佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

武市半平太の切腹

7月11日

武市半平太切腹

NHK大河ドラマ龍馬伝」を視ました。私はテレビドラマをあまり視ないのですが、家族が視ていたのを視るともなく視ていると、今日は武市半平太切腹をする場面でした。たまたま先日読んだ山本一力氏の短編「永代橋帰帆」のなかで大石主税切腹がらみで「切腹の作法」について書いてあったので、武市半平太がはたしてどのような作法で切腹するのかを興味を持って視ました。「永代橋帰帆」の中に書いてあった「切腹の作法」は次のようなことです。

切腹には『三つの規矩(きく)』と『四つの間(ま)』という心得がある。『三つの規矩』とは、短刀をいただくとき、左の腹を見るとき、腹に短刀を突き立てるときの心構えを指す。この三つに、うろたえることなく臨むべしというのが武士の心構えとされた。『四つの間』とは、短刀の載った三方を据えて退くとき、三方を引き寄せるとき、短刀を突き立てるときの四つの間のことである。これらの所作が早すぎても、遅すぎても、こころが乱れているあかしとされ、死に臨む武家には不名誉となった。

自分の腹に短刀を立てようとするまさに死に臨んでの所作に迷いどころか間が悪くても不名誉とされたのである。従って「扇腹」など不名誉極まりない切腹であります。「扇腹」とはおのれの手で短刀を突き立てられない者の三方には、短刀の代わりに扇子が載せられ、その扇子を取ったと同時に介錯人が太刀を振り下ろし首をはねるというもの。つまり自ら死ぬことが出来ないのであるが、江戸中期以降はむしろ扇子や木刀を使うこの作法が一般的であったとも言われている。「扇腹」はともかく、自ら短刀を腹に突き立てた瞬間、介錯人が首をはねて見苦しくない死をというのが普通であったろう。

今日の「龍馬伝」を視て驚いたのは武市半平太の壮絶な切腹でした。腹に短刀を突き立て、ゆっくりと横一文字に切り裂いていったのを視て、私は「ほう」と感歎しました。さすがはという切腹を演じたなと。介錯人もその時点まで動かない。いやあ立派な切腹だと思い、そろそろ介錯人が太刀を振り下ろすかと思ったその瞬間、何と武市半平太が「待ちいや!」と言い、さらにもう一度腹をかっ捌いたではありませんか。もうびっくりです。そうか上士の家柄に生まれなかった武市は最後に武士としての気概を示して死んだのだという演出か、なかなか斬新な演出だなあ、NHKもやるなあ、などと思っておりました。しかし、その後インターネットで「武市半平太切腹」で検索してみてさらにびっくり。なんと武市半平太はほんとうにそのような切腹をしたと伝えられているらしい。なんと誰にも成し遂げられなかった「三文字切腹」をしたそうな。

一般に切腹の際の腹の切り方は、腹を一文字に切る「一文字腹」、一文字に切ったあとさらに縦にみぞおちから臍の下まで切り下げる「十文字腹」がよいとされたそうな。しかしそれがなかなか出来ず介錯人がつく作法となったはず。それを「三文字腹」とは……恐れ入りました。