佐々陽太朗の日記

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『乙嫁語り ⑦』(森薫:作/BEAM COMIX)

乙嫁語り ⑦』(森薫:作/BEAM COMIX)を読みました。

 

乙嫁語り 7巻 (ビームコミックス)

乙嫁語り 7巻 (ビームコミックス)

 

 

19世紀後半の中央アジアの結婚をめぐるドラマもかぞえて第7巻。今回は一夫多妻制と姉妹妻をテーマにしている。舞台はペルシア。

一夫多妻制と聞いて女性蔑視と短絡的に断じてはいけません。人の営みや愛情はもっと複雑で深甚なものではありますまいか。そもそもイスラームにおいて正統カリフ時代に相次いだ戦争が生んだ寡婦の経済的扶助手段であったともいわれており、西欧的価値観の押し売りなど笑止。「複数の妻に公平に接する」ことができて初めて認められる制度であり、経済的に大きな負担を伴うことをも考え合わせると気高い倫理に裏付けられた制度と知るべきだろう。このあたり、けっしてステレオタイプな視点で物語らないところが『乙嫁語り』の魅力だ。

話は変わるが今作では絵柄の印象が少し変化したように感じます。微に入り細を穿つ画はいつもながらため息が出るほど。しかしその精緻さが、これまでの凛とした印象から、今作は柔らかさにその趣を変えているのです。森薫さんの新境地でしょうか。