佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『弥勒の月』(あさのあつこ・著、光文社文庫)を読む


「わたしにとって、おりんは、弥勒でございました」

『弥勒の月』(あさのあつこ・著、光文社文庫)を読みました。

弥勒の月 (光文社時代小説文庫)

弥勒の月 (光文社時代小説文庫)

裏表紙の紹介文を引きます。

小間物問屋遠野屋の若おかみ・おりんの水死体が発見された。同心・木暮信次郎は、妻の検分に立ち会った遠野屋主人・清之介の眼差しに違和感を覚える。ただの飛び込み、と思われた事件だったが、清之介に関心を覚えた信次郎は岡っ引・伊佐治とともに、事件を追い始める…。“闇”と“乾き”しか知らぬ男たちが、救済の先に見たものとは?哀感溢れる時代小説。

良い。非常に良いです。この本。
この小説には本物の男が描かれています。闇を知らず、温かいところでぬくぬくと育って、甘っちょろい正義を振りかざすようなぼんくらはこの小説には登場しません。ここに描かれるのは、己の運命を真正面から捉え、逃げることなく全てを受け入れたうえで、なお且つ自分が自分であることにこだわる男。世の中の闇を見つめ、その闇と折り合いをつけてきた男、泣き言を言わず生きていく覚悟をした男がここにいます。そして、そんな男を人間たらしめるのが「女」、「弥勒」です。「弥勒」とは釈尊の救いに洩れた衆生をことごとく済度(人々を迷いから解放し悟りを開かせること)するという未来仏のことです。
年末に良いハードボイルド小説に出会いました。
この本を紹介して下さったプーサンさんに感謝。