佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

6月の読書メーター

6月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3102ページ

 

今月読んだ本は充実していた。読み終えた後、なかなかの満足感であった。小説は全て秀作揃い。コミックも深く私の記憶に残った。雑誌も良い特集が多く保存版ばかり。良い月にござった。

ビタミンF (新潮文庫)ビタミンF (新潮文庫)
職場では責任を背負い、様々な問題解決を迫られる働き盛りの男。家庭では必要とされているのか、されていないのか解らない微妙な年代。家庭内では順風ならば顧みられることはない希薄な存在が、なにかトラブルがあると一家の大黒柱、父親としての役割が否応なしにプレッシャーとしてのしかかる存在。そんな「おとうさん」の心に効く「ビタミンF」。重松氏の描く家族は切なくも温かい。いろいろあるけれど家族ってイイなあと思える小説です。
読了日:06月08日 著者:重松 清


夕凪の街桜の国夕凪の街桜の国
原爆という重いテーマを扱いながら、原爆の加害者に対する非難の視線ではなく、むしろ原爆の記憶と向き合う形で描いている。また、被爆者に対する差別意識を浮き彫りにしつつも、それを断罪しようともしない。他を非難することはたやすい。そうすることで自分は正義の側に立てる。しかし、こうのさんはそうしなかった。そうであるからこそ、こうのさんのやさしい視線がかなしい。
読了日:06月10日 著者:こうの 史代


三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)
文例集として真似をして良いかと訊かれたら些か疑問と答えるだろう。しかし、だからといってこの小説に書かれた手紙が駄文だというわけではない。人に興味を持って読ませるという勘所をおさえているという点において名文揃いである。つまりこのような手紙は真似して書けるものではないということだ。三島氏は文才はもとよりユーモアのセンスもたっぷりお持ちのようだ。手紙だけで五人の登場人物の容姿、魅力、考え方、性格、嗜好などを鮮やかに浮かび上がらせるテクニックに感心しました。まことに素晴らしい一冊でした。
読了日:06月11日 著者:三島 由紀夫


有頂天家族 (幻冬舎文庫)有頂天家族 (幻冬舎文庫)
温かき家族愛の物語です。人間に家族があるように、狸にも家族がある。昨今、人間界の家族愛は急激に亡びつつあるが、狸界における家族愛は健在と見える。ちなみに天狗に家族があるかどうかは不明である。相変わらず森見氏の妄想は留まるところを知らず、物語は自由奔放に拡がり、妄想の産物たるキャラは都を縦横無尽に駆けめぐり波瀾万丈、八面六臂の活躍を見せる。これぞ森見氏の阿呆の血のしからしむるところか。「森見節」は本作でも健在。「阿呆嵩じて崇高となる」けだし名言である。
読了日:06月11日 著者:森見 登美彦


STORY BOX 21 (小学館文庫)STORY BOX 21 (小学館文庫)
今回、森山大道氏の表紙写真は車のフェンダーミラー越しの写真。車のフロントガラス越しの写真を森山氏の写真集で見た覚えがあるが、躊躇なく色々なショットを撮る人だなあ。あさのあつこ氏の「結婚」がついに完結。泣きました。巻頭を飾るもう一話、相場英雄氏の「震える牛」。いきなり200枚と力が入っております。硬派刑事物に期待が膨らむ。森見登美彦氏の「モダンガール・パレス」が絶好調。最近、『有頂天家族』を読み海星に萌えた私であるが、やはり「狸」より「眠れる女の子」のほうがイイ。(笑)
読了日:06月12日 著者:相場 英雄,飯嶋 和一,あさの あつこ,北上 次郎,五條 瑛,森見 登美彦,森山 大道


Casa BRUTUS特別編集 日本の美術館ベスト100ガイド (マガジンハウスムック CASA BRUTUS)Casa BRUTUS特別編集 日本の美術館ベスト100ガイド (マガジンハウスムック CASA BRUTUS)
もう「すんばらしいっ!」です。表紙を飾るのは十和田市現代美術館。ページを捲ると豊島美術館西沢立衛氏の建築だ。ため息をつきながら次のページを捲ると再び十和田市現代美術館に展示されたロン・ミュエック氏の作品。左に目をやるとホキ美術館の30m飛び出した展示室が……もう、目が悦んで悦んで…あぁ…行ってみたい。
読了日:06月14日 著者:


走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)
ロング・ディスタンスを走って「きつい」のは必然だが、「もう駄目」かどうかはオプショナルだということ。前書き「選択事項としての苦しみ」とはそういう意味だ。マラソンにせよ、小説を書くことにせよ、自らが設定したハードルを越えることが出来たという矜持を持てるかどうか。おそらく、それこそが村上春樹氏の価値観なのだ。そしてそれは人生にも繋がる。
読了日:06月18日 著者:村上 春樹


凸凹デイズ (文春文庫 や 42-1)凸凹デイズ (文春文庫 や 42-1)
山本幸久氏を読むのは『ある日、アヒルバス』につづいて二作目。ともに似かよった趣がある。一つは登場人物が身近でフツーにいそうな人なのにキャラが立っていて独特の個性を持っていること。しかもその個性は読者を惹きつける。もう一つは、物語のトーンが一貫してハートウォーミングなところ。生きていくのは決して楽ではないけれど、人生ってそう捨てたもんじゃないって思わせてくれる。読んでいて感じるのは山本氏の登場人物に注ぐまなざしはあくまで温かいってこと。読んでいるあいだ始終にんまりと笑ってしまう幸せ系お仕事小説であります。
読了日:06月18日 著者:山本 幸久


憩いのほとり―詩編の慰め憩いのほとり―詩編の慰め
聖書の詩編から抜粋した文と森本二太郎氏の写真が見開きで対に配置された本。パラパラ捲って観るかたちで鑑賞しました。森本氏のカメラがとらえた樹木や草花の想像を絶する美しさに息をのむ。そこには神の息吹たる「いのち」がたしかに宿る。自然の神秘の前に神の創造と支配を感じるのは私だけではあるまい。私はクリスチャンではないけれど……
読了日:06月19日 著者:


BRUTUS (ブルータス) 2011年 6/1号 [雑誌]BRUTUS (ブルータス) 2011年 6/1号 [雑誌]
私は本屋が好きです。本屋にはいると何故か便意をもよおしてしまう……、それくらい本屋が好きです。その本屋好きがこんな特集が組まれている雑誌を知ってしまったら、もう買うしかない。読むしかない。想像したとおり、紹介されているのは東京都内の本屋が多い。しかし東京都以外にも気を吐く本屋がある。たとえば、京都の「恵文社一乗寺店」、鳥取の「定有堂書店」がそれである。電子書店にはない趣。ああ、行ってみたい。いや、行かねば。いやいや、行きます。行くのだ。そうだとも、行くのだ!! ちなみにこの号はamazonで買った。(笑)
読了日:06月19日 著者:


Meets Regional (ミーツ リージョナル) 2011年 07月号 [雑誌]Meets Regional (ミーツ リージョナル) 2011年 07月号 [雑誌]
京阪神名物書店カタログ」の23店には私の行きつけの古本屋「ツリーハウス」が紹介されている。今回の特集の中で姫路の書店は唯一この店だけである。私はこの店でバカルディー151プルーフの盃を重ね前後不覚になったことがある。電気ブランを飲んだのもこの店であった。古本屋なのに何故酒を飲んでおるのだ?と疑問に思われるのもごもっともでございます。行ってみれば解ります。
読了日:06月22日 著者:


神様がくれた弱さとほほえみ―20編の小さな物語神様がくれた弱さとほほえみ―20編の小さな物語
落ち着かない。この本はフィクションではない。物語として加工もされていない手記である。困ったことです。おそらく私はその方々と今の私とを比べて、自分でなくてよかったと思う私の内なる気持ちに気づき、そんな自分を恥じ入っているのだ。そのくせ、そう思う自分の邪な部分を直視せず、自分を良い人間と思いこみたい誤魔化しの故に落ち着かないのだ。
読了日:06月23日 著者:西村 隆


神様のカルテ (小学館文庫)神様のカルテ (小学館文庫)
デビュー作でもあり一流の文学作品と言わしめるだけの風格はないかもしれない。しかし私は夏川氏の描く世界が好きだ。ストレートな人間賛歌に感動し涙する。仮借のない生の現実を刺すような冷徹なまなざしで描くことは可能だ。そうした小説もすばらしいとは思う。しかしこの『神様のカルテ』はその対極にある。「生の現実」を作者の温かいまなざしで極上の物語(ファンタジー)に仕立て上げている。私はそうした物語(ファンタジー)が大好きだし、小説はそうあって欲しい。
読了日:06月24日 著者:夏川 草介


ホルモー六景 (角川文庫)ホルモー六景 (角川文庫)
カバーデザインの凡ちゃん、かわいいではないですか。六景それぞれ味わいがあり極上の短編に仕上がっているが、鴨川ホルモーのサイド・ストーリーとしては「ローマ風の休日」がいちばんだろう。もう三〇年も前のことになるが、大学に入った頃感じていた空気が甦ってきて、切なく、鼻の奥がツンとなった。はかなく散った恋、成就した恋、学生の街・京都ではそうした恋物語が今日も累々と積み重ねられているだろう。それも歴史の街・京都に相応しい。京の若人よ、「ぐああいっぎうえぇ」
読了日:06月30日 著者:万城目 学