低い峠を越えると耕地が現れ、農協前のバス停にとまる。
「しばらく停車します。ふつうに走っているんですが、早く着いてしまうんですよ。毎度すみません」
と運転手。車内に笑い声があがる。
(本書P271より)
『ローカルバスの終点へ』(宮脇俊三・著/洋泉社新書y)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
何もないところには何もないなりの良さがある!
普段、鉄道の車窓から見ていた
ローカルバスに心惹かれた著者が、
二万五〇〇〇分の一の地図を片手に、
鉄道も通わぬ「僻地」巡りの旅に出る!
中空を行くかのような尾根道や、
ミカンの段々畑に被われた岬・入江などを通って、
北海道から沖縄まで、二三の路線バスの終点を訪ねる。
そこはローカル鉄道の終点よりも鄙びた風情があった----。
現在の終点へのアクセス情報も掲載!
有名観光地でない行先、乗車時間は1時間以上という条件で鄙にある路線バスの終点を訪れる旅。なんともそそられる企画ではないか。運行が一日二回だけといった不便なところもあるが、その不便を楽しむというのもイイ。その地には寂れつつもありふれた日常がある。しかしそのありふれた日常はいまや我々にとっては非日常だ。鉄道の旅も良いが、その先にあるバスの旅はさらに良い。「のびゆく四方へ幾路線♪」という某バス会社の社歌を口ずさみながら、楽しく読んだ。特にそそられたのは岡山県の吹屋と青森県の九艘泊。いつか訪れることになるだろう。