佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『かあちゃん』(山本周五郎・著/ハルキ文庫)

かあちゃん』(山本周五郎・著/ハルキ文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

女手ひとつで五人の子供を育てているお勝と、その家に入った泥棒との心の通い合いを描いた表題作をはじめ、山本周五郎が、人間の“善なる心”をテーマに遺した作品から、全五篇を厳選。文庫オリジナル。

 

かあちゃん (ハルキ文庫)

かあちゃん (ハルキ文庫)

 

 

町奉行日記】
時代ものとして充分に楽しめる内容。
人としての心のあり様、人としての生き様、本当に大切な物、本当の幸せとは何かを鮮やかに描いた秀作。感涙必至。
【末っ子】
家族、とくに兄弟姉妹の情を描いて微笑ましい。
【こんち午(うま)の日】
 沢木耕太郎・篇の山本周五郎短編集『裏の木戸はあいている 山本周五郎 名品館 Ⅱ』にも収められており、一度読んではいたがこのたびも夢中で読んだ。不器用な塚次の善良で誠実な生き方が胸を打つ。本短編集の中で一番と思える作品。
【「ひとごろし」】
当たり前のことではあるが武に秀でただけでは本当に強いとはいえない。本当の強さとはなにかを考えさせ、人の値打ちに決まり切った型があるわけではないことをユーモラスに描いて妙。
 
 ここに描かれた主人公達はバカです。もっとうまい立ち回り方があるだろうに、真正直に生きようとしたり、己のことを後回しにして人のために何かをしようとする。ひと言で言えば不器用なバカ正直。何に対してバカ正直なのか、それは自分で決めたこと、自分の価値観に対してバカ正直なのです。損得も後先もない。自分はこう生きると決めたらそう覚悟する。「追い求めるのはそう決めたから。決めたことはやるしかない」そういう生き方がここに描かれています。人を出し抜いてやるとか、人をだましても儲けたいといった昨今の小賢しい輩とは全く違う生き様に感動します。