佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

四月の読書メーター

四月は浅田次郎氏、百田尚樹氏、高田郁氏など、好きな作家の本を読んだので、量的にも多くの冊数を読んだ。そしてどうやら新たなお気に入り作家が出来そうな様子でもある。それは大崎梢氏である。まだ『平台がおまちかね』しか読んでおらず、シリーズ続編『背表紙は歌う』を読んでみないとわからないとはいいながら、『平台がおまちかね』の出来からして、絶対に期待が裏切られることは無いだろう。物語のテイスト、読後感、登場人物のキャラ、すべての面で満足がいくものであった。これからこの作家を追いかけていくことになるだろう。

 

2014年4月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:4853ページ
ナイス数:2940ナイス

平台がおまちかね (創元推理文庫)平台がおまちかね (創元推理文庫)感想
世の中にこんなに楽しそうな仕事があったとは。過去、出版社の編集(とりわけ作家担当)だとか、図書館の司書、書店員さんをうらやましく思ってきましたが、そうか、出版社の営業担当があったのだ。これは本好きには天職ではあるまいか。またまたお気に入りシリーズができてしまったようだ。早速、書店に行き『背表紙は歌う』を購入。「成風堂書店事件メモ」シリーズも気になる。『配達あかずきん』『晩夏に捧ぐ』『サイン会はいかが?』も買おう。あっ、その前にジョン・ダニングの未読本を読まねばと、本棚の積読本『災いの古書』を手にとった。
読了日:4月30日 著者:大崎梢


かないくん (ほぼにちの絵本)かないくん (ほぼにちの絵本)感想
谷川俊太郎さんの詩が絵本になった。死んだらそれで終わりなのか。死んでも、生きているものは何も変わらない。死んだらひとりぼっちなのか。終わりとは何か、始まりとは何か、考えても解らない。解らないから考える。解らないから知りたい。
読了日:4月29日 著者:谷川俊太郎

 

 

 


サクラ咲く (光文社文庫)サクラ咲く (光文社文庫)感想
私は今五十四歳。今更、青春でも無いだろうと思いながら読んだ。ところがどうだ。あのころの甘酸っぱいような、ほろ苦いような、不安なのに希望に満ちた、なんとも言いようのない感覚がよみがえってくるようであった。四月ももうすぐ終わろうとしているこの時季に読んだのもよかったのかも知れない。束の間、若返りました。来週には同級生数人といっしょにゴルフをする。しばし三六年前の高校生に戻りますか。
読了日:4月28日 著者:辻村深月

 

カープ島サカナ作戦 (文春文庫)カープ島サカナ作戦 (文春文庫)感想
ご存じシーナ氏の「赤マント・シリーズ」なのだ。例によって特段役に立つ話など無い。島に行く。ビールを飲む。魚を食う。本を読む。昼寝する。誠に結構ではないか。文句なし。「近頃ちょっとシリアスになりすぎているな、オレ」といった状況下で読むと大変よろしい。身体の力が抜け、脳のねじが緩み、バランスが取れてくる。生きて行くにはバランスが大切だ。椎名氏が読んだという『アブラコの朝 - 北海道田舎暮らし日記』(はた万次郎・著/集英社)と『ハイペリオン』(ダン・シモンズ:著/海外SFノヴェルズ)を発注。
読了日:4月26日 著者:椎名誠


ふるさと銀河線 軌道春秋 (双葉文庫)ふるさと銀河線 軌道春秋 (双葉文庫)感想
「さよならだけが人生ならば、また来る春はなんだろう はるかなはるかな地の果てに 咲いている野の百合何だろう」 確かに幸福が遠いときはある。確かに手に入れたと思った幸福もスルリと手からこぼれ落ちてしまうこともある。それでも幸福はいつか自分に寄り添ってくれると信じたい。スルリと手からこぼれ落ちた幸福も、せめて幸福であった瞬間のことは忘れないでいたい。「花発けば風雨多し」の喩えどおり、「サヨナラ」ダケガ人生ナラバ、どうか友よ、コノサカヅキヲ受ケテクレ。心からそう願う。


読了日:4月25日 著者:高田郁
川あかり (双葉文庫)川あかり (双葉文庫)感想
「みんな、一生懸命生きているのに、哀しいのは何故なのだろう」 生きていくのは哀しい。しかし、真っ当に懸命に生きていくならば、その哀(かな)しみもいつかは愛(かな)しみに変わる。人を信じる、約束を守る、困った人、弱い者を助ける、当たり前のことを当たり前にする人生を歩みたい。そんな想いに胸を熱くする物語でした。
読了日:4月24日 著者:葉室麟

 


刀伊入寇 藤原隆家の闘い (実業之日本社文庫)刀伊入寇 藤原隆家の闘い (実業之日本社文庫)感想
さがな者として名を馳せた藤原隆家。その「こころたましひ」が政敵・藤原道長ではなく、外敵・刀伊に向かうように変ずるさまは、人として練れ大成する過程そのものだろう。美しく滅びてゆくものに「雅」を見いだすことこそ、真に強い者だけが持ちうる心境だろう。この国には敗者を美しく称える雅の心がある。この国が亡びれば雅もまた亡びる。だからこそこの国を護りたい。雅やかな美しい心を護りたい。一千年前も今も日本の心は変わらない。
読了日:4月24日 著者:葉室麟


神様のカルテ 3 (小学館文庫)神様のカルテ 3 (小学館文庫)感想
このシリーズを読むとき、私の頭に鉄幹の「人を恋うる歌」が思い浮かぶ。「妻をめとらば才たけて みめ美わしく情ある 友を選ばば書を読みて 六分の侠気四分の熱 恋の命をたずぬれば 名を惜しむかな男ゆえ 友の情けをたずぬれば 義のあるところ火をも踏む 汲めや美酒うたひめに 乙女の知らぬ意気地あり 簿記の筆とる若者に まことの男君を見る」  賢く麗しい情愛あふれる妻に恵まれ、理想と情熱を抱く友に恵まれ、そのような人たちと美味い酒が飲めるならば、人生はこんなにも温かく素晴らしいものになるのだと。人生、斯くありたい。
読了日:4月21日 著者:夏川草介


ラ・タ・タ・タム―ちいさな機関車のふしぎな物語 (大型絵本)ラ・タ・タ・タム―ちいさな機関車のふしぎな物語 (大型絵本)感想
ずっと気になっていた絵本です。私には絵本を読む趣味はありません。しかし、森見登美彦氏の名著『夜は短し歩けよ乙女』に登場する黒髪の乙女が、夏の下鴨神社古書市で探し求めていたのがこの本なのです。そのシーンは私のお気に入りで、2年前の夏には炎天下、自転車を駆って古本市に出かけたくらいです。もちろんこの本を市で見つけることは出来ませんでした。ちなみに彼女は天然です。いや天真爛漫といった方が適切でしょう。純真無垢、無邪気でもあります。必殺技「おともだちパンチ」を持つ可憐な彼女を思い浮かべながら読みました。
読了日:4月17日 著者:ペーター・ニクル


珍妃の井戸 (講談社文庫)珍妃の井戸 (講談社文庫)感想
蒼穹の昴』を読んだのは六年も前のこと。『蒼穹の昴』ほどのワクワク感がなく、珍妃殺害の当事者に聴き取りをしていくという単調な展開に途中、読むのを投げ出しかけた。しかし、最後まで読んで良かった。西欧の価値観とは異質ではあっても東洋の高貴な心に触れた気がした。悲しい歴史ではあるが、手前勝手な正義を振りかざす西欧の所行に対するアンチテーゼとしての死に方、しかもそこには互いに高貴な心を持つ二人の思い(あえて「愛」という言葉は使いたくない)があったと知ったとき、私の心は震えました。冗長とも思える前振りに納得した。 
読了日:4月15日 著者:浅田次郎


長門守の陰謀 (文春文庫 (192‐5))長門守の陰謀 (文春文庫 (192‐5))感想
五編の短編のうち「夢ぞ見し」が一番のお気に入り。妻女の夫を見る眼の変化がほほえましく、幸せな夫婦のあり方が見えたような気がする。同じ組み合わせの二人でも心の有り様で幸せにも不幸にもなるのだなぁ。「春の雪」と「夕べの光」では損得では計れない女の情の深さに唸ります。「遠い少女」では女の怖さにぞっとします。女ってのは男とは別の生き物なのだとつくづく思う。
読了日:4月12日 著者:藤沢周平


ボックス!(下) (講談社文庫)ボックス!(下) (講談社文庫)感想
優紀と義平、二人の漢(おとこ)を描いた快作である。50代半ばのオジサンが今更青春モノに胸を熱くしてどうする、と何度も熱くなる自分を抑えようとしたが抑えきれなかった。感動のリミッターを外されてしまいました。鏑矢と稲村の試合のクライマックスでは「ウォーッ!」と雄叫びを上げそうになるほど昂ぶってしまいました。伝説の強打者・海老原博幸を彷彿とさせるファイター鏑矢義平に本物の強さを見た。己のパンチの強さに骨が耐えきれず骨折してしまう。たとえ骨折しても戦い続ける魂を持つ者にこそボクシングという競技は相応しい。
読了日:4月11日 著者:百田尚樹


ボックス!(上) (講談社文庫)ボックス!(上) (講談社文庫)感想
ケンカに強いかどうか。もちろんそんなことで人の値打ちは計れはしない。しかし理不尽な力の行使に対しては、それに対処する力、つまりケンカに強いかどうかが重要になり得る。そんな局面は長い人生の中でそう度々あることではない。かといって一度もないかといえば、そうでもない。一度や二度はだれにでも経験があることだ。つまり世の中には、こちらが望むと望まざるとに拘わらず理不尽な要求をふっかけられ、服従を力によって強要されることがあるということだろう。だからこそ、男は強くありたいと願う。ワクワクしながら上巻を読み終えました。
読了日:4月9日 著者:百田尚樹


播磨灘物語 4 (講談社文庫 し 1-10)播磨灘物語 4 (講談社文庫 し 1-10)感想
いよいよ中国大返し備中高松城水攻めの最中に本能寺の変の急報をうけ、「どうしてあれだけの短期間で山崎までとって返すことができたのか?」という謎に対する司馬氏流の解釈と運命のいたずらのなす物語に興奮した。そして、権力者の猜疑心の深さを知るや、己を水の如く処す官兵衛の知慮に唸った。「臣ハソレ中才ノミ」と言い放つ官兵衛の聊か口惜しくも恬淡とした態度がクールでした。一昨日は高台にあるJR赤穂線西片上駅から町を見下ろしながら、暫し、中国大返しのロマンに酔いました。幸せなひとときでした。
読了日:4月8日 著者:司馬遼太郎


日の出食堂の青春 新装版  (アクションコミックス)日の出食堂の青春 新装版 (アクションコミックス)感想
私にもありました。若かった頃、あれこれ考えるだけで結局どうして良いか判らず、経験も自信もないものだから、何もせずダラダラ過ごしてしまう時期が確かにありました。ひとかどの男になりたいけれど、たいした男になれそうもない。自分の先行きがだんだん見えてくる。そんな自分に唯一希望があるとすれば、素敵な人と結婚すること。憧れの女(ひと)が自分ではなく他の人と結婚してしまう。ただ一つの空想的希望も潰えたとき、せめて「好きでした」ということだけでも言いたかった、言えば良かったとの悔いが残る。人生の春は切なくもほろ苦い。
読了日:4月7日 著者:はるき悦巳


銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)感想
みをつくし料理帖』が大好きで高田さんの小説を読んでいる。どの作品にも共通するのは、登場人物の真心。市井に生きる人々の思いやりと矜持を引き立てて描いていらっしゃること。高田さんの小説を読むと全ての人が謙虚に、周りを思いやり助け合って生きていくなら、どんな災害に見舞われても、どんな逆境にあっても、人は誇り高く幸せに生きていけるのだと信じられる。「人生は素晴らしい」心からそう思える。
読了日:4月5日 著者:高田郁