佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『プリズンホテル 【1】 夏』(浅田次郎・著/集英社文庫)

『プリズンホテル 【1】 夏』(浅田次郎・著/集英社文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。

極道小説で売れっ子になった作家・木戸孝之介は驚いた。たった一人の身内で、ヤクザの大親分でもある叔父の仲蔵が温泉リゾートホテルのオーナーになったというのだ。招待されたそのホテルはなんと任侠団体専用。人はそれを「プリズンホテル」と呼ぶ―。熱血ホテルマン、天才シェフ、心中志願の一家…不思議な宿につどう奇妙な人々がくりひろげる、笑いと涙のスペシャル・ツアーへようこそ。 

 

 

プリズンホテル〈1〉夏 (集英社文庫)

プリズンホテル〈1〉夏 (集英社文庫)

 

 

主人公がDVまがい(というよりDVそのもの)のイヤミなヤツなのに加えて、やくざの世界が物語の舞台となっているのでなかなか入り込みにくい嫌いはある。しかし考えてみればこの主人公、大学には受験に失敗し自衛隊に入った経歴を持つ売れっ子作家という浅田氏自身を想起させる人物だという事情を考えると、こうした人物設定にしたこともやむを得まい。というのも浅田氏が、自分自身を想わせる人物をかっこよく正義の人間として書くくらいなら舌を噛んで死んでしまった方がましだと考えているであろうことは容易に察しがつくからである。

いつものことながらキッチリ笑わせ、最後はホロリとさせる浅田氏の力量に恐れ入りました。

 

一部上場企業の取締役であったが会社を退職し、それを機に妻から三行半を突きつけられそうな男のセリフがいかしてたので記しておく。

「そうか----だったら言うな。おまえは三界に家のない女房だし、俺は七人の敵と戦ってきた亭主だ。不満を言い合えばキリがあるまい。おたがい自分の苦労は自分ひとりで背負っていこうじゃないか。老いたりとは言え、いや、老いたればこそ、それが夫婦のルールというものだ。ちがうか、志保」