『ときどき旅に出るカフェ』(近藤史恵・著/扶桑社)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
平凡で、この先ドラマティックなことも起こらなさそうな日常。自分で購入した1LDKのリビングとソファで得られる幸福感だって憂鬱のベールがかかっている。そんな瑛子が近所で見つけたのは日当たりが良い一軒家のカフェ。店主はかつての同僚・円だった。旅先で出会ったおいしいものを店で出しているという。苺のスープ、ロシア風チーズケーキ、アルムドゥドラー。メニューにあるのは、どれも初めて見るものばかり。瑛子に降りかかる日常の小さな事件そして円の秘密も世界のスイーツがきっかけに少しずつほぐれていく―。読めば心も満たされる“おいしい”連作短編集。
カフェを舞台にしたコージー・ミステリ。近藤史恵氏にはこのジャンルの作品として「ビストロ・パ・マルシリーズ」があり、私はそのシリーズの大ファンでもある。私にとっておいしいミステリの代表は近藤史恵「ビストロ・パ・マルシリーズ」、北森鴻「香菜里屋シリーズ」、柏井壽「鴨川食堂シリーズ」である。そのどれもがよだれを垂らしながらストーリーに引き込まれる醍醐味を存分に味わわせてくれる。本書はカフェが舞台で、味に関しては飲み物やスイーツが中心。酒飲みの私としては若干的外れではある。しかし辛党の私にもスイーツのおいしさを想像させ、食べてみたいとおもわせるところは流石である。