7月14日
空中ブランコ
先日、サンマの頭にも症状が出た。鋭利な鼻先に、吐き気をもよおしてしまったのだ。
「いったいどうしたのよ。昔は刃物を抜いた相手にも立ち向かう『渋谷のイノシシ』って呼ばれてたじゃない」和美が味噌汁をスプーンですくいながら言った。
「おれだってわからねえよ。じわじわと先が尖ったもんが嫌いになり、気がついたらこのざまなんだよ。まったくいやんなるぜ。今じゃハサミを持った子供にだってお手上げだ」
「先端恐怖症のやーさん、か」和美が鼻で笑う。
(本書P67)
裏表紙の紹介文を引きます。
伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が…。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!?直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾。
トンデモ精神科医、伊良部一郎のシリーズ第二弾です。この強烈キャラ、すっかりクセになってしまいました。この本を読むと自分は本当に「まともなよい子」だなあと思います。そして自分もいつか神経科にかかるかもしれないなあと思います。でもなんというか「まとも」であることの危うさを知ることで価値観に少しずつずれが生じ不安定になります。でも楽しい。看護婦のマユミさんカワイイ。