佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2020年1月の読書メーター

1月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:3430
ナイス数:2936

 

 一月の読書は何といっても二つのシリーズものを読み始めたこと。ひとつはほしおさなえさんの「活版印刷日月堂」シリーズ。もうひとつは若竹七海さんの「葉村晶」シリーズである。どちらもおもしろい。早く読みたくて、読み終えるなり次はどちらのシリーズ続編を読もうかと悩んでしまう。


ザ・カルテル (下) (角川文庫)ザ・カルテル (下) (角川文庫)感想
復讐が復讐を生む連鎖は止められない。金と快楽を貪る欲の泥沼に底はない。高潔の士・マリソルが襲われるのは必然の情勢であったにもかかわらずマリソルは引かなかった。むしろ毅然と立ち向かっていった。命を優先しても内なる自分以外、だれも責めはしないのに。命より大切なものがある。それは自分は卑劣な者に絶対に屈しないという矜持。そして自分の愛する者を、悪に染まらず無垢なままでいる者をただ守りたいと思う気持ちだ。たとえ肉体は殺せても、何ものにも屈しない強い意志があったことを消し去ることはできない。
読了日:01月06日 著者:ドン・ウィンズロウ


([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)感想
最新の技術による印刷と活版印刷による文字の違いがわかる人は少ないかもしれない。しかしわかる人にはわかる。文字の存在感が違うのだ。マージナルゾーンが作り出すくっきりとした存在感。それが活版印刷の文字の強さである。それに文芸作品の言葉の強さが加われば、その存在感たるや尋常ではない。その言葉が、その文字が、目に入ってきた瞬間、脳が緊張する。喜びに打ち震える。それが活字を愛する者の生態である。この小説集はそうした活字中毒者の心を鷲掴みする。これはシリーズ全巻読まねばなるまい。
読了日:01月07日 著者:ほしお さなえ


探してるものはそう遠くはないのかもしれない探してるものはそう遠くはないのかもしれない感想
著者は書店勤めでいらっしゃる。それも★★堂書店(著者のtwitterによると別の書店に移られたようですが)。書痴を自認する私には憧れの職業である。おまけに自分が主催する文学賞「新井賞」まであるとは、もう「尊敬」の言葉しかありません。そんな方の書かれたエッセイが話題になっていると聞けば読まない手はない。予想に反して書店業界がらみの話ばかりではない。むしろ働く女性の日常オモシロエッセイ、それもかなり内面をさらけ出した内容である。そう、このエッセイは化粧を落とした素っぴんであり、女性としてはきわどい内容だ。
読了日:01月09日 著者:新井見枝香


依頼人は死んだ (文春文庫)依頼人は死んだ (文春文庫)感想
意外だったのは本書のテイストである。イヤミスといって良いほどブラックで後味が悪い話が続く。しかしいつからか葉村晶を応援していた。葉村晶の良さ。仕事に手を抜かずきちっとやりきる。口が悪く耳の痛いことをはっきり言うが口は堅い。つまり仕事が出来る女探偵なのだ。彼女の態度は極めてクールでタフ。自分に厳しく他人に甘えることはしない。優しい印象はないが人に頼られると突き放せない一面を持つ。自分のスタイルを貫き、一見シニカルでありながら素顔の彼女はあたたかみがある。ハードボイルド小説好きとして心惹かれる探偵の登場だ。
読了日:01月12日 著者:若竹 七海


この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだこの世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ感想
裸(ストリップを含めて)の話が多い。それに特段文句があるわけではないが、新井氏の中で「裸」というものがどれほどの意味を持っているのか気になる。人はそれぞれものに執着する。それこそ様々で十人十色とはよく言ったものだ。ちなみに私の敬愛する椎名誠氏のエッセイにはうんち(トイレを含めて)の話が多い。どうでも良い情報ですね。新井氏のモットーは「くそつまんねぇエッセイは発表したくない」だ。それは読者を意識した「くそつまんねぇ」というよりはむしろ自分の価値観に対してのものだろう。決して賢ぶらないが彼女は聡明だ。
読了日:01月13日 著者:新井 見枝香


プレゼント (中公文庫)プレゼント (中公文庫)感想
不運な女探偵・葉村晶と警部補・小林舜太郎を主人公とした8篇の短編小説集。TVドラマ化され、話題となっている葉村晶が初めて登場した小説集である。初登場といえば、別に「御子柴くんシリーズ」となっている御子柴刑事も本書に登場している。ということは若竹七海さんの人気シリーズのうち二つがここから始まっているのだ。その意味で若竹さんを読むなら決して外せない一冊といえる。これで葉村晶シリーズのうち二冊(『依頼人は死んだ』と本書)を読んだことになる。残りの五冊と『暗い越流』を買い置いている。少しずつ楽しみながら読みます。
読了日:01月19日 著者:若竹 七海


活版印刷三日月堂 海からの手紙: 海からの手紙 (ポプラ文庫)活版印刷三日月堂 海からの手紙: 海からの手紙 (ポプラ文庫)感想
活版印刷。印刷所にある活字、それは印刷所の壁一面を覆い尽くしている。言葉で世界を表そうとしたら、それだけの量の文字が要るのだ。もちろん、ここに書かれた物語はフィクションだ。しかし、物語の奥底にある、人の真心、人を思いやる気持ち、何かを成し遂げたいという熱い思い、生きていくうえで少しずつ心にたまっていく哀しみ、そうしたものは確かにある。  小説は素晴らしい。そして小説を紡ぐ活字もまた素晴らしい。印刷物は言葉を残し、複製し、多くの人に届ける。言葉は印刷されることによって翼を持つことができる。表現の翼を。
読了日:01月21日 著者:ほしお さなえ


朝10分でできる スープ弁当朝10分でできる スープ弁当感想
本書を読んで改めて判ったことは、スープもいろいろあるってこと。さらっとしたもの、とろっとしたもの、さっぱりしたもの、濃厚なもの、スパイシーなもの、和風、洋風、中華風、カレー風味もある。豆を使う、麦を使う、米を使う、パスタを使う、野菜もいろいろ、肉もいろいろ。組合せは自分のイメージ次第で自由自在である。仕事に持って行くも良し、サイクリングに持って行くも良し。これは便利だ。また、けっこううまい。著者の名前でWeb検索してみたらスープがわんさと出てくる。ということは、本書を買う必要がなかったということ。苦笑
読了日:01月21日 著者:有賀薫


スープジャーさえあれば お弁当はラクチン!スープジャーさえあれば お弁当はラクチン!感想
手持ちの弁当として温かいスープが食べられるということで買ったスープジャーだが、抜群の保温力を活かしてごはん、おかゆ、炊き込みごはん、パエリヤまで炊けるのは驚きである。ちゃんとした下ごしらえと計量が必要だが、そこさえ手を抜かなければおいしい弁当が簡単にできそうだ。  こんなことでも日常を楽しめる。こうしたレシピ本をパラパラめくりながら、あれこれ料理のアレンジを想像するのは本当におもしろい。次は話題の「サラダチキンレシピ」を研究してみよう。
読了日:01月23日 著者:金丸 絵里加


悪いうさぎ (文春文庫)悪いうさぎ (文春文庫)感想
葉村晶の基本的態度は無感情で冷淡、つまりニヒルである。しかし心の底が氷のように冷たいかというとさにあらず。心の底には存外の熱さを秘めているのである。それが証拠に彼女は仕事ができる。心底虚無的であればいくら有能であっても仕事ができるはずがない。そんな彼女に次から次へと災厄が降りかかる。肉体的、精神的にギリギリまで追いつめられながら決してへこたれない。人に対して辛辣ではあるが、その実、優しさを秘めているというキャラクターに私はすっかり魅了されてしまった。かくなる上はシリーズ作すべてを読み切るしかない。
読了日:01月24日 著者:若竹 七海


さよならの手口 (文春文庫)さよならの手口 (文春文庫)感想
さて、仕事はできるが運の悪い女探偵・葉村晶は本作でも出だしからエンジン全開である。しかし決して元気満タンではない。笑顔満点でもないし、意気軒昂でもやる気満々でもない。いややる気は結構ある。葉村晶は仕事ができる探偵なのだから。物語はしゃれこうべに頭突きを喰らわせるという出だしから始まる。えええっ? である。そして本作でも葉村晶には次から次へと災厄が降りかかる。まさに満身創痍の女探偵をそれこそ冒頭から結末まで応援した。どうやら私はすっかり葉村晶に魅了されてしまったようだ。次は『暗い越流』を読む。
読了日:01月30日 著者:若竹 七海

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