佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2019年1月の読書メーター

1月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2739
ナイス数:1017

 

 先月は正月休みを利用して長編のSF名作『ふりだしに戻る』を読んだ。やはりジャック・フィニィはすばらしい。そうなるともっとSFが読みたくなるのが読書の流れというもの。レイ・ブラッドベリの短編集『太陽の黄金(きん)の林檎』も読んだ。これらはSFの古典と言ってよい作品だが、SF小説の楽しみは古典よりむしろ最近の作品にあると思う。上田早夕里の『夢みる葦笛』を読んだのは僥倖であった。早くも今年読んだ本のNo.1と言ってしまいたい気になるほどだ。その他、食べもの系の本も良い物に出会えたし、山本周五郎の短編集『かあちゃん』には人としてどうあるべきかを考えさせられた。


100万分の1回のねこ (講談社文庫)100万分の1回のねこ (講談社文庫)感想
本書は佐野洋子100万回生きたねこ』への、13人の作家によるトリビュート短篇集です。私のお気に入りは江國香織「生きる気まんまんだった女の子の話」、井上荒野「ある古本屋の妻の話」、角田光代「おかあさんのところにやってきた猫」といったところ。それぞれ”人を愛することとはなにか”についてひとつの答えに到達していると思えるからである。久しぶりに『100万回生きたねこ』の頁を開いてみたくなった。
読了日:01月28日 著者:江國 香織,岩瀬 成子,くどう なおこ,井上 荒野,角田 光代,町田 康,今江 祥智,唯野 未歩子,山田 詠美,綿矢 りさ,川上 弘美,広瀬 弦,谷川 俊太郎


かあちゃん (ハルキ文庫)かあちゃん (ハルキ文庫)感想
ここに描かれた主人公達はバカです。もっとうまい立ち回り方があるだろうに、真正直に生きようとしたり、己のことを後回しにして人のために何かをしようとする。ひと言で言えば不器用なバカ正直。何に対してバカ正直なのか、それは自分で決めたこと、自分の価値観に対してバカ正直なのです。損得も後先もない。自分はこう生きると決めたらそう覚悟する。そういう生き方がここに描かれています。人を出し抜いてやるとか、人をだましても儲けたいといった昨今の小賢しい輩とは全く違う生き様に感動を覚えます。
読了日:01月27日 著者:山本 周五郎


夢みる葦笛 (光文社文庫)夢みる葦笛 (光文社文庫)感想
10篇の短編を収録。すべて極上のSFです。『眼神』『完全なる脳髄』が特に好み。人間と機械を分けるものはなにか。人の知能と人工知能の違い。人工知能は人の知能を超える能力を持つことは明らかだろうが、そんな人工知能でも人の知能の真似が出来ない部分があるだろう。人工知能はどこまで人に近づけるのか、果たして同化できるのだろうか。そんなことを考えながら本書を読むのは非常にエキサイティングな経験でした。極上の時間を下さった上田早夕里氏に感謝したい。
読了日:01月24日 著者:上田 早夕里


毎日のお味噌汁毎日のお味噌汁感想
季節季節に本書の頁をぱらぱらめくって、旬を感じる味噌汁を作ると毎日に彩りがそえられるだろう。今の季節なら「蓮根のすりおろし味噌汁」「小芋と芽キャベツの味噌汁」「鰤の塩焼きとおろし大根の味噌汁」あたりが良いかな。
読了日:01月20日 著者:平山由香


アンソロジー カレーライス! ! 大盛り (ちくま文庫)アンソロジー カレーライス! ! 大盛り (ちくま文庫)感想
そうそうたるメンバーによるカレーライス礼讃。これらの方がカレーについて書く、それも熱く語るというところにカレーライスがいかに愛されているかが分かる。私はこれまでカレーライスが嫌いだという人に会ったことがない。もちろんカレーライスが嫌いだという人が皆無だとは思わない。しかし探してやっと見つかるぐらいの数であろうことは想像に難くない。子供の頃、私はカレーライスを食べ過ぎて医者にかかったことがある。親は慌てたろうが、医者は「バカな子供だ」と笑ったに違いない。そうなのだ。私はカレーが大好きなのだ。文句あっか?
読了日:01月19日 著者: 


太陽の黄金(きん)の林檎〔新装版〕 (ハヤカワ文庫SF)太陽の黄金(きん)の林檎〔新装版〕 (ハヤカワ文庫SF)感想
22篇の短編小説。正直なところ、よく分からないものも収録されている。もちろん味わい深いものが多いのではあるが。私は過去にタイムトラベルして蝶を踏みつけてしまったために、元の年代に戻ってみたらタイムトラベル前と世の中が変わってしまっていたという話「サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)」を読みたくて本書を読んだ。「四月の魔女」が最高。それ以外では「黒白対抗戦」「ごみ屋」が良かった。考えさせられるところの多い作品で、何度も読み返すに値する短編だろう。
読了日:01月05日 著者:レイ ブラッドベリ


味見したい本 (ちくま文庫)味見したい本 (ちくま文庫)感想
食に関する蘊蓄を深めながら書評として本の興味もそそられる。しかも終盤に酒本について書かれている。私にとってこれほど嬉しいことはない。さすがはお酒ミニコミ『のんべえ春秋』編集発行人の木村衣有子氏だ。特に気になったのは『東京ひとり歩き ぼくの東京地図。』(岡本仁) すぐに注文したことは言うまでもない。湯島の酒場「シンスケ」、浅草「アンヂュラス」のハイボール、池袋の酒場「千登利」の肉豆腐、これらはまさに東京の”粋”というものだろう。根っからの関西人の私には少々悔しいが、イイものはイイ。 
読了日:01月05日 著者:木村 衣有子


ふりだしに戻る (下) (角川文庫)ふりだしに戻る (下) (角川文庫)感想
タイムトラベルロマンスを読むならまず読むべき古典的名作。人類はタイムパラドックスの危険性を認識しながらもタイムトラベルを中止することができない。人類とはそうしたものだということ。そして、過去へのタイムトラベル中に、好ましくない未来を予感させる出来事が進行しつつあるとき、人はそれを傍観すべきか。それを目の当たりにしてじっとしていられるのだろうか。そうしたことがテーマとなっています。自分ならどうするだろう。
読了日:01月03日 著者:ジャック・フィニイ


ふりだしに戻る〈上〉 (角川文庫)ふりだしに戻る〈上〉 (角川文庫)感想
時空を超えたタイムトラベルロマンスを読むならば押さえておくべき古典的名作。前半は冗長だがここは辛抱して丁寧に読み進める必要あり。ここでの辛抱がめまぐるしい展開を見せる後半に生きてくるのだから。 
読了日:01月03日 著者:ジャック・フィニイ,福島 正実

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