんでおります。おそらく隆氏は「死ぬときが来たから死んだ。それだけのこと」と仰るのだろうが、読み手にとっての喪失感は甚だしい。残された我々読み手は図らずも消えてしまった物語の余韻を味わい、隆氏が思い描いていたであろう展開に思いを馳せるしかない。
読了日:6月26日 著者:隆 慶一郎

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