佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

イン・ザ・プール

6月9日

イン・ザ・プール

遠慮するのが馬鹿らしくなり、看護婦の太ももを凝視した。付け根のあたりに「watch-it」と書かれた小さなシールが貼ってあった。顔をあげる。初めて看護婦がニンマリとほほ笑んだ。露出狂か? 揃いも揃ってここの神経科は――。 

                                                                                  (本書57Pより)

 

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イン・ザ・プール』(奥田英朗/著・文春文庫)を読みました。
巷で噂のトンデモ神経科医・伊良部一郎シリーズです。
シリーズ第二弾『空中ブランコ』が直木賞受賞作だけに、早く読むべしだったのですが積読本多数のため今日になってしまいました。
読んでみて、もっと早く読んでいれば良かった~~。早く第二弾『空中ブランコ』を読みた~い!!
と、思いました。まあ、そうは言っても時間には限りがある。やむを得まい。

裏表紙の紹介文を引きます。

「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か? 名医か、ヤブ医者か?

プール依存症、ケイタイ中毒、妄想癖、陰茎強直症・・・、世の中みんな病んでいます。ちなみに私は自転車依存症一歩手前。やっぱりプール依存症やランニング依存症と同じようにエンドルフィンが脳内に分泌されているのか。そんな病める人がどうして良いか解らなくなって駈け込んでしまったのが伊良部総合病院地下の神経科
何ですか、この強烈キャラ。同じく医療もの海堂尊氏の小説『田口・白鳥シリーズ』の白鳥圭輔に勝るとも劣らない爆笑?キャラです。読者は素直にこのキャラを好きと言えないと思います。いや、むしろ嫌いなキャラと言ってもいいでしょう。しかしこのキャラから目が離せない。読み進め、見たくないのに目が離せず見続けているうちにだんだん慣れてきて、そのうち伊良部の登場を心待ちにしている自分に気づく。ひょっとして伊良部一郎のことが好きになってしまったのか? いやそんなことがあって良いはずがない。私の良心がこんな医者を、こんな人間を認めてはならないと言っている。にもかかわらず一気に読んでしまった。そして続編を早く読みたいと思っている自分に気づき愕然としています。
ちなみに奥田英朗氏の『イン・ザ・プール』が発売されたのが2002年5月、海堂尊氏の『チーム・バチスタの栄光』が発売されたのが2006年1月ということは、白鳥圭輔よりも伊良部一郎のほうが早くデビューしたようです。ということは社会性に問題ありの非常識キャラの元祖は伊良部一郎ということになる。知りませんでした。

〈追記〉
本の装丁ですが、写真:鈴木英司、装丁:石崎健太郎となっている。非常に印象に残る装丁です。何というか目が離せない違和感。このプール中に浮遊している赤ちゃんはなんとなくロン・ミュエックの《ガール》を思い起こさせるのです。私は2008年8月23日に金沢21世紀美術館で観たのですがその時の強烈な印象、なんとなく落ち着かない違和感を思い出しました。
http://www.kanazawa21.jp/exhibit/mueck/

 

 

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