佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

仇敵

6月9日

仇敵

「叩き潰してやる」
そう言っていた。
忘れようとしていた。庶務行員という新しい仕事を得て、あの東京首都銀行時代の様々な軋轢や蹉跌を忘れようとしていた。
だが、いま恋窪はそれが不可能なのだと知った。
人生の途中でやり残したことがある。それをやり遂げなければ、恋窪に新しい人生は訪れない。いま恋窪ははっきりとそれを悟っていた。
                     (本書P136より)

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『仇敵』(池井戸潤/著・講談社文庫)を読みました。

裏表紙の紹介文を引きます。

幹部行員の裏金工作を追及した恋窪商太郎は、謂れなき罪を着せられメガバンクを辞職。エリートから地方銀行の庶務行員となるが、人生の豊かさを知る。だが、元ライバルからの電話が再び運命を揺るがす―。不正を知った男は謎の死を迎え、恋窪は“仇敵”への復讐を誓う。乱歩賞作家、渾身の連作ミステリー。

池井戸潤氏の小説を読むのは初めてです。強大な権力を持つ悪人幹部によって窮地に陥れられながらも、決しておもねることなく、屈することもなくあくまで自分を貫く主人公。メガバンクのエリート行員であった主人公が会社を追われ小銀行の庶務行員という下っ端の仕事に就くことになるが、それでも決して己を哀れんだりせず真摯に仕事に取り組む。権力も後ろ盾も何もないちっぽけな人間であっても己の矜持にかけて邪な仇敵をいつかは叩き潰してやると心に誓い、徐々に悪事を暴いていく誇り高き男を描いた復讐劇。サラリーマンなら誰だって復讐が果たされるのを見たいはず。一気に読んでしまいました。

 

 

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