佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

サニーサイドエッグ

7月24日

サニーサイドエッグ

「もう一杯どうだい。二杯目はギムレットにしようか? あんたのために買ってあるローズ・ライム・ジュースが賞味期限切れになりそうなんだ」
 本物のギムレットは、ジンとローズ・ライム・ジュースを正確に半分ずつ、よけいなものは入れない。私が話したレイモンド・チャンドラーの小説の受け売りを覚えてくれていたらしい。
「いや、ギムレットにはまだ早すぎる」
「いつもそう言って、飲まずに帰るじゃないか」

                                    (本書P49より)

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『サニーサイドエッグ』(荻原浩/著・創元推理文庫)を読みました。

裏表紙の紹介文を引きます。

私は最上俊平、私立探偵である。ハードボイルド小説を愛する私は、決してペット探偵ではないのだ。だが、着物姿も麗しい若い女性とヤクザから、立て続けに猫捜しの依頼が。しかも、どちらの猫もロシアンブルー!?なりゆきで雇うことになった秘書に、独自に習得した猫捜しの極意を伝授し、捜査は順調に進むはずが…。名作『ハードボイルド・エッグ』の続編、いよいよ文庫化。

『ハードボイルド・エッグ』の続編です。待ってました! ハードボイルド小説を愛し、フィリップ・マーロウを我が心のヒーローとする人間にはたまらない小説です。読む所々で主人公・最上俊平の台詞にニヤリとさせられ、荻原氏との感性の共属意識にニンマリします。丁度、主人公・最上俊平とバー「J」のマスターとの会話で、あるいは県警一課の須藤刑事との会話の中でチャンドラーを引用し、お互いの波長が共鳴するように。もちろん本書の主人公が依頼されるのは猫探しであり、フィリップ・マーロウが殺人事件を解決するように渋くは無い。しかし、事件の解決にあたって安きに流されることなく、他に迎合せず、ここ一番でやせ我慢する主人公・最上俊平の生き様は、たとえそれが周りの者には滑稽に写っていたとしても、切ないほどにハードボイルドしている。

 

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