佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

古書店・小松堂のゆるやかな日々

「このハンドスープ、よう泡だってええね。僕、こんなんあるん、知らんかったわ」

「さなえちゃんはハンドスープ買わないんですか。ハンドスープは便利ですよ」

「うん。うちは固形石けん派でハンドソープは買いません」

「あ」

 というと、小松さんも、あ、と言った。

「ソープってちゃんと言うてもた」

 小松さんにはこういうところがある。真面目なんておもんないんです、と。知ってるのに知らんふりできる人間がカッコええんです、と。

                                       (本書P198-199より)

 

 

 

古書店・小松堂のゆるやかな日々』(中居真麻・著/宝島社文庫)を読みました。

 

まずは本の裏表紙の紹介文を引きます。


ひょんなことから神戸元町古書店・小松堂で働くことになったアラサー主婦の波子。市役所を“脱藩”して趣味の古書店を始めたという店主・小松さんと、古書店に集う愉快な仲間たちからの“いい感じにゆる~い”アドバイスを聞きながら、波子は自身のつらい恋愛にある決断を下す…。古書店好き必読!店主・小松さんの不思議な魅力に思わずハマる、傑作長編小説。


 

 

 

 男と女は別の生き物だと云います。男女の違いは人間とサルの違いより大きいとも云いますね。この小説を読んでいて、ふとそんなことが頭をよぎりました。私には女というものが解らないし、ときどきその解らない生き物を少々怖いとも感じてしまいます。

 話は変わりますが、私は著者が働いていらっしゃった古書店に行ったことがあります。小説に書いてある神戸元町古書店ではなく、姫路にある「風羅堂」という書肆です。書肆と名乗っている古本屋です。著者とも直接話をし、御著書にサインをしていただきました。その書肆の店主とも顔見知りにならせていただき、ときどき書店奥のカウンターでコロナビールを飲んで売上げに貢献しています。主人公の女性の気持ちはさっぱり解らないけれど、古書店のゆるやかな空気はよく解る。特に詩人でオヤジバンドのメンバーの店主の周りに漂うゆるーい空気はリアルです。

 さらに話は変わります、中居さんはもう少し言葉を選んだ方が良いと思います。読んでいて今時の若者の言葉にも引っかかりを感じるし、使い方自体を間違っているのではと疑わしい表現もあったりします。たとえば「えてして、それはまったくの嘘ではない」という表現がありますが、私が思うにこれは「あながちそれは嘘ではない」あるいは「まんざらそれは嘘ではない」と云うほうがしっくりくるのではないでしょうか。このあたり、宝島社の編集者はどう考えていらっしゃるのか興味があります。あ、またこんな小賢しいことを云ってしまいました。あかんなぁ。こんなこと書いていると小松さんに怒られてしまうなぁ。ごめんなさい。