佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

床屋さんへちょっと

「そのおっきな荷物はなぁに?」

 父さんのポートレートだ。母さんはこの写真を見て私と同じく号泣するだろうか。いや、笑うだろうな。

大爆笑するかも。そっちのほうが母さんらしい。

「おじいちゃんの若い頃の写真」そしてこう付け加えた。「昔はかっこよかったのよ、おじいちゃん」

「さいごまでかっこよかったよ、おじいちゃんは」

                       (本書P343より)

 

『床屋さんへちょっと』(山本幸久・著/集英社文庫)を読みました。

 

 

 

まずは出版社の紹介文を引きます。


「あたし今度、自分で店、開くんだ」。海外出張先への国際電話で娘に告げられ、宍倉勲は絶句した。就職したばかりの大手企業をすぐ辞めてしまったと思ったら、今度は何を言い出すのか―(「マスターと呼ばれた男」)。時に社長として、時にヒラ社員として、誠実に働き続けてきた男。彼と娘との関係、家族の歴史を時をさかのぼりながら描く連作長編。文庫化に際し書き下ろし短編を特別収録。


 

 

 これまで山本幸久氏の小説を『ある日、アヒルバス』、『カイシャデイズ』、『凸凹デイズ』、『笑う招き猫』と読んできた。すべてお仕事小説である。悪人が登場せず、温かいまなざしで登場人物それぞれの人生を応援するような物語が大好きで、山本氏を追いかけてきた。

 さて、本書ですが、これまで読んだお仕事小説とはやや趣を異にしますが、やはり氏の温かいまなざしは健在。創業者の父から引き継いだ会社を二代目で潰してしまった男とその子、孫の人生をちょっとしたエピソードで描き応援しています。読んでいる間、何故か中島みゆきさんの「ファイト」が脳内リフレインされていました。(笑)

 

ファイト 吉田拓郎さんのカバーで