佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2014年の読書メーター(2)

災いの古書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)災いの古書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
大好きな古書にまつわるミステリ「クリフォード・ジェーンウェイ・シリーズ」第四弾。やっぱりええわ、このシリーズ。五五〇ページ近い長編も、物語に引き込まれて時間を忘れて没頭してしまいました。今巻も意外な結末に驚き、ミステリとしてレベルが高い。しかし、このシリーズの味わいは物語すべてに漂うビブリオマニアの雰囲気。私のような書痴にとって、こうした世界に彷徨えるひとときは堪らなく魅力的です。次作『愛書家の死』も既に購入済み。本棚で私の手に取られる時を今か今かと待ち受けている。他にも読みたい本がある故しばし待て。
読了日:5月4日 著者:ジョンダニング


背表紙は歌う (創元推理文庫)背表紙は歌う (創元推理文庫)感想
巻末に「取次にも愛を!」という文章を寄せていらっしゃる日本出版販売(?)の古幡瑞穂さんによると、「今、日本国内には約1万3千軒の書店と4万軒以上のコンビニエンスストアがあり、出版社は約4千社あると言われている。そして毎日毎日新しく200点の書籍と200点の雑誌が発行され、我が社だけでも100万冊の既刊書籍が流通している」とのこと。そうか、本業界の要となっておるのだな。素晴らしい仕事ではないか! 感謝するぞ、取次! ガンバレ、取次! 取次に愛を! 行きつけの書店のカワイイ書店員さんに神の祝福を!(笑)
読了日:5月6日 著者:大崎梢

 


変見自在 サンデルよ、「正義」を教えよう変見自在 サンデルよ、「正義」を教えよう感想
いつもながら髙山氏の「変見自在」は痛快です。訳知り顔の学者や左翼系新聞をバッサリ。自分たちのしてきたことは棚に上げて、有色人種をそれこそ色眼鏡で見る欧米の欺瞞を暴く。中韓の品性のなさを鋭く指摘。我々がマスコミ報道で知らされてきたことには、実は別の側面や裏があって、我々が正しいと信じていることは実は間違っている、などなど・・・。もちろん髙山氏の言うことにも間違いやウソは含まれているのだろう。しかし戦後、日本人が鵜呑みにしてきた(そう仕向けられた?)ことは本当に公正なのだろうかと疑問を持つことは大切だろう。
読了日:5月7日 著者:高山正之

 


ななつのこ (創元推理文庫)ななつのこ (創元推理文庫)感想
初・加納朋子さんです。厳密に言うとアンソロジーで短編「ささらさや」を読んだことがあるのでセカンドかもしれないが。「ささらさや」がとてもよかったのでずっと気になっていた作家さんです。ものすごくよかったです。心から良い本に出会ったと言えます。いつの間にか日常の謎に心惹かれ作品世界にひきこまれている。しかもその世界は何ともなつかしく、あたたかく、せつなくもある快いところなのだ。誰かから「あなたのお薦めの本は何ですか?」と訪ねられたら、きっとこの本をそのうちの一つに揚げると思う。
読了日:5月17日 著者:加納朋子

 


銀の匙 (岩波文庫)銀の匙 (岩波文庫)感想
作者の大人になるまでの心象風景がとりとめもなく延々と綴られるいわゆる「私小説」。告白を基本としており、たとえば伯母さんが無条件に自分を愛し、常に自分の側にたってくれたといった記憶を、思い出すまま細大漏らさず書き留めている。決して自分が「何かを失った」とか「壊れた」といった破滅型心象を描いていないところが好ましい。とはいってもいささかの自己憐憫を交えて書いてはいるのだが、このあたりは決して嫌みに感じられない程度の味わいと言ってよいだろう。幼い頃のことをこれほどのみずみずしさで克明に覚えていることに驚嘆。
読了日:5月26日 著者:中勘助

 


珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
面白くなくもない。などと中途半端な、しかも文法的に問題のありそうな感想を述べては作者の岡崎琢磨氏に非常に失礼なのだが、こと「3」に関してはそのような感想となった。「3」を読んでいるからには「1」「2」を読んで気に入っているという前提があるのだ。アオヤマの茶目っ気、美星の遠慮無いツッコミ、そして二人の間に漂う微妙な空気、そうしたものが今巻ではなりをひそめている。キメ言葉の「その謎、大変よく挽けました」もない。まるで印籠を持たない水戸黄門ではないか。シリーズとして読んでいるものとしてはちょっと残念でした。
読了日:5月29日 著者:岡崎琢磨

 


日本全国食べつくし! 極楽おいしい二泊三日 (文春文庫)日本全国食べつくし! 極楽おいしい二泊三日 (文春文庫)感想
二泊三日の旅をするとしたら、旅先で昼・夜・朝・昼・夜・朝・昼の食事にこだわりたい。この考えは全く正しい。酒にもこだわりたい。この考えはさらに正しい。尾道「しみず食堂」「朱華園」、阿倍野明治屋」、祇園「サンボア」、名古屋「あつた蓬莱軒」「いば昇」、本書で紹介された店で私が行ったことがある店はせいぜいこんなところで、ほとんどの店は未体験である。早速、未踏の店すべてのホームページをEvernoteに登録。死ぬまでにどれだけ行けるだろう。愛車ビアンキを携えて全国うまいもん食べ走り旅に出かける、これが私の夢・・・
読了日:5月30日 著者:さとなお

 


タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)感想
持ち歩いていた本を読み切ってしまい、活字禁断症状から本屋に飛び込み、ふと手に取った一冊。『サクリファイス』をはじめとしたロードバイクが主題のミステリにぞっこん惚れ込んでいる私としては、近藤史恵氏の文庫を見ただけで手に取ったのはいうまでもない。ましてそれが食べ物にまつわる日常のミステリとくればなおさらだ。最初こそ物足りない気がしたが、どうしてどうして、じんわり胸が熱くなる良い短編ぞろいでした。おっと、『サヴァイヴ』も三日前に文庫発売になっているではないか。これも急いで読まねば。
読了日:5月31日 著者:近藤史恵

 


サンタクロースのせいにしよう (集英社文庫)サンタクロースのせいにしよう (集英社文庫)感想
「日常のミステリ」分野の名著との評価を目にして読んでみた一冊である。登場人物が魅力的で会話が軽妙、しかも知的ときている。いいですよ、ホント、なかなかいい。主人公の柊子、そして柊子と一戸建てをシェアしている銀子、はたまた二人の共通の友人である夏見、この三人の愛すべきキャラクターがいつの間にか好きになっていた。ずっと彼女たち物語を読んでいたい気分だ。私にとってこういう小説を読んでいる時間こそが「日常」。人から見ればムダな時間かもしれない。しかし、何気ないムダを愉しむことこそ贅沢というものだ。悪くない。
読了日:6月3日 著者:若竹七海

 


サヴァイヴ (新潮文庫)サヴァイヴ (新潮文庫)感想
前二作『サクリファイス』『エデン』の外伝としての六つの短編。ロードレースはエースを勝たせるために他のチームメイト全員がアシストにまわるという駆け引きのゲームという点で、レースそのものがミステリですね。全員の思いを受けとめて責任を引き受けるエースもかっこいいが、自分の名前は残らなくともエースの勝利に貢献できるなら本望というメンタリティーが限りなくかっこいい。まるで『葉隠』記された「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」ではないか。ロードレースには「武士道」に通じる精神がある。
読了日:6月7日 著者:近藤史恵

 


ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)感想
性悪で人種差別主義者のフランクリン・ルーズベルトいけ好かないヤツだと言うことはこの際横に置いておく。真っ当に生きている者が理不尽にも窮地に陥り、邪なヤツの度重なる妨害工作にもめげず、最後には正義が勝つという池井戸さんお得意の水戸黄門的展開である。やはり読んでいて楽しいし、胸のすく読後感は鉄板の面白さ。どうも池井戸さんの小説を読むと、次も池井戸さんのものを読みたくなってしまうんだなぁ。さて、次は何を読もうか・・・
読了日:6月8日 著者:池井戸潤

 


クジラの彼クジラの彼感想
自衛隊、制服、ツンデレ、有川さんの妄想全開である。読み終えて、私はもうメロメロである。こんなコメント、五四にもなるオッサンが吐いてはいけない。いや、それ以前に、かような読み物を手にとってはいかんのだ。昨日、部下の結婚披露宴に出席したせいで油断してしまったのか、本棚に並ぶ積読本のなかからついつい選んでしまったではないか。かようなベタ甘のラブコメは身体に毒だ。高脂血症が悪化したに違いない。しばらくは有川氏の恋愛ものはひかえなければ・・・本棚にある『ラブコメ今昔』は当分の間、封印する。
読了日:6月8日 著者:有川浩

 


プリズム (幻冬舎文庫)プリズム (幻冬舎文庫)感想
次はどうなるのか気になり、ぐんぐん読み込んだ。一気読みである。しかし興味は持てるが感動がない。おそらく登場人物に自己を投影できないからだろう。同じことは『モンスター』でも感じたのだが、ハラハラさせられるTVドラマを視ている気分だった。小説は読者に感動を与えなければならないというルールはない。物語として充分読ませるし、興味を惹かれたのも事実だが、百田氏ならこれに感動をのせることが出来たのではないかと思うと少し残念。百田さん、私、無理を言ってますか?
読了日:6月10日 著者:百田尚樹

 


シャカリキ! (小学館文庫)シャカリキ! (小学館文庫)感想
原作は曽田正人氏のコミックらしい。映画にもなったのですね。小説がコミックや映画になったときに小説を超えられないように、コミックが小説になったとき、その小説はコミックを超えられないのだろう。小説としてある種の物足りなさを感じてしまった。どちらが上で、どちらが下というものではなく、それにあった表現方法があるということなのだろう。とはいえ、充分に楽しませていただきました。相当熱くなりました。どのくらい熱くなったかというと、へたれチャリンコ乗りの私でさえ、ヒルクライムをやってみたいと思ったくらいです。(笑)
読了日:6月11日 著者:丹沢まなぶ,曽田正人

 


甘露梅―お針子おとせ吉原春秋 (光文社時代小説文庫)甘露梅―お針子おとせ吉原春秋 (光文社時代小説文庫)感想
苦界に身を置く者は仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌の八徳を失った者として亡八と呼ばれる。苦界に身を沈めてなお人は夢や希望を持つことがある。そのようなものを持つことが許されないことと知りつつ、それを止めることが出来ない哀しさ。そうすることがかえって自分を苦しめることになると知りながら。失った徳の中に「情」は無い。自由をほとんど奪われてはいても、わずかに「情」に人間らしさを残そうとする女の胸にあるのは「矜持」、いや、人として認められない身の上にあって、それは「意地」と言い換えたほうががよいのかもしれない。
読了日:6月15日 著者:宇江佐真理

 


セカンドウィンド〈1〉 (ピュアフル文庫)セカンドウィンド〈1〉 (ピュアフル文庫)感想
『シャカリキ!』を読んだ勢いで、本棚に積読本となっていた本書を手に取った。坂道をロードバイクで下るが如く一気読みであった。「どうして、こんなに辛い思いをしなければならないのだろう?」 これは過酷なヒルクライムに挑戦した人の共通した思いだろう。楽になりたければ足を地面に付ければよい。だれもそれを止めはしない。問題は自分にそれを許すかどうかだ。自分に負けない。それこそクライマーの矜持。フォルツァ! ところで「Ⅱ」を未だ買っていない。続きが気になる~~うぉぉぉ~~悶悶悶! クロネコさん、お願い、明日には届けて。
読了日:6月17日 著者:川西蘭

 


銀輪に花束を (小学館文庫)銀輪に花束を (小学館文庫)感想
ロードバイクシクロクロスランドナー、車種は違えど旅の道具として人に寄り添ってくれるかわいい相棒だ。自転車、そして自転車とともに暮らすスタイルをいとおしむ著者の想いが伝わってくる。いつかランドナーで東北地方を気ままに北上したい。東北の自然、風景を愉しみながら、そこに住む人を感じひたすら北を目指す。目的などない。そんな旅をしたい。お気に入りのランドナーは用意している。ヘタレではあってもセンチュリーマイルを一日で走るだけの体力もなんとか維持している。あとは時間を手に入れるだけだ。待ってろよ、東北。
読了日:6月17日 著者:斎藤純

 


セカンドウィンド〈2〉 (ピュアフル文庫)セカンドウィンド〈2〉 (ピュアフル文庫)感想
Ⅱでは洋と岳は高校2年になって南雲学院高等学校の自転車競技部に所属している。Ⅰの最終場面「金剛ヶ峰自転車ロードレース」で二人とも好成績を残したのだ。二人ともチームの中心選手となり、競技者として順風に乗っているようだが、洋はスランプに陥る。洋が様々な人と出会い、経験を積む中で徐々にスランプから脱出できそうなところで幕を閉じる。友人の翠がフランスからスペインを旅する途中で洋に手紙を送ってきたという伏線が書いてある。ということはⅢではもしや舞台がヨーロッパに移るのかという期待を抱かせる。Ⅲを早く読みたい。
読了日:6月20日 著者:川西蘭

 


配達あかずきん―成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)配達あかずきん―成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)感想
最近大好きになった大崎梢氏の「日常のミステリ」もの。しかも書店ものである。これはもう完全にツボにはまってしまった。物語の舞台となる成風堂、素敵な書店です。素敵な書店といえば鳥取に「定有堂」という店があります。私はその店でハインラインの『夏への扉』を買ったことがあるのですが、その時のディスプレイが「猫の棚」(猫にまつわる本をあれこれ置いてあった)であった。本作「六番目のメッセージ」に『夏への扉』が登場し、それも「猫」が物語のエッセンスになっていることに不思議な縁を感じ、なんだかうれしくなってしまった。
読了日:6月21日 著者:大崎梢

 


晩夏に捧ぐ (成風堂書店事件メモ(出張編)) (創元推理文庫)晩夏に捧ぐ (成風堂書店事件メモ(出張編)) (創元推理文庫)感想
書店萌え~な私にはたまらない一冊ではある。長野にあるという「まるう堂」書店に行ってみたい。フィクションなのであるわけ無いか。それでもモデルになった店があるのなら教えて欲しいものだ。シリーズ第二作となる今作は長編となっているが、正直なところシリーズ第一作『配達あかずきん』のほうが好みである。軽く読めて心温まるエピソードを差し挟んだ短編にこのシリーズの良さがあるのではないか。今作『晩夏に捧ぐ』の謎は殺人事件ということもあり読後感が悪い。杏子と多絵の微笑ましい会話に救われるものの、やはり後味の悪さは否めない。
読了日:6月22日 著者:大崎梢

 


民子民子感想
尾道に行きたくなった。理由は尾道に住む人ならわかってもらえるだろう。猫の写真がよいが、それにも増して浅田さんの自筆原稿が素晴らしい。浅田さんは自分を「猫」だと言い張るが、猫にあの字は書けまい。
読了日:6月22日 著者:浅田次郎

 

 


パイナップルの彼方 (角川文庫)パイナップルの彼方 (角川文庫)感想
初・山本文緒である。北上次郎氏をして解説の中で「いやあ、読むなりぶっとんだ。ここには本物の才能がある!」とまで言わしめた小説となれば読まないわけにはいかない。私は北上氏を信用しているのだ。なるほど、頁をめくるごとに驚きがあります。ここに書かれているのはごく普通のOLの、ごく普通の日常であり、その日常の中での心象風景だ。しかしそのごく普通のOLの考えていることに驚きがある。いやいや、女性はコワイ。お人好しを絵に描いたような男の私などは、女性がほんとうに考えていることなど知らない方が幸せというものだ。
読了日:7月2日 著者:山本文緒

 


内なる敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)内なる敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
寡黙で心優しき知性派探偵アルバート・サムスン・シリーズ弟3弾。今作ではサムスンの探偵ぶりが後手後手にまわって冴えない。はっきり言って歯がゆい。いくらサムスンが真面目でありふれた探偵というキャラであっても、もう少し何とかならないのかとジリジリした。しかし事件解決後のサムスンのモノローグに味わいがあった。本作は手放しで推奨作というわけにはいかないが、地道にコツコツと調査を進める誠実な探偵という変な魅力は健在。マッチョでなく、天才的推理力も無い普通の探偵だが「なりたくない自分にはならない」という矜持が素敵だ。
読了日:7月6日 著者:マイクル・Z.リューイン

 


サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)感想
「君と語る永遠」に泣きそうになった。やっぱり書店はイイ。世の中には二とおりの人間がいる。書店で1時間でも半日でも、場合によっては一日でも過ごせる人とそうでない人だ。書店は興味と謎と発見と驚きとその他なんだかわからない何ものかに充ち満ちているのだが、その面白さ知ってしまうかどうかなのだろう。必ずしも書店の面白さを知った方が良いとは限らない。それはそれで人生という限られた時間の多くを本に絡め取られてしまう不幸でもある。しかしそこは本に惚れた弱み、「あなた(本)のための不幸ならよろこんで」ってなものだ。
読了日:7月12日 著者:大崎梢

 


被害者の顔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-6 87分署シリーズ)被害者の顔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-6 87分署シリーズ)感想
大好きな87分署シリーズの第5弾である。書かれたのが1958年というから私が生まれる一年前。古き時代の警察小説といった風情がなかなかよい。"KILLER'S CHOICE"(殺人者の選んだもの)という原題の意味が味わい深い。本書は早川書房から発売されている五六冊のうち五冊目。五六冊と言えば、現在の読書ペースでこのシリーズだけを読み続けても半年はかかる量。まだまだ先は長い。しかし楽しみな長さである。古本でぼちぼち買いそろえ、順番に読んでいくのは、私にとって極上の楽しみなのだ。
読了日:7月17日 著者:エド・マクベイン

 


本をめぐる物語 一冊の扉 (角川文庫)本をめぐる物語 一冊の扉 (角川文庫)感想
『本をめぐる物語 一冊の扉』、なんという蠱惑的な題名なのだろう。本が好きで暇さえあれば書店をウロウロする性癖を持つ人間は十中八九この罠に捕らえられてしまうだろう。さながら本の虫(紙魚)を食べる食虫植物のようなものだ。書店の平台に本書と『本をめぐる物語―栞は夢をみる』が積んであるのを目にした私は、一度は罠に捕らえられてなるものかと通り過ぎたが、後ろ髪を引かれまわれ右をしてしまったではないか。書痴の性と云うべきか。「メアリー・スーを殺して」(中田永一)と「ラバーズブック」(小路幸也)が良かった。
読了日:7月17日 著者:中田永一,宮下奈都,原田マハ,小手鞠るい,朱野帰子,沢木まひろ,小路幸也,宮木あや子

 


妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街 (光文社文庫)妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街 (光文社文庫)感想
上田氏の著書『魚舟・獣舟』を読んだのは二〇一二年三月のことであった。その短編集第四話「真朱の街」を演繹する形でのシリーズが始まった。光文社の謳い文句は「妖怪ハードボイルド」なるもの。私が以前読んだものの中ではエリック・ガルシア氏の『さらば、愛しき鉤爪』を始めとする<鉤爪シリーズ>が「恐竜ハードボイルド」と呼ばれるものであったが、「恐竜ハードボイルド」が有るならば「妖怪ハードボイルド」があったとしても不思議ではない。第四話「炎風」に書かれた妖怪とヒューマノイドの恋が切ない。このシリーズ、読んでいきます。
読了日:7月20日 著者:上田早夕里

 


本をめぐる物語 栞は夢をみる (角川文庫)本をめぐる物語 栞は夢をみる (角川文庫)感想
北村薫氏目当て。というより他の7人の作家さんは初読みの方ばかり。収穫は雪舟えま氏『トリィ&ニニギ輸送社とファナ・デザイン』。なかなかの世界観でした。雪舟氏の他の作品も読んでみたい。他は???・・・かな。副題の「栞は夢をみる」の意味が不明。アンドロイドは電気羊の夢を見るかも知れないが、栞は夢を見ないだろうと思う。
読了日:7月26日 著者:

 

 


あすなろ三三七拍子(上) (講談社文庫)あすなろ三三七拍子(上) (講談社文庫)感想
世の中、理屈がすべてではない。正しいが正しくないこともある。男同士にしか判らないドメスティックな価値観だろうと、日本人にしか判らない島国根性だろうと、それを軽々にアナクロニズムと切り捨てられる筋合いはない。閉じた世界で昇華した精神世界を理解せず頭から否定するような態度こそが浅薄で偏狭な考えとして軽侮されるべきものだろう。一見バカで前近代的に見える応援団の中に深遠なるもの見た。今必要なのは、自由、博愛、人権などと一見正義と見える西欧流独善ではなく、様々な価値観をすべて包み込み併存させる度量なのだと気づく。
読了日:7月28日 著者:重松清

 


あすなろ三三七拍子(下) (講談社文庫)あすなろ三三七拍子(下) (講談社文庫)感想
学生の頃、武道系の部に身を置いた私にとって、重松氏の描く応援団の世界は気分としてよくわかる。もちろんズバリ同質ではないのだが。理由も目的もなくとにかくやる。ひたすら頑張る。それが当たり前に出来るようになったとき、いや、当たり前も何も余計なことを考えることがなくなったときに到達している境地があるのだ。武道系の部の合宿は外から見ればしごきだ。理屈はそうだ。おそらく周りからは冷ややかな目で見られることだろう。しかし一度とことんまでそれをやってみるがいい。理に背いても情に適うこころよい世界がそこにはあるはずだ。
読了日:8月2日 著者:重松清

 


ポニーテール (新潮文庫)ポニーテール (新潮文庫)感想
切なさ一二〇%。いつものことではあるけれど、重松氏にはこの度も泣かされました。人生は思うようにならない。こんなふうになりたいと心から願っても、神様は意地悪で時には一番大切にしているものすら奪ってしまう。手の中にあった幸せはちょっとしたことでその手をすり抜けてしまう。それでも、心の底から幸せを希えば、それも周りの人を大切に思うかたちで希求するならば、また別の幸せがそこに現れる。「これでよかった。今が一番幸せだ」そう信じることが出来る。重松氏の小説は幸せを希う祈りだ。
読了日:8月9日 著者:重松清

 


セカンドウィンド 3セカンドウィンド 3感想
このところロードバイクに乗れず気分がスッキリしない。フラストレーションを如何せんと本書を手に取った。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと読んできて、主人公・溝口洋の成長ぶりをしみじみと感じる。まるで自分の息子の成長ぶりを見るようだ。ロードレースものとして、青春小説として極上の小説だ。身体は風雨に閉じ込められながらも、心は小説世界に飛び込んでヒートアップした。フォルツァ! 自分の身体を極限まで痛めつけて登り走り続ける感覚に熱くなった心とは裏腹に鳥肌が立つ。洋、そして岳よ、次はヨーロッパでの走りを見せてくれ。フォルツァ!!
読了日:8月10日 著者:川西蘭

 


天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)感想
本当に終わってしまったのだなぁ・・・ 五年間、計10刊プラス1。旭日昇天、雲外蒼天の人生を見極めたくて、二人の幸せを心から願いながら読み続けた。とうとう完結の時が来た。否。二人の人生はここから新しく始まるのではないか? そのあたり、高田さんは「それぞれのその後を一冊にまとめて、特別刊として刊行させて頂く」と仰っている。ひとまずは”So long!”と言っておきますが、そんなに長く待たせないで欲しい。”It's been such a long time.”と言える日を首を長くして待ちましょう。
読了日:8月15日 著者:高田郁

 


ひとなつの。 真夏に読みたい五つの物語 (角川文庫)ひとなつの。 真夏に読みたい五つの物語 (角川文庫)感想
森見登美彦大島真寿美、椰月美智子、瀧羽麻子藤谷治、五人の作家が描く夏の刹那。森見氏の『郵便少年』は「ほっと文庫」で既読であった。再読となったが、やはり良い。五人の中で抜きん出ている。文章も、物語の世界観も、読後感も最高だ。森見氏の前に他はかすんでしまった感があるものの、その中でも瀧羽麻子氏の『真夏の動物園』、藤谷治の『ささくれ紀行』はよかった。読んだ刹那、私にも経験のある若き頃のモヤモヤした夏の空気が蘇った気がした。
読了日:8月15日 著者:森見登美彦,瀧羽麻子,大島真寿美,藤谷治,椰月美智子

 


強育論 -悩める大人たちに告ぐ!「いじめの芽を摘む」特効薬強育論 -悩める大人たちに告ぐ!「いじめの芽を摘む」特効薬感想
力は正義、体罰容認、平等は弱者の論理と、見方が偏っていると見る人は多いのかも知れないが、それは全くの誤解だ。現実をありのままに視て、それにどう対処するかを現場として素直に考えれば、答えは自ずと野々村氏の主張にかさなる。それを間違いだとする人こそ偏っているのである。現場を視ずに机上の空論を展開する無責任な評論家はどこにでもいる。この種の輩は、家に強盗が押し入り、財産を強奪され、今にも妻が犯されようとしているのに「あなたの行為は間違っています」などと説く”たわけ”です。この場合、命に代えても家族を守るべし。
読了日:8月16日 著者:野々村直通

 


それ、パワハラです 何がアウトで、何がセーフか (光文社新書)それ、パワハラです 何がアウトで、何がセーフか (光文社新書)感想
パワハラや退職勧奨を受けたとする労働者側にたった解説。副題に「何がアウトで、何がセーフか」とあったので、そのあたりの解説が読みたかったのだが、著者の立ち位置として労働者側に立ってしまっては「アウト」ばかりとなり、そのあたりを論ずるのは無理というもの。だからといって、本書に書かれていることが間違っているわけではない。このような見方があることは経営者側として十分知っておくべきだろう。とはいえ、あまり参考にならなかったというのが率直な感想。
読了日:8月17日 著者:笹山尚人

 


パワハラ・いじめ職場内解決の実践的手法―放っておくと会社の責任!パワハラ・いじめ職場内解決の実践的手法―放っておくと会社の責任!感想
厚労省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の報告書に忠実なかたちでパワハラとは何か、パワハラを予防するためにどうすべきか、あるいは職場内で起こってしまったパワハラにどう対処するかを解説した真面目な真面目な本です。その真面目さは日本法令さんの出版物らしいといえる。とはいえ、セクハラ、パワハラに関係して飯を食っていることに対するある種の嫌悪感、それ以前に円卓会議そのものに懐疑心を持ってしまう私は前近代的な人間なのでしょうか。このようなことをいちいち問題にする昨今の風潮に辟易するのは私だけだろうか。
読了日:8月19日 著者:金子雅臣

 


何もなくて豊かな島―南海の小島カオハガンに暮らす (新潮文庫)何もなくて豊かな島―南海の小島カオハガンに暮らす (新潮文庫)感想
「何もなくて豊かな島」とは「何もないからこそ豊かな島」なのであった。天気が良いから、あるいは悪いから、誰かが訪ねてきたから、ぶらりと歩いていたら誰かに会ったから、何かを目的として計画的に動くのではなく、その日その日の自然の「ゆらぎ」に身を任せてしまう。何もしない、何も考えない。もちろん約束などしない。本当に必要なものしか持たない。そんな幸せのかたちがあることを私は知らなかった。知ってしまったからと云って、どうなるものでもない。しかし私の中で何かが変わってしまったのは確かだ。
読了日:8月22日 著者:崎山克彦

 


にっぽん・海風魚旅(3) 小魚びゅんびゅん荒波編 (講談社文庫)にっぽん・海風魚旅(3) 小魚びゅんびゅん荒波編 (講談社文庫)感想
八丈島クルーズの復路、船のベランダで読んだ。船が海を滑るように進む中、海の風を受けながらの読書。もちろん缶ビールを飲みながらである。シーナさんの紀行文は構えていないところがイイ。シーナさんの旅は房総、北海道、小笠原、薩摩、駿河と各地のうまいもんを食べながらすすむ。シーナさんは「一番かよった情け島」と題して、八丈島を〆に持ってきている。シーナさんの島への思い入れが感じられる。海風がまことに心地よい。
読了日:8月22日 著者:椎名誠

 


天使はモップを持って (文春文庫)天使はモップを持って (文春文庫)感想
サクリファイス』『エデン』『サヴァイブ』とロードレースものが素晴らしすぎてなかなか他の作品に手がでなかったのだが、先日『タルト・タタンの夢』を読んだのを機に他の作品も読むことにした。「モップの天使・シリーズ」もお気に入りになりそうです。どんな仕事も心を込めてやれば特別なものになる。その域に到達するには根気が必要だが、そこまで時間と労力をかけるからこそ、その仕事は他の人のものとは違う輝きを持つ。掃除が楽しい、それも他人が使うスペースを楽しんで、しかも心を込めて出来るなんて、それこそ天使の仕業ではないか。
読了日:8月24日 著者:近藤史恵

 


モップの精は深夜に現れる (文春文庫)モップの精は深夜に現れる (文春文庫)感想
「女清掃員探偵・キリコ・シリーズ」第2作である。第1作『天使はモップを持って』を読んで、すっかりキリコに魅了されてしまった私だが、本作を読んでさらにキリコ・ファンになってしまった。いや、惚れたと言っても過言ではない。ちなみに私は掃除が苦手である。たまに厨房に入って家事をする夫を気取っているが、掃除はほとんどした事がない。つれ合いに頼りっきりである。つれ合いのおかげでトイレや水まわりはいつも綺麗で心地よい。そんな嫌なことを当たり前にしてしまうつれ合いに対し海より深く感謝し、山より高く尊敬するものであるWWW
読了日:8月27日 著者:近藤史恵

 


モップの魔女は呪文を知ってる (実業之日本社文庫)モップの魔女は呪文を知ってる (実業之日本社文庫)感想
このシリーズ、どんどん良くなっていますねぇ。深刻な問題もキリコのキャラクターでちょっぴりほっこり幸せに。救いがあります。キリコちゃん、ほんまにええ子や。惚れてまうやろ~WWW  蛇足ですが、新幹線の中で本書を読み切ってしまい活字禁断症状に。駅の改札をでて血眼になって本屋を探しました。見つけた本屋では猫特集をやっていました。ちょっとした奇縁を感じた次第。大佛次郎の『猫のいる日々』を購入。ひょっとして愛しの王女様に会えるか?
読了日:8月29日 著者:近藤史恵

 


猫のいる日々: 〈新装版〉 (徳間文庫)猫のいる日々: 〈新装版〉 (徳間文庫)感想
近藤史恵『モップの魔女は呪文を知っている』に収録された「愛しの王女様」(スコティッシュフォールドの子猫に一目惚れする女子大生の話)を読んだ後、本屋に行くと、たまたま猫にまつわる本を特集していた。不思議な縁を感じ初・大佛次郎として本書を読むこととなった。そして本書を持ち歩き訪れた池田20世紀美術館では河野里枝氏の「水族館に猫たちいり禁止」を鑑賞。このところ猫づいている。本書を読んで、猫の良いところは「人に媚びず、心に染まないことは決してしない気概と美しさをもつ」ことにあるのだということがよくわかりました。
読了日:8月30日 著者:大佛次郎

 


ザ・万遊記 (集英社文庫)ザ・万遊記 (集英社文庫)感想
万太郎はサッカーが好きである。万太郎のDNAは関西人である。万太郎は教育的配慮で改竄されたアニメ版「小公女」に心から怒っている。万太郎はどこまでも地味な男を最高に輝かせてしまう司馬遼太郎が好きである。と同時にまた波瀾に富んだ人生を淡々と、およそ「面白く書く」という意図が全く感じられない井上靖を愛読する。万太郎は『渡辺篤史の建もの探訪』を熱心に視聴する。その視聴姿勢はほとんど偏愛と言って良い。万太郎は北朝鮮、もとい、朝鮮民主主義人民共和国をかなり嫌いになりかけた。しかし、今はちょっぴり好きになっている。
読了日:9月5日 著者:万城目学

 


みんなのうた (角川文庫)みんなのうた (角川文庫)感想
こころ優しゅう生きることとエラジン(偉人)さんになるゆうんは違うんかのう。こころ優しゅう生きとる人はなんで哀しゅう見えるんかのう。みんながおたがいのことを気にかけて生きるゆうことは煩わしいことなんやろか。それを煩わしいと感じるのは