佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

ソバ屋で憩う

 グルメ本ではありません。おとなの憩いを提案する本です。
 ソバ好きの、ちょいとばかし生意気なこどもは、いますぐ、この本を閉じなさい。十年はやい世界ってものがあるのですよ。
                                                         (本書「まえがき」より抜粋)


『ソバ屋で憩う―悦楽の名店ガイド101 』(杉浦日向子ソ連/著・新潮文庫)を読みました。


まずは背表紙の紹介文を引きます。


「ソバ屋好き」にも二種類ある。ひたすらソバの神髄へと突き進む求道型と、ソバ屋でのリラクゼーションを乞い願う悦楽派と。江戸風俗研究家・杉浦日向子と「ソ連ソバ好き連)」のメンメンは、紛う方なき後者の代表。自分の足と財布と舌で各地に発見したオアシス、101軒! 一杯の酒と一枚のソバに心ときめかせるあなたも、そう、「ソ連」ですよね。(全店地図・データ・索引付き)



 「ソバ屋で憩う」なんと魅力的なタイトルではないか。蕎麦屋は街中のオアシスなのです。昼日中、仕事に忙しい人でごった返す昼食時を避け、まったりと落ち着いた時間帯をねらってのれんをくぐり、「お酒、冷やで一本ね」と声をかけて席につく。蕎麦屋では昼酒をいただいても眉をひそめる店員はいません。決して種類が多いわけではないが、酒に合うアテもある、アテの数はソバの調理をじゃましない程度にシンプルに押さえてあるってのが良心的な蕎麦屋の証しだ。そばがき、板わさ、味噌焼き、だし巻き卵……、通を気どって天ぬき(天ぷら蕎麦の蕎麦抜き)や鴨ぬき(鴨南蛮の蕎麦抜き)を頼むのもよい。酒の種類も贅沢は言わないが地酒の二、三種類もあれば申し分ない。そんなおとなの気持ちをくすぐる名店蕎麦屋を紹介し、蕎麦屋という類い希な憩いの場でのくつろぎ方を、それこそ嬉しくってしようがないって感じで書いてくれた本です。う~ん素晴らしい。

 紹介されたお店はソバ好き連が認めた名店ぞろいの101店。行ってみたい店に付箋をつけていくと付箋だらけで意味がなくなります。もっとも紹介された店のほとんどが東京またはその周辺なのだから、もともと付箋をつけても意味ないのだが……。それにしても、どの店の紹介を読んでも、ソ連のメンバーの愛に溢れています。

 

 余談ですが、この本を読んでいる間に、この本の改訂版が出ていることを知った。その名も『もっとソバ屋で憩う』。お店の紹介がいくつか入れ替わっている様子。紹介されるお店の数も101店から123店に増えている。新旧対比すべく改訂版も購入したことは言うまでもありません。もうほとんど病気やなぁ。