佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『プリズンホテル 4 春』(浅田次郎・著/集英社文庫)

『プリズンホテル 4 春』(浅田次郎・著/集英社文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。

 義母の富江は心の底から喜んだ。孝之介が文壇最高の権威「日本文芸大賞」の候補になったというのだ。これでもう思い残すことはない…。忽然と姿を消した富江。その行方を気に病みながらも、孝之介たちは選考結果を待つべく「プリズンホテル」へ。果たして結果はいかに?懲役五十二年の老博徒や演劇母娘など、珍客揃いの温泉宿で、またしても巻き起こる大騒動。笑って泣ける感動の大団円。

プリズンホテル〈4〉春 (集英社文庫)

プリズンホテル〈4〉春 (集英社文庫)

 

 

読み終えて判ったこと、それはこの小説が「真心」を描いたものだということ。<1>夏に見られた屈折した主人公の暴力の不快感、極道小説、ドタバタ喜劇の安っぽさは<4>春に至ってがらりと趣を変える。浅田氏は体裁こそ泣き笑いドタバタ喜劇ではあっても、それをそれぞれに事情を抱えた登場人物に温かい眼差しを注ぎ応援する人間賛歌にまで昇華させた。生きていくのに必要なのは小賢しい理屈ではない。「情」に適うことこそが人として幸せに生きていく道なのだと教えられた気がする。

この作品を未読の諸兄諸姉には是非読んでみられることをオススメする。できればまず『きんぴか』を読み本書を読んでいただきたい。どちらの作品にもいわゆる偉い人は出てこないが、高潔な魂を持った半ちく者がわんさか登場します。「血まみれのマリア」こと阿部まりあにも出会えます。