佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

新解さんの謎

れんあい【恋愛】

特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態。

                                (『新明解国語辞典』(第四版)・【恋愛】の項より抜粋)

 

新解さんの謎』(赤瀬川原平・著/文春文庫)を読みました。

 

 

 

 このところ、辞書萌えな毎日である。先日読んだ本は『舟を編む』(三浦しをん・著)。そばには広辞苑大辞林新明解国語辞典(第四版)を置きながらの読書であった。そして、今日は本書である。新明解国語辞典(通称「新解さん」)の変なところに気づいてしまった著者が、その変なところにツッコミを入れているうちに、新解さんの魔力に絡め取られていく様が手に取るように分かるエッセイです。

 私の見るところ「新解さん」は辞書界における「GAMBA大阪」だ。かつてオランダの英雄ヨハン・クライフはこう言った。「美しく負けることを恥と思うな。無様に勝つことを恥と思え」と。GAMBA大阪はこの名言を地で行っている。そして「新解さん」の身上もまた攻めの姿勢。突っ込みどころ満載の辞書なのである。普通、辞書は正確を期するあまり守りの姿勢になりがちだ。然るに新解さんにはまったくそのような素振りがない。凡そ辞書らしくない辞書である。本書は超芸術トマソンで知られる赤瀬川氏が知人のS.M嬢(単なるイニシャルである)と共に新解さんを読み解くことにより怪しくも知的な妄想を果てしなく繰り広げていくドキュメントである。

 私に「新解さん」の魅力を教えてくださったおのみっちのももたろうさんと本書を惜しげもなく私に下さったひょこまーY隊長さんに心から感謝します。