佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2018年9月の読書メーター

9月はいろいろな意味で個性の際だった作品を読めました。

 

9月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1276
ナイス数:1317

(P[あ]8-4)君の嘘と、やさしい死神 (ポプラ文庫ピュアフル)(P[あ]8-4)君の嘘と、やさしい死神 (ポプラ文庫ピュアフル)感想
何故ヒロイン玲は文化祭で落語をやることにこだわったのか? その答えが判ったとき、私の心は震えた。「死」をテーマにした落語は数多い。落語は私たちの隣り合わせにある死という運命をユーモアで笑い飛ばした。「死神」においてろうそくの形で見える寿命。ろうそくの炎はちょっとした風で消えてしまうし、残った長さもいつかは尽きる。しかし、ろうそくの寿命は別のろうそくに火を継いで延ばせる。「死への怖れ」と「生への希望」。医者から死を宣告された人間にとって、落語の死生観は果たして救いとなるのか。私はそうであってほしいと願う。
読了日:09月08日 著者:青谷 真未


眼球綺譚 (角川文庫)眼球綺譚 (角川文庫)感想
読むきっかけになったのはスタンリィ・エリン氏の小説『特別料理』を読んだこと。本書に収められた短編「特別料理」がスタンリィ・エリン氏へのオマージュとして書かれたものと知って読みたくなったのである。ひと言でいえば「悪夢」です。私の心の中にある悪魔が見させた悪夢。読みたくないのに読みたい。やめよう、もうやめようと思いながら続きを読んでしまう。そうした類いの小説集。ただ単にホラーであるというだけでなく、読者に謎を提示しておいて意外性のある結末で終わるというミステリの手法を用いている。そのあたりは流石と唸らされる。
読了日:09月14日 著者:綾辻 行人


月と菓子パン (新潮文庫)月と菓子パン (新潮文庫)感想
石田千さんの本を読むのはこれが3冊目。なんでもない日、どこにでもある話が石田さんの手にかかると愛おしくなる。石田さんのこころのありようと、ものを見る目をとおした日常風景はあたたかく、味わい深い。毎日をあたりまえに生きること、ふとしたことに目を向けること、ちょっとした贅沢をしてみること、そうした日常のなかにある幸せを見つける作業が石田さんにとってエッセイを書くということなのだろう。人生はすばらしい。
読了日:09月21日 著者:石田 千


コンビニ人間 (文春文庫 む 16-1)コンビニ人間 (文春文庫 む 16-1)感想
子供の頃、自分を周りに合わせるのに苦労した経験を持つ私にとって、本書は忘れなければならない過去を呼び覚ましてしまうものだ。当時、家族を含む周りは私を矯正しなければならないという確固たる意志をもって動いていた。幸か不幸か私は今、社会に適合している。その度合いは周りからみて十分すぎるほどだ。たまに本当の自分を隠しきれずぶっ飛んだ考えを表明してしまうことがあるが、それを周りは許容できる程度の多様性と好感するようだ。本書は無垢であった過去の私を蘇らせ、今の私に「このウソつきめが!」と迫ってくる。少々居心地が悪い。
読了日:09月24日 著者:村田 沙耶香


好きになった人 (ちくま文庫)好きになった人 (ちくま文庫)感想
梯さんの好きになった人は栗林忠道島尾ミホ石垣りん森崎和江、管野スガ、東君平森瑶子吉本隆明児玉清、そして老いた父。本書はもともとエッセイ集『猫を抱いた父』が文庫化されたものである。「猫を抱いた父」というエッセイはたまたま老いた父とトルコ旅行に出かけることになり、これまでほとんどコミュニケーションをとってこなかった父の意外な姿を見ることで自分の中にある父のイメージがだんだん変わっていく様が書かれている。だんだん父親を一人の男として尊敬していく様子がうかがえる秀作。私は梯さんが好きになったかも。
読了日:09月29日 著者:梯 久美子


新潮45 2018年 09月号新潮45 2018年 09月号感想
特集は【「茶の間の正義」を疑え】。「茶の間の正義」とは山本夏彦氏の言葉である。多くのメディアが茶の間におもねって垂れ流す底の浅い正義を「何が悪い?」と開き直って問いかける。批判を怖れず硬派な姿勢をつらぬくあたり見上げた根性です。この雑誌が危ないのではない。マイノリティーの人権擁護に熱心で、さも社会に寛容さを求めているように振る舞いながら、自分たちの気に入らない主張に対し不寛容な勢力が巧みな印象操作で世論を操っていくことこそが危ないのではないか。「新潮45」の休刊に危険な兆候を感じるのは私だけだろうか。 
読了日:09月30日 著者: 

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