佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『十字架のカルテ』(知念実希人:著/小学館)

『十字架のカルテ』(知念実希人:著/小学館)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

最注目ミステリー作家が挑む、究極の頭脳戦
正確な鑑定のためにはあらゆる手を尽くす――日本有数の精神鑑定医・影山司の助手に志願した新人医師・弓削凛は、犯罪者の心の闇に対峙していく。究極の頭脳戦の果てに、影山が見据える未来とは。そして凛が精神鑑定を学ばねばならない理由とは……。
第一話「闇を覗く」 歌舞伎町無差別通り魔事件の犯人・白松京介。重度の統合失調症と診断された彼は、本鑑定を受けるため影山たちの病院に移送された。
第二話「母の罪」 横溝美里は生後五ヶ月の娘を抱き、マンションから飛び降りた。重い抑うつ症状が見られた美里は、面談で「悪魔が娘を殺せと脅した」と言う。
第三話「傷の証言」 高校中退後、自宅に引きこもっていた沢井一也は、姉を刺し逮捕された。影山たちが鑑定に赴くが、支離滅裂な発言をし恐慌状態に陥ってしまう。
第四話「時の浸蝕」 傷害致死で起訴された小峰博康には、精神疾患の疑いが。簡易鑑定を行った影山は「罪を逃れるための詐病」と証言したが、第二審で思わぬ反撃にあう。
第五話「闇の貌」 同僚を刺殺した桜庭瑠香子。過去にも殺人事件を起こしていた瑠香子だが、解離性同一性障害、すなわち多重人格と診断され不起訴となっていた。

 

十字架のカルテ

十字架のカルテ

 

 

 

 読み出してすぐ物語に引き込まれます。そしてそのまま「どうなるんだ? どういうことだ?」と私の心を惹きつけたまま第5話まで読ませます。プロローグからエピローグまでひとつの物語としてまとまりを持ちながら一話一話が完結しているのでたいへん読みやすい。このあたりなかなか上手い。主人公が精神鑑定医を志したきっかけでもあり、ずっと抱えてきた屈託についに決着が付き一件落着と思いきやさらにどんでん返しのサプライズ。ううぅ~~上手い! たまりません。食べものに例えるなら、これはもう赤羽の名店「川栄」の『しのび丼』です。ふんわりしていながら香ばしく焼けた極上鰻とタレの染みこんだごはんをわしわしと食べていくと、ごはんの中にまた鰻が入っていたという二度おいしいサプライズ。分かるかな~♬ 分かんねぇだろうな~♬

 今日は市内の病院で大腸検査を受けた。朝からなんとか言うクスリを1リットル、さらにもう1リットルと飲み続け腸内をきれいにする過程が三時間近くあった。病院内の一室で、そしてトイレでひたすら本書を読んだ。文字どおり医療ミステリーを堪能した。内視鏡検査も含め身体は辛かった。辛かったが本書のおかげで至福の時間でもあった。

 検査が決まってから今日まで、癌ではないか、もしそうだったらどうしようと不安な日々を送ってきた。何せ腫瘍マーカーが異常値を示していたのだ、この「腫瘍マーカー」という言葉がいけない。まるでおまえは癌に冒されているぞと宣告されたような気がするではないか。今日の検査で「誠にお気の毒ですが余命半年です」などと宣告されたら残された時間をどうしようか。本は何を読もうか、一度は北海道サイクリング旅をやって死にたいななどと埒も無いことを考えていたのだ。

 検査結果は嫌疑不十分不起訴であった。まずは一安心。すっからかんになった胃腸に、病院内の喫茶店で食べた炒飯410円のうまかったのなんの。さすがに病院内にビールは置いていなかったが、病院からの帰路、迎えに来たつれあいに懇願して車をスーパーマーケットに駐めてもらい買い求めた小樽麦酒ピルスナーを一気にあおった幸福感と言ったらない。あぁ、曇りのち晴れの一日であったことよ。

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