佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

心星ひとつ―みをつくし料理帖

「どないに辛いことがあったかて、生きて生きて、生き抜く、と決めた。亡うなった家族のためにも、自分の人生を諦めへんと決めたんや。そういう生き方を貫いたなら、きっと厚い雲も突き抜けられるやろ。私はそう信じてる。いつの日かまた、あの橋の真ん中にふたり並んで、真っ青な天を仰ぐ日が来る。それでこその雲外蒼天、それでこその旭日昇天やわ」
                     (本書P141より)


 『心星ひとつ―みをつくし料理帖』(高田郁・著/角川春樹事務所・時代小説文庫)を読みました。

 

 まずは裏表紙の紹介文を引きます。


酷暑を過ぎた葉月のある午後、翁屋の楼主伝右衛門がつる家を訪れた。伝右衛門の口から語られたのは、手を貸すので吉原にて天満一兆庵を再建しないか、との話だった。一方、登龍楼の采女宗馬からも、神田須田町の登龍楼を、居抜きで売るのでつる家として移って来ないか、との話が届いていた。登龍楼で奉公をしている、ふきの弟健坊もその店に移して構わないとの事に、それぞれが思い揺れていた。つる家の料理人として岐路に立たされた澪は、決断を迫られる事に――(第二話「天つ瑞風」より)。野江との再会、小松原との恋の行方は!? 「みをつくし料理帖」シリーズ史上もっとも大きな転機となる、待望の第六弾!!


 

 

 

 待ちに待った「みをつくし料理帖」第六弾です。前作『小夜しぐれ』を読んだのが3月18日であったので、約半年待ったことになる。

http://hyocom.jp/blog/blog.php?key=159955

 今作で澪は天満一兆庵を再建するチャンスに恵まれ、想い人、小松原様と結婚するためのみちすじも見えてくる。それぞれのチャンスに澪はどのように考え、どのように対処するのかが本書の読みどころ。澪がめざす心星(決して譲れない、辿りたい道)とはどのようなものか。心星をめざす中で何を捨てて何を手に入れるのか。どうやら心は決まったようだ。雲外蒼天、艱難辛苦の末に望むことが出来る真っ青な空とはどのような空なのか。次作がますます楽しみ。
 相変わらず、作中に出てくる料理は食べたいなあと思うものばかり。「あたり苧環(おだまき)」「賄い三方よし(豆腐丼)」は私も似たようなものを作って食べている。「大根の油焼き」は是非つくってみたい。私のように実際に料理して食べてみたいという者にとって巻末のレシピはありがたい。
 今作から「みをつくし瓦版」が特別付録として巻末についている。読者からの疑問を高田郁氏にインタビューするという企画。それによると高田氏はこのシリーズを書き始めた時点で何巻でどのような出来事が起こるか、最終話のタイトルと場面などをあらかじめ決めているそうです。知りたいような、知りたくないような……