佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2015年10月の読書メーター

2015年10月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:4680ページ
ナイス数:2732ナイス

先月はなんといっても浅田次郎氏、荻原浩氏、重松清氏といった泣かせ屋の小説を楽しんだ。やはり私はこうしたハートウォーミングな感動を与えてくれる小説が一等好きだ。いつものことながら藤原正彦氏と髙山正之氏の随筆も思わず膝を叩きながら読ませていただいた。この国の現状を見る上でお二人の随筆はたいへん参考になり、すぅっと腑に落ちるから気持ちが良い。



決定版 この国のけじめ (文春文庫)決定版 この国のけじめ (文春文庫)感想
かつて日本人は矜持を持って生きてきた。武士道の真髄である惻隠の情をもって物事に対処してきた。そうした高貴なふるまいを尊んできた国民が大東亜戦争に敗れ、アメリカの巧みな情報操作によって、日本人が長く大切にしてきた価値観を見失ってしまった。この国はいつから強い者が弱い者を踏みつけるような国になってしまったのか。金さえ儲かれば心の有り様などどうでもよいという下品な国になってしまったのか。たかが経済に右往左往するな。本当に大切なのは教養であり文化であり惻隠という心の有り様なのだ。概ね以上が藤原氏の存意かと。
読了日:10月31日 著者:藤原正彦


変見自在 習近平よ、「反日」は朝日を見倣え変見自在 習近平よ、「反日」は朝日を見倣え感想
新聞が書くウソ、書かない真実。一見正義に見せかけられた戦勝国歴史観が、嘘で塗り固められ綺麗に見せかけたものであって、真実は違うものであること。我々が知らないまま巧みな情報操作で植え付けられたものの見方を見事に覆してくれる。福島原発事故の真実、キューバ、アフガン、ボスニア・ヘルツェゴビナの真実、正義を振りかざすアメリカの裏の顔、JR福知山線事故の真犯人はJRの歴代社長ではなく実は●●であったなどなど、言われてみればなるほどと認識を新たにすることばかり。世界の裏側を我々はもっと勉強すべきと教えてくれる。
読了日:10月28日 著者:高山正之


シャーリー 2巻 (ビームコミックス)シャーリー 2巻 (ビームコミックス)感想
いい年したオジサンが読むものではないことは判っている。言っておくが私はロリコンではない。そんなことを言ってもあやしいと疑われるに決まっているので、早い話、誤解がイヤならレビューをアップしなければ良いのだ。しかしそれでは私が彼女の作品を色眼鏡で見ていることになってしまう。例えばエロ本を読んだとして、わざわざそれをブログにアップするバカはいないだろう。もし私が彼女の作品を読んだことをブログに書かなければ、私はエロ本と彼女の作品を同列に扱うことになってしまうのだ。それでは森氏に申し訳が立たないではないか。うぅ!
読了日:10月26日 著者:森薫


ぬけまいる (講談社文庫)ぬけまいる (講談社文庫)感想
人は皆、凸凹である。とがっていたり穴が空いていたり、過ぎたり足りなかったり。ところが良いところに目を転じれば素晴らしいものを持っている。良いところを軸にその人を是認すれば、過ぎたるところ足りないところはすんなり受け入れられるものだ。いやむしろその欠点が愛らしくもなる。若いころ「馬喰町の猪鹿蝶」と称されたちゃきちゃきの江戸娘がお伊勢参りの旅の中でほんとうの大人になっていく心の移り変わりにじんときた。大人になるとは「恕」の心を身につけることかもしれない。 子貢問曰、有一言而可以終身行之者乎。子曰、其恕乎。
読了日:10月26日 著者:朝井まかて


ミシュランガイド兵庫 2016 特別版ミシュランガイド兵庫 2016 特別版感想
これまで兵庫県では「神戸」のみであったエリアが兵庫県全体に拡がっています。神戸では☆☆の『玄齋』をひいきにしている私ですが、さて姫路ではどうかとみると、『温味 旬期』☆、『紅鶴』☆と私が時々行く店がある。嬉しいことです。さらに『まとの』も☆を獲得。ここには『ミシュランガイド 兵庫 2016 特別版』の発表のあった今月20日の夜に行っていたのです。ミシュラン☆を獲得したことを知らずに行ったのですが、料理を出してくれた女将から聞いてびっくり。良い思い出になりました。もちろん料理も酒もおいしかったですよ。
読了日:10月24日 著者:


プリズンホテル〈4〉春 (集英社文庫)プリズンホテル〈4〉春 (集英社文庫)感想
読み終えて判ったこと、それはこの小説が「真心」を描いたものだということ。<1>夏に見られた屈折した主人公の暴力の不快感、極道小説、ドタバタ喜劇の安っぽさは<4>春に至ってがらりと趣を変える。浅田氏は体裁こそ泣き笑いドタバタ喜劇ではあっても、それをそれぞれに事情を抱えた登場人物に温かい眼差しを注ぎ応援する人間賛歌にまで昇華させた。生きていくのに必要なのは小賢しい理屈ではない。「情」に適うことこそが人として幸せに生きていく道なのだと教えられた気がする。
読了日:10月24日 著者:浅田次郎


プリズンホテル〈3〉冬 (集英社文庫)プリズンホテル〈3〉冬 (集英社文庫)感想
「生」と「死」を見つめ、「愛」と「憎しみ」を考える巻となった。「生」と「死」は背中合わせであっても実は同じものではあるまいか。「愛」と「憎しみ」もまた然りである。本書を読んで死に方とは生き方のことであって、憎しみは愛の一つのかたちなのだと理解した。 「いいか小僧。死んでもいいというのと、死にたいというのは大ちがいだ。最高の男と最低の男のちがいだぞ。一緒くたにするな」という伝説のアルピニスト・武藤嶽男の台詞に背筋が伸びた。
読了日:10月21日 著者:浅田次郎


プリズンホテル〈2〉秋 (集英社文庫)プリズンホテル〈2〉秋 (集英社文庫)感想
さすが「小説の大衆食堂」を自称するだけあって様々な味を楽しめる悪漢泣き笑い人情小説ですね。大衆食堂で大切なことは気取らないこと、何度食べても飽きない味だろう。浅田氏が「一流レストラン」ではなく「大衆食堂」を自認するのは、けっしてご自身を卑下してでのことではないはず。多くの読者を笑わせ、しんみりさせ、泣かせる自信があってのこと、「これだけの小説を書けるものなら書いてみろ」という矜持を持ってのことだろう。浅田氏は本作中の登場人物・鉄砲常にこう言わせています。「ミソもクソも、似たようなもんですよ」と。
読了日:10月19日 著者:浅田次郎


プリズンホテル〈1〉夏 (集英社文庫)プリズンホテル〈1〉夏 (集英社文庫)感想
主人公がDVまがい(というよりDVそのもの)のイヤミなヤツなのに加えて、やくざの世界が物語の舞台となっているのでなかなか入り込みにくい嫌いはある。しかし考えてみればこの主人公、大学には受験に失敗し自衛隊に入った経歴を持つ売れっ子作家という浅田氏自身を想起させる人物だという事情を考えると、こうした人物設定にしたこともやむを得まい。というのも浅田氏が、自分自身を想わせる人物をかっこよく正義の人間として書くくらいなら舌を噛んで死んでしまった方がましだと考えているであろうことは容易に察しがつくからである。
読了日:10月17日 著者:浅田次郎


すかたん (講談社文庫)すかたん (講談社文庫)感想
最近、はまりつつある朝井まかて氏の小説。『花競べ』『ちゃんちゃら』に続きこれが三冊目。今のところこれが一番の好みです。問屋として野菜の生産者とどのように向き合うべきかを問う仕事小説として、邪な謀略により一旦は煮え湯を飲まされるものの最後には正しい者が勝つ勧善懲悪ものとして、いじいじするほどもどかしい恋愛ものとして、この小説は様々な顔を持つ極上のエンターテイメント時代小説である。次は『ぬけまいる』を読もう。どんなふうに楽しませてもらえるか、ワクワクする。
読了日:10月14日 著者:朝井まかて


母恋旅烏 (双葉文庫)母恋旅烏 (双葉文庫)感想
荻原氏の最高傑作との呼び声が高い本作ではあるが、何となく入り込むのに時間がかかった。17歳になる主人公・寛二の小学生のような語り口(これには荻原氏なりの意図があるように思えるのだが)にすんなり馴染むことができなかったが故である。しかしそれに慣れさえすればいつもの荻原氏の世界だ。「笑い」と「涙」、それこそが荻原氏の真骨頂。登場人物それぞれの幸せを願い応援しながら読みました。
読了日:10月12日 著者:荻原浩


なかよし小鳩組 (集英社文庫)なかよし小鳩組 (集英社文庫)感想
ユニバーサル広告社シリーズ・第2弾。愉快痛快ユーモア小説。ささやかではあっても仕事に矜持をもつお仕事小説でもある。かつ家族を思う切ない心を綴った家族小説でもある。「読んでよかった」荻原氏の小説を読むといつもそう思う。「世の中、すてたもんじゃない」「今日も頑張ろう」そんな風に前向きな気持ちになる。なんとなくささくれ立っていた気分がいつのまにか潤いを持ち、世の中を見る目つきが変わってくるから不思議だ。次は『母恋旅烏』を読もう。『噂』『さよならバースディー』も本棚にひかえている。しばらく荻原氏の世界を楽しもう。
読了日:10月9日 著者:荻原浩


オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)感想
最近文庫化されたユニバーサル広告社シリーズ・第3弾『花のさくら通り』から本書にたどり着いた次第。荻原氏の小説はこれまで結構読んできたのだが、氏のデビューが本作だったこと、本作が第10回小説すばる新人賞を受賞したことを知らずにいたのはとんまとしか言いようがない。読んでいて唯々楽しい。最高のエンターテイメント性を持つ小説だ。何よりも良いところは荻原氏の登場人物に注ぐ温かいまなざしである。これは重松清氏や山本幸久氏の小説と共通する特色であり、おそらく荻原氏の本領とするところであろう。私はこうした小説が大好きだ。
読了日:10月7日 著者:荻原浩


管見妄語 大いなる暗愚 (新潮文庫)管見妄語 大いなる暗愚 (新潮文庫)感想
「大いなる暗愚」とはあるいはマスコミのことでもあるのだろう。著者が「はじめに」に書いていらっしゃる「もし本書に新しい視点が少しでもあったとしたら、それはいつも本質を外しておいてくれるマスコミの親切のおかげである」とは痛烈な皮肉である。民主主義の見苦しさ、国民の目線に立った政治などというポピュリズムのあさはか、移ろいやすく無責任な民意、優秀な官僚を使いこなせない無能な政治家、民主党に見る薄っぺらな人気取り政策等々、世の中は忌々しいことばかり。それを一刀両断に切って捨てる著者の文章の小気味良さに胸のすく思い。
読了日:10月5日 著者:藤原正彦


みぞれ (角川文庫)みぞれ (角川文庫)感想
普通の人が抱える問題、普通の人の哀しみ、苦しみ、悩みを描いた11の短編。11の物語の中には自分に置き換えて胸に迫る話もあるし、そうでなくともありそうな話として登場人物の気持ちを汲み取って「わかるなー」と感情移入することも多いだろう。そして重松氏の小説の常として、読み終えた後に何かしらの救いがあるのだ。それは重松氏が登場人物に注ぐ温かいまなざし故のことだろう。おそらく重松氏は人(たとえそれが欠点の多い普通の人であっても)の心の底にある善意を信じているから、あるいは信じようと決意しているからだと思う。
読了日:10月2日 著者:重松清

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