佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2020年10月の読書メーター

 10月は何と言っても森見登美彦氏の最新刊を読めた歓び、これに尽きる。あまり嬉しいので映画『サマータイムマシン・ブルース』まで観てしまった。流れに任せて読む本を決めていく読書サーフィンではカフェものの流れがきた。『虹の岬の喫茶店』(森沢明夫)→『ハートブレイク・カフェ』(ビリー・レッツ)→『木曜日にはココアを』(青山美智子)とそれぞれほんわか温まった。

 

10月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2543
ナイス数:1379

四畳半タイムマシンブルース四畳半タイムマシンブルース感想
こ・・・これは! なんと歴史改変SFではないか。「もしもクレオパトラの鼻が低かったら」というやつである。あるいはレイ・ブラッドベリの名作『サウンド・オブ・サンダー』に描かれた、過去にタイムトラベルして蝶を踏みつけてしまったために、元の年代に戻ってみたらタイムトラベル前と世の中が変わってしまっていたというテーマである。ただ、「クレオパトラの鼻」が、あるいは「蝶」が「エアコンのリモコン」になっているところがいかにも四畳半的ではある。
読了日:10月06日 著者:森見 登美彦


始まりの木始まりの木感想
夏川氏の神様のカルテ・シリーズが好きで、まだまだ続きを読みたくもあるが、こうして新しいシリーズが刊行されることは嬉しいかぎり。いや、未だシリーズ化されるかどうかは判らないのでしょうか。シリーズは違えど、「命」「心」「人としての生き方」「矜持」といったことを連想させるテイストはやはり夏川氏のものだ。科学や人知を超えた不思議な話も盛り込まれた新境地。今後この物語がどう展開していくか楽しみです。シリーズ化されることを願います。
読了日:10月07日 著者:夏川 草介


文豪の食卓文豪の食卓感想
作家と言えば食事と酒だ。もちろん例外がないわけではないが、大方の作家のエピソードには食へのこだわりがある。そうした作家に倣って食してみるとなるほどうまい。故に『文豪の食卓』などという本に出会うと必ず読んでしまう。そして作家が足繁く通ったという店のことが書いてあると、ググってみる。今も実在するとなるとGoogleマップに☆印を付ける。いつの日か近くに行くことがあれば店の暖簾をくぐろう、同じ物を食おう、酒も飲もうということになる。また地図上に☆が増えた。私の地図は☆だらけである。長生きせねば・・・
読了日:10月09日 著者:宮本 徳蔵


変見自在 習近平は日本語で脅す変見自在 習近平は日本語で脅す感想
とにもかくにも過去の歴史の評価については、それがたとえ教科書に書いてあることであっても本当にそうなのかという疑いの目を持ち、反対側の意見にも目を通し、捏造されたものではない確実なエビデンスがあるのかどうかをあたったうえでなされねばならない。そして過去の歴史においてこれが正史であるとされてきたものの多くは戦勝者の視点で書かれているのであって、多分に戦勝者の行いを正当化しているということに注意しなければならない。それは先の大戦においても同じであって、連合国のバイアスのかかった歴史観がまかり通っている。
読了日:10月09日 著者:髙山 正之


虹の岬の喫茶店 (幻冬舎文庫)虹の岬の喫茶店 (幻冬舎文庫)感想
生きていくうえでの悲しみ、大切な人へのいとおしい気持ち、自分の弱さを知りつつ折れるわけにはいかないと懸命に立ち続ける姿、たまたま袖振り合った人への温かいまなざし、そうした真心が引き起こすささやかな奇蹟が描かれています。  ささやかな奇蹟といえば、この本を携えて小豆島を走っている最中、岬にさしかかったときに海の向こうに虹がかかりました。偶さかの出来事です。それでも生きているっていいなぁと思わせてくれた出来事でした。
読了日:10月16日 著者:森沢 明夫


ハートブレイク・カフェ (文春文庫)ハートブレイク・カフェ (文春文庫)感想
幸せとは何だろう。また不幸とは。そうありたいと願ったことがそのとおり叶わなければ不幸なのだろうか。すべてが思いどおりになる人などいない。ではこの世に幸せな人は一人もいないのだろうか。幸せのかたちはひとつではない。幸せの感じ方、感じるときは人それぞれだ。どんなに生活が窮乏していても、孤独であっても、障碍を得ても、人は心の中にそうあって欲しい未来を描くことが出来る。よく人生は航海に例えられる。逆境にあっても一筋の光と温もりを求めてひたむきに生きていれば、船はいつか行き着くところに行く。人生捨てたもんじゃない。
読了日:10月22日 著者:ビリー レッツ


旅のつばくろ旅のつばくろ感想
歳を重ねられさらに文章が洗練されてきた感がある。本書の中に駆け出しのライターだった頃に、編集者から「文章から無駄な形容詞を排除することを徹底的に叩き込まれた。どうしても必要なら、前のセンテンスで説明しろ、と」とあった。なるほどそういうことか。  やはり沢木氏の旅物は良い。氏の旅のスタイルに憧れるからである。カッコイイ。
読了日:10月23日 著者:沢木 耕太郎


新装版 柳生刺客状 (講談社文庫)新装版 柳生刺客状 (講談社文庫)感想
柳生刺客状」は関ヶ原の決戦前に徳川家康が暗殺され、影武者である世良田二郎三郎が家康になりすまし続けるという設定。そういえば隆氏の代表作『影武者徳川家康』を私は未だ読んでいないではないか。うかつであった。これは読まねばならぬな。 「張りの吉原」は隆氏の小説家デビュー作にして名作の『吉原御免状』の系譜を継ぐ作品。剣劇ものではなく なんとも艶っぽい話であった。濡れ場も決して下卑に流れることなく、剣戟なみに張り詰めた読み応えがある。 「狼の眼」 「死出の雪」は隆氏らしい剣豪ものの佳作。
読了日:10月25日 著者:隆 慶一郎


木曜日にはココアを (宝島社文庫)木曜日にはココアを (宝島社文庫)感想
人には奇蹟の瞬間がある。オリンピックで金メダルを取ったといった輝かしい出来事ではないけれど、なにかの時にふと思い出すような出来事。そう今日のような小春日和の午後、開け放った窓からの景色を眺めながらココアを飲んでいるようなときに、ふと記憶を呼び覚ます甘く温かな瞬間がきっとある。  溢れる思いをさりげないひと言に込めて言うことしかできない小さな勇気しかないけれど、周りの人を思いやる真心を持って生きていればいつか奇蹟は起きる。心地よい予定調和に満足して本を閉じました。思いのほかお熱いので、お気をつけください。
読了日:10月28日 著者:青山 美智子

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