佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2014年の読書メーター(3)

みんなのうた (角川文庫)みんなのうた (角川文庫)感想
こころ優しゅう生きることとエラジン(偉人)さんになるゆうんは違うんかのう。こころ優しゅう生きとる人はなんで哀しゅう見えるんかのう。みんながおたがいのことを気にかけて生きるゆうことは煩わしいことなんやろか。それを煩わしいと感じるのは強いもんなんか? エラジンさんはほんまに強いんか? 寂しゅうなること、哀しゅうなることはないんか? 服部のおじいさん、おばあさん、がんばってな。サブちゃん、痛いんか? みんな応援しとるで。
読了日:9月6日 著者:重松清


日本の美術館 ベスト250完全案内 (ぴあMOOK)日本の美術館 ベスト250完全案内 (ぴあMOOK)感想
122頁で250の美術館を紹介しようというのは、やはり無理ですな。内容が薄くなってしまいます。とはいえ、こんな美術館があったのかと発見できたことはよかった。強く感じるのは東京あるいは東京近郊の充実ぶり。うらやましい限りです。そんななか異彩を放つのは瀬戸内の島々にある美術館。すでに訪れたところも多いが、何度でも行きたいと思わせてくれる。
読了日:9月7日 著者:

 


いなくなれ、群青 (新潮文庫)いなくなれ、群青 (新潮文庫)感想
河野氏の小説を初めて読む。なんだか肩に力の入った題名。その題名の意味がわかったとき、私の胸は温かく満たされた。ピストルスター、その気高き光を無くさずにすむのなら、その光は僕を照らす必要はない。人は本当に美しく気高いものを守るためなら、自分の存在を賭すことができる。トランプゲームで相手に勝ちを譲ってしまう小学二年の少年、どこまでも真っ直ぐ、正しいことの正しさを信じている高校一年生の少女、どこまでも悲観的で常にあきらめることを受け入れる高校一年生の僕、若さは不完全で危ういけれど、切ないほどに素敵だ。
読了日:9月14日 著者:河野裕

 

京都読書空間 (act books)京都読書空間 (act books)感想
京都を旅する中で持ち歩き。森毅氏の快食快便読書術に激しく同意。氏曰く「”教養”を得るために読書をするとかいうことを耳にするけれど、読書の目的は、本を読むこと以外の何ものでもありません。知識や教養を得ようなど、何かを目的にしても仕方ない。結局は自分の身の丈に合ったものしか身につかないし、疲れるだけ」 さすが透徹した見方をしていらっしゃる。行ってみたい書店は下京区西木屋町のバー「図書館」、中京区寺町通りの「三月書房」。次に挙とを訪れたときはロードバイクで書店巡りってのもありかな。
読了日:9月14日 著者:


作家の家 (コロナ・ブックス)作家の家 (コロナ・ブックス)感想
コロナ・ブックスの作家シリーズ。『作家の酒』、『作家の食卓』と読んできたが、作家の家も興味深い。家にはその作家の性質がでる。書斎の佇まい、愛用した小物、机、椅子、そうしたものが頁をめくるごとに私の目を捕らえて放さない。素敵な本です。次は『作家の猫』にするか『作家のおやつ』にするか、思案中である。
読了日:9月15日 著者:

 

 


宙(そら)の旅宙(そら)の旅感想
美しい本です。著者である天体写真家・林完次氏によると夜空の星がそろって瞬きをする瞬間があるそうな。その瞬間は「一〇〇万もの鈴が一度に鳴ったようにも思えるし、夜空という大きなまぶたがまばたきしたようにも見える」とのこと。すばらしい! 筑波山から見る夏の大三角(デネブ、ベガ、アルタイル)を流れる天の川、北十字白鳥座)のなんと美しいことか・・・ 今夜は久しぶりに夜空を見上げてみるか、と思ったら天気が下り坂。しばらくはおあずけです。
読了日:9月19日 著者:林完次


100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)感想
ちょっと泣いてしまいました。
読了日:9月19日 著者:佐野洋子

 

 


モップの精と二匹のアルマジロ (実業之日本社文庫)モップの精と二匹のアルマジロ (実業之日本社文庫)感想
清掃作業員探偵キリコ・シリーズ第4弾。ヤマアラシ・ジレンマは知っていたが、アルマジロとは。今作はキリコの視点ではなく大介の視点で描かれている。しかも長編、さすがはプロです、近藤さん。おそらくは人気シリーズの企画として出版社から持ち込まれた依頼で書かれたのでしょう。充分楽しませていただきました。衝撃的な事件があるわけでも涙を流すような感動があるわけでもありません。深刻なテーマを扱ってはいるものの、テイストはあくまで軽く、読後感はじわっと心があたたかくなっている。そんなミステリです。好きだなぁ、そんな感覚。
読了日:9月21日 著者:近藤史恵

 

神も仏もありませぬ (ちくま文庫)神も仏もありませぬ (ちくま文庫)感想
『神も仏もありませぬ』(佐野洋子・著/ちくま文庫)を読了。 『100万回生きたねこ』では「死ねない」ということについて考えた。このエッセイでは「死に方」について考えさせられました。なるほど、どう生きるかを考えることはどう死ぬかを考えることにつながるのか。多くを語る必要はない。「いつ死んでもいい。でも今でなくていい」 この一言に尽きる。そろそろ私も「死に方」について考えるべき歳だ。
読了日:9月23日 著者:佐野洋子

 


週末バンコクでちょっと脱力 (朝日文庫)週末バンコクでちょっと脱力 (朝日文庫)感想
『週末バンコクでちょっと脱力』(下川裕治・著、阿部稔哉・写真/朝日文庫)を読了。 中級者向きロングステイのためのホテルの案内は参考にしたい。巻末にバンコク在住者の寄稿がある。これがなかなか興味深い。やはり市場の活気がイイ。メークローン駅にあるタラート・ロムフーブ(折りたたみ傘市場)は行ったが、百年市場には行っていない。ここはぜひ訪れてみたい。ありきたりだがマンダリンオリエンタルホテルには一度泊まってみるべきかな。持って行く本は『サヨナライツカ』だな。
読了日:9月25日 著者:下川裕治

 

地を這う祈り地を這う祈り感想
私は世界にこのような現実があることを知っている。しかし見ないようにしている。直視したくないのだ。見たところでどうなるというのだろう。毎年、ユニセフやワールドビジョンにささやかな寄付をする。しかし、それでいったい何か変わるというのか。大海の一滴、空しいだけ。自分の気持ちに折り合いをつけるためのごまかしに過ぎない。この世は地を這う祈りで満ちている。祈りはけっして神に届きはしない。神様だってそんなに沢山の祈りに応えられはしない。神も仏もあるものか。
読了日:9月26日 著者:石井光太


週刊新潮 2014年 9/18号 [雑誌]週刊新潮 2014年 9/18号 [雑誌]感想
週刊新潮9月18日菊咲月増大号』を読む。私は雑誌をほとんど読まない。床屋や医者の待合で読む程度のことだ。したがって滅多に雑誌を買わない。しかし、この号は別である。”続・おごる「朝日」は久しからず”という特集記事。これは読まないわけにいくまい。ん? ”続”ということは前の号にも記事があるのか。前の号も買わねばなるまい。保存版である。髙山正之氏のコラム『変見自在』も相変わらずすばらしい。佐藤優氏&西原理恵子氏の週間鳥頭ニュースも面白い。加えて「たばこ屋のシバちゃん」カワイイではないか。
読了日:9月28日 著者:


週刊文春 2014年 9/18号 [雑誌]週刊文春 2014年 9/18号 [雑誌]感想
普段は雑誌を買わない私も一連の朝日新聞追求記事だけは押さえておくべきと購入して読んだ。今号が追及記事として第四弾(?)であるらしい。既刊号についても購入するつもりであることは云うまでもない。雑誌であっても永久保存版と考えている。
読了日:9月28日 著者:

 

 

 


週刊文春 2014年 9/4号 [雑誌]週刊文春 2014年 9/4号 [雑誌]感想
朝日新聞が新聞広告を掲載拒否した号。「朝日新聞売国のDNA」とある。この号の発売日と池上彰氏のコラム掲載を断った時期が同じ。そりゃぁ、自紙を非難するものなど載せたくはないだろう。しかし、拒否したら朝日の狭量さを露呈するだけだと気づかないところがなんとも救いようのない話。朝日出身の故・筑紫哲也氏は1996年3月25日、メインキャスターを務めていたTBSの看板番組「NEWS23」の冒頭で(オウム真理教坂本弁護士殺害事件がらみの不祥事について)「TBSは今日、死んだに等しいと思います」とやったんだぜ。
読了日:9月30日 著者:


週刊文春 2014年 9/11号 [雑誌]週刊文春 2014年 9/11号 [雑誌]感想
朝日新聞追求記事第3弾。読めば読むほど朝日新聞の無見識ぶりに腹が立ち眠れません。8月28日に木村伊量朝日新聞社長が全社員宛に送ったとされるメールを読むにつけ、従軍慰安婦問題の誤報によって我が国が不当に貶められたことについて微塵も反省していないことは明らかである。偏った考えというより、国に対する悪意すら感じてしまうのは私だけだろうか。「文春VS.朝日」の歴史、改めて過去を振り返り確認した。絶え間ない醜聞に呆れかえるばかり。連載コラム「今週のバカ」に書いてある高校野球についての見方にも肯けるところが多い。
読了日:10月1日 著者:


週刊文春 2014年 9/25号 [雑誌]週刊文春 2014年 9/25号 [雑誌]感想
朝日新聞追及記事第5弾。さすがは文春、朝日追及の手は執拗かつ苛烈である。記事にあるように子会社・朝日出版がデアゴ社の機密情報を不正な手段で盗み出しており、それを朝日新聞コンプライアンス委員会が内部告発により知っていながら隠蔽しているとすれば、これはもう・・・。これ以上は池上彰氏が連載コラムで「罪なき者、石を投げよ」と仰るとおりだと思いますので書きません。
読了日:10月1日 著者:

 


週刊文春 2014年 8/28号 [雑誌]週刊文春 2014年 8/28号 [雑誌]感想
朝日新聞追求キャンペーンを追ってバックナンバーを購入し、ついに第1弾まで遡って読みました。「朝日新聞よ、恥を知れ!」の見出しどおりの気持ちである。恥ずかしいといえば、この号に掲載された橋本聖子氏のソチ五輪スキャンダルである。高橋大輔氏にキッスを浴びせ続けた事件ですね。これが参議院議員の良識ですか・・・みっともない。
読了日:10月4日 著者:

 

 


アイの物語 (角川文庫)アイの物語 (角川文庫)感想
初・山本弘である。攻殻機動隊草薙素子を彷彿とさせるプロローグに期待度MAX状態で読みました。結果は大当たりでした。「事実」とフィクションとしての「物語」、「現実」と「仮想空間」、「人間」と「アンドロイド」、より価値があるのは前者なのか? 現実とは、人間とはそれほど素晴らしいものなのか? 物語の価値とは何か、たとえフィクションであっても現実よりも正しい世界がそこにあるのではないか。物語にこそ本質がある。物語にこそ現実を打ち負かす真実がある。そういうことか・・・
読了日:10月5日 著者:山本弘


[新制度対応!] 子どもの笑顔と安定経営が両立する 保育園の作り方[新制度対応!] 子どもの笑顔と安定経営が両立する 保育園の作り方感想
いまさらですが・・・、やはり基本から。
読了日:10月5日 著者:髙橋晃雄

 

 

 

 

 


西日本サイクリングガイド (アウトドア21stフィールド)西日本サイクリングガイド (アウトドア21stフィールド)感想
南港ベイエリア、播磨自転車道(*)、出石、但馬海岸・城崎、淡路島一周(*)、嵐山八幡木津自転車道、琵琶湖一周(*)、太平洋岸自転車道浜名湖レイクサイドウェイ、渥美サイクリングロード、赤目・香落渓、若狭自転車道、しんきろう自転車道しまなみ海道(*)、四万十川海の中道海浜公園、メイプル耶馬サイクルライン(*)、野母半島自転車道と素晴らしいコースぞろい。(*)は走行済。能登海浜自転車道(千里浜なぎさドライブウェイ)は是非走りたい。自転車で砂浜を走れるのはここを含め世界で3カ所しかない。夢のようではないか。
読了日:10月10日 著者:


京の路地裏案内 (らくたび文庫)京の路地裏案内 (らくたび文庫)感想
あじき路地」芸術村、宮川筋通団栗下ル東側「裏具」の手紙周り文具、大和大路通四条上ル西側「かね正」の鰻、新橋通花見小路西入ル北側辰巳小路内「小鍋屋いさきち」、柳馬場通小池下ル東側「火裏蓮花」のスイーツ、高倉通四条下ル西側「お数屋 いしかわ」のおばんざい、新町-室町路地「円屋」の串焼きと蕎麦、上長者町通千本東入ル1筋目下ル西側「はちはち」のスープ付日替りサンドイッチ、黒門通誓願時上ル西側「美齢」の石焼麻婆豆腐、今出川通鞠小路西入ル2筋目下ル東入ル南側「カンティーナ・ロッシ」のパスタ。訪れたいところ満載。
読了日:10月12日 著者:


愛書家の死 (ハヤカワ・ミステリ文庫 タ 2-10)愛書家の死 (ハヤカワ・ミステリ文庫 タ 2-10)感想
クリフ・ジェーンウェイ・シリーズ第五作。古書界と競馬界を舞台にした愛書家にまつわる話。古書にまつわる物語が好きで、同時にディック・フランシスを愛読する私にとってこれほどうれしい物語はない。それにしても重要な登場人物であるシャロンはなんと素敵な女性なのだろう。本書を読み終えた今、彼女のその後はどうなっているのか、幸せに暮らしているのかどうか、そんなことばかり気になってしまう。世の中には一目で好きになってしまう女性、なんとしても幸せになって欲しい女性ってのがいるのだなぁ。あぁ、シャロン・・・
読了日:10月13日 著者:ジョン・ダニング


じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (17) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (17) (アクション・コミックス)感想
今巻の主人公はなんといってもアントニオ・ジュニアだろう。ノイローゼになりかけのジュニアといったらたまりませんねー。こっぱずかしいキザ言葉といい、虚無的哲学がなんとも青臭くカワイイのだ。酸いも甘いも噛み分けた小鉄とのコンビネーションが絶妙!
読了日:10月13日 著者:はるき悦巳

 

 

 


買えない味 (ちくま文庫)買えない味 (ちくま文庫)感想
平松洋子さんはカッコイイ。そう、本当にクールだ。平松さんにとって、おそらく日常は決して退屈なものではない。凡人には何気ない日常も、平松さんには彼女にしか見えない側面がある。それは稀有な感覚。静かで地味な日常も、稀有な感覚を持って生きる者にとってはしみじみ感じ入る要素に満ちているものだ。私にとって谷崎潤一郎氏の『陰翳礼賛』に比肩し得る随筆です。出雲・出西窯の砂糖壺と白掛地釉を私も使いたい。
読了日:10月15日 著者:平松洋子

 


なぜ朝日新聞はかくも安倍晋三を憎むのかなぜ朝日新聞はかくも安倍晋三を憎むのか感想
「中国人は井戸を掘った人を忘れない」は真っ赤なウソである。「アメリカは民主的で、正義と自由を重んじる素晴らしい国である」もウソである。たしかにそのような側面もある。しかしどちらの国も自国の利益のためには他国を踏み台にしても平気である。このことは世界情勢を視る上で肝に銘じておかなければならない。田母神氏のような人は知性派を気取った学究の徒から批判され貶められることが多い。しかし我々は知性派を気取った学究の徒にこそウソやバイアスが潜むことを知っておかねばならないだろう。朝日新聞の報道を見ればそれは明白である。
読了日:10月21日 著者:田母神俊雄


和菓子のアンソロジー (光文社文庫)和菓子のアンソロジー (光文社文庫)感想
こうしたアンソロジー企画は作家諸氏の個性が際立って楽しい。与えられたテーマに沿って一定水準以上の物語を紡いでしまう能力はさすがはプロと感心しきり。なかでも北村薫「しりとり」は群をぬく。他には日明恩「トマどら」、近藤史恵「迷宮の松露」が私好みであった。言い出しっぺの坂木司「空の春告鳥」は『和菓子のアン』の後日譚として楽しい。近藤史恵リクエスト『ペットのアンソロジー』、大崎梢リクエスト『本屋さんのアンソロジー』も楽しめそうだ。いずれ購入することになろう。
読了日:10月22日 著者:坂木司


海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)感想
白人に隷属し、白人に資源を提供すべき国とみなされていた近代アジアにあって、気骨と誇り高い経営理念を持って世界に挑んだ経営者・出光佐三の物語を読み、眼に涙が溢れ、心には力が漲る思いであった。白人支配が強い世界の中にあって、決して強い者におもねることなく、卑屈にならず、日本人としての矜持を胸に敢然と世界に挑んだ経営者の生き様を私は深く胸に刻み込みました。私にとって『鼠』(城山三郎)、『お家さん』(玉岡かおる)に記された鈴木商店の大番頭・金子直吉と本書の出光佐三の二人は尊敬する経営者です。さて、下巻を読もう。
読了日:10月24日 著者:百田尚樹


海賊とよばれた男(下) (講談社文庫)海賊とよばれた男(下) (講談社文庫)感想
経営者として必要なことは理念と明確なビジョンを持つこと。その理念は広く国や世間の為になるものでなくてはならないこと。その意味で商売は「黄金の奴隷たるなかれ」を旨とすべしということか。素晴らしい生き様を読ませていただきました。仕事上、多少の障壁があっても何とかなる、頑張ろうという気になりました。そして日本人に生まれたことを誇りに思うことが出来ました。このようなかたちで出光佐三の生涯を小説にしてくださった百田尚樹氏に感謝。
読了日:10月26日 著者:百田尚樹


路地恋花 1 (アフタヌーンKC)路地恋花 1 (アフタヌーンKC)感想
とある路地(ろぉじ)に集った「つくる人」たちの恋の話。ごっつぅよろしおすなぁ。久しぶりに本棚から『陰翳礼讃』と『痴人の愛』を手に取りたくなった。近いうちにあじき路地も訪れてみようと思う。『その人に「風花の!」ってしるしをつけたいねん』か・・・せつないなぁ・・・。 読メの”じぇりい”さんに感謝。
読了日:10月28日 著者:麻生みこと

 

 


路地恋花(2) (アフタヌーンKC)路地恋花(2) (アフタヌーンKC)感想
「花屋一松」のオチ、笑いました。小話のところどころに出てくる小ツッコミ、素晴らしいセンスです。読むほどに作品世界に引き込まれます。登場する職人さんの心がピュアな分だけ、その恋をそのまま描けば深刻になりがちなのだろうが、適度にコミカルを織り交ぜているあたり麻生氏のセンスが光ります。三巻、四巻も楽しみ。実「あじき路地」を訪れるのも楽しみです。
読了日:10月29日 著者:麻生みこと

 


路地恋花(3) (アフタヌーンKC)路地恋花(3) (アフタヌーンKC)感想
なんやら、だんだんええかんじになっていきますなぁ。みんな、であいがあって、わかれがあって、すれちがいがあって、わらって、ないて、いちにちいちにちをいきてるんやなぁ。そんなあたりまえのことにおもいいたって、なんやらむねがいっぱいになって、こころがぬくうなって、なんやらええかんじですわ。ちなみにわたし、小春ちゃんに「ほ」の字ですわ。
読了日:10月30日 著者:麻生みこと

 

 


路地恋花(4) <完> (アフタヌーンKC)路地恋花(4) <完> (アフタヌーンKC)感想
おそらく大人になる一歩手前で「やりたいこと」を持っていた人は多い。でも大人になる段階で「それで食えるか?」という割り切り(あるいは言い訳)でそれをあきらめ、いわゆる定職に就いた者がほとんどではないか。そんな迷いも吹っ切って(あるいは迷いながらも)自分が信じる良いものを作ろうと「ふきこ路地」に身を置く職人や芸術家。そうだからこそ彼らの恋は成就して欲しい。手作り本工房の小春ちゃんや万華鏡作家のキリンちゃんには何としても幸せになってもらわんといかんな。花屋一松は気の毒やったな。まぁ、あんさんは実家が金持ちやし。
読了日:10月30日 著者:麻生みこと


古書ミステリー倶楽部古書ミステリー倶楽部感想
書痴という人種は己の中に多少の異常性を持つ。プチ書痴の私にとって最も恐ろしい話は梶山季之の「水無月十三么九」。私はこの短編を『せどり男爵数奇譚』で読んだことがあるのだが、そのおぞましさは他の小説に類を見ない。「二冊の同じ本」さすがは松本清張。ううんっ文句なし! と唸りました。戸坂康二の「はんにん」私の大好きなタイプの話です。早見裕司の「終夜図書館」は逆に大嫌いです。私が大嫌いな小説はさほどないのだが、読むに堪えない。逆に最もうれしかったのは野呂邦暢の「若い沙漠」の中で安西均の「雨」という詩に接したこと。
読了日:11月8日 著者:松本清張,城昌幸,甲賀三郎,戸板康二,石沢英太郎,梶山季之,出久根達郎,早見裕司,都筑道夫


ワニのあくびだなめんなよ (文春文庫)ワニのあくびだなめんなよ (文春文庫)感想
福井県勝山市の奇祭「勝山左義長」は一度でいいから見てみたいものだ。勝山市では是非「八助」で蕎麦を食べたい。シーナさんが本書の中でうまいと絶賛していた蕎麦屋助六」は実は「八助」のことを名を変えて書いているとの有力な情報を得た。蕎麦は何度でも食べたい。本書の値打ちは実は巻末にある沢野ひとし氏による「椎名論」と目黒孝二氏による「沢野論」である。私にとって椎名誠沢野ひとし目黒考二木村晋介の関係は理想とする友だち付き合いと映る。『沢野字の謎』(本の雑誌社)を買ったのは言うまでもない。
読了日:11月15日 著者:椎名誠


at Home (角川文庫)at Home (角川文庫)感想
家族四景。ドライな語り口に、所々ユーモアを交えながらも本質は結構ウェット。読み進めるにつれズシンと堪えた。家族ってのはやっぱり人が生きていくうえでの基本なんだよなぁ。でもその家族ってのが案外もろいものなのだ。だってそれを構成する人がもろいのだから。人生はやり直しがきかない。一度壊れたものは、二度と元どおりにはならない。元に戻らないながらも何とかしようとするしかない。人生は祈りに似ている。「日曜日のヤドカリ」は『Story Seller2』に収録されていたので読むのは二度目。やはりこれば名作だと確認。
読了日:11月16日 著者:本多孝好


シャイロックの子供たち (文春文庫)シャイロックの子供たち (文春文庫)感想
銀行ってところはシャイロックたちの巣窟か、或いは伏魔殿なのか。もちろんこれはフィクションである。しかし、池井戸氏の手になる「銀行もの」は本当にいま現在進行形で目の当たりにしているような錯覚さえ覚える。支店各課の営業目標達成状況を発表し、実績を上げられない行員を叱責する場面、さらに叱責される行員の心情の描き方たるや、存分の臨場感を読み手にあたえてくれる。若い頃M銀行にお勤めになっていた氏ならではである。それにしても銀行は怖いところだ。私などにはとても勤まるまい。次は『民王』。ちょうど今日、衆議院が解散した。
読了日:11月22日 著者:池井戸潤


民王 (文春文庫)民王 (文春文庫)感想
やはり池井戸氏が描く東京第一銀行就職面接会の場面はさすがだ。おもわずニヤリとしてしまった。それにもまして印象的だったのは池井戸氏のマスコミ感と政界感である。女性問題スキャンダルに群がるマスコミのバカ者どもに対し「政治家のスキャンダルなんぞで大新聞や公共放送まで大騒ぎしているのは、日本だけだぞ。お前ら、そんな仕事して恥ずかしいとは思わないのか。目をさましやがれ!」の一言に溜飲が下がる思いであった。国会で本来の政策討議をせず、スキャンダルの追求ばかりする野郎ども、恥を知りなさい。衆議院解散、バンザーイ!!
読了日:11月23日 著者:池井戸潤


ささらさや (幻冬舎文庫)ささらさや (幻冬舎文庫)感想
お人好しには住みにくい世の中である。隙あらば人を騙してやろう、奪ってやろうと鵜の目鷹の目の世の中だ。そんな世間にあって優しく控えめで、お人好しの妻がいたら・・・ その妻に子供が生まれたとたん、夫たる自分が不慮の事故で死んでしまう羽目になったとしたら・・・。そりゃあ死んでも死にきれない。切ないです。身もだえするほどもどかしく苦しいです。何とかしてやりたい、守ってあげたいという気持ちが奇跡を生む。現実にはあり得ないでしょう。でもそれが出来るのが小説の力です。加納さんの紡いでくれた奇跡と救いの物語に感謝。
読了日:11月24日 著者:加納朋子