6月3日
鹿男あをによし
「奈良の人間は、鹿に乗るんです」
「ば、馬鹿を言え」
(P26より)
『鹿男あをによし』(万城目学/著・幻冬舎文庫)を読みました。
万城目学氏の本を読むのは『鴨川ホルモー』以来のことです。
http://hyocom.jp/blog/blog.php?key=81556
裏表紙の紹介文を引きます。
大学の研究室を追われた二十八歳の「おれ」。失意の彼は教授の勧めに従って奈良の女子高に赴任する。ほんの気休めのはずだった。英気を養って研究室に戻るはずだった。渋みをきかせた中年男の声が鹿が話しかけてくるまでは。「さあ、神無月だ―出番だよ、先生」。彼に下された謎の指令とは?古都を舞台に展開する前代未聞の救国ストーリー。
『鴨川ホルモー』もそうであったが、いかにもありそうでなさそう、なさそうでありそうな話です。でもやっぱりないよなあ。しかしあって欲しいなあという話なのです。どちらも読んでいない方にはさっぱり判りませんよね、スミマセン。万城目氏の紡ぐ話はとにかく楽しい。屈託がない。浅いといえば浅い、決して深いとは言えないのですが、ではこの物語を他の人が書けるかといえばそれはなかなか難しい。これだけの才能に恵まれた人はそうはいないと思います。読み出したら最後、物語世界にどんどん引き込まれ途中で止めることなど出来ません。読後感も爽やか、なんとなく元気になっているような小説です。読者を意識して、読者を楽しませるためにきちんと作られた小説。万城目氏の頭の良さに脱帽です。