佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

旅の絵本

『旅の絵本』(安野光雅・画・文/福音館書店)を読みました。

 

まずは出版社の紹介文を引いておきましょう。


中部ヨーロッパの自然や街並みを背景に、克明繊細な筆使いで旅の楽しさを描きだした絵ばかりの絵本。世界各国の子どもたちが喜んでいる、心おどる絵本です。


 

 

 

 

私が安野氏をはじめて知ったのは十数年前のTV番組でのこと。NHK教育で風景画を描いていらっしゃった。番組中、訥々と話をしながら水彩画を描かれるお姿が素敵だった。私は中学校を卒業以来、絵筆を手に取ったことはないし、もともと絵心もない。番組を続けて見たのは安野氏の画というよりも、お人柄を見ていたかったのかもしれないと思っている。

さて絵本です。

道はどこまでも続く。場面1は北欧の海。安野氏は海と言わず、”陸の外れ”という。安野氏らしい淡い色彩の海、そして丘。はじめは小高い丘から見下ろしているような構図が場面2、場面3と進むうちに安野氏の視点は鳥瞰するように変わっていく。道は続く。欧羅巴の山、丘、樹、家、そしてそこに暮らす人々を穏やかな視線で描いていく。細かい線で描かれた世界には、ところどころ安野氏の遊びがある。森の外れの花畑に赤ずきんちゃんが居たかと思えば小川を挟んで森からオオカミがねらっている。畑にはミレーの「落ち穂拾い」や「晩鐘」と同じポーズの人が居たり。道はさらに続く。どこまでも続く。