佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

ソウルケイジ

 

5月20日

ソウルケイジ

ごめん、ごめんな、耕介……こんな父ちゃんで

                                                                                           P16より

 

IMG_2262

ソウルケイジ』(誉田哲也/著・光文社文庫)を読みました。
警視庁捜査一課殺人犯捜査係主任警部補姫川玲子シリーズ第二弾です。
第一弾『ストロベリーナイト』はこちらで……
http://hyocom.jp/blog/blog.php?key=125341
このシリーズは面白いシリーズになりそうです。主任警部補姫川玲子の魅力もさることながら、脇役のキャラが立ってきています。面白いシリーズものの条件です。

裏表紙の紹介文を引きます。

多摩川土手に放置された車両から、血塗れの左手首が発見された!近くの工務店のガレージが血の海になっており、手首は工務店の主人のものと判明。死体なき殺人事件として捜査が開始された。遺体はどこに?なぜ手首だけが残されていたのか?姫川玲子ら捜査一課の刑事たちが捜査を進める中、驚くべき事実が次々と浮かび上がる―。シリーズ第二弾。

今回、物語を通じて「父性」がテーマとなっている。
物語はそれぞれの登場人物が語り手となる一人称形式ですすむ。主人公・姫川玲子のみを語り手としないところに、それぞれの登場人物に心情を吐露させたいとの作者の意図が見える。430Pたらずの小説だが、200P近くまで読むと大方のからくりが読めてしまう。もちろん、その時点で確信を持つまでには至らないのだが、おそらくこういうシナリオなのだろうなとした想定は概ね当たっていた。だからといって本書がつまらない小説だというわけではない。謎が解けてしまってはミステリとしての楽しみは半減するかもしれないが、この物語にはそれを補ってあまりある人間像がある。読者はそれぞれの登場人物の心情に共感しながら応援する。読者は想定したシナリオがはたしてそのとおりであったことを確認しながら読み進めることになるのだが、そこに救いがある。なぜなら想定したシナリオは読者がそうあって欲しいと思うシナリオなのだから……。

 

ウェルズの本棚booklog.jp