佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2020年4月の読書メーター

4月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:6651
ナイス数:2102

 4月は20冊と多いようだが、その実コミックが14冊ということでさほどの読書量ではなかった。収穫は『紙の動物園』。記憶に残るSF短編に出会った。ケン・リュウ氏の作品は初読みであった。今後に注目したい。初読みで今後に注目といえば、小学館の2冊、『十字架のカルテ』(知念実希人)と『北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』(赤神諒)が良い。続編を追いかけたい。


なぜ若者は老人に席を譲らなくなったのか (幻冬舎新書)なぜ若者は老人に席を譲らなくなったのか (幻冬舎新書)感想
タイトルが本書を読む動機となったとしたら、それはミスリードである。本書の主題はタイトルから想像されるような若者批判では無い。本書が書かれるにあたって大林氏と出版社にあった思いは「日本を殺すな」であったという。敗戦とそれによる価値観の転換で日本が失ったものは大きい。そうした前提をもとに、失ってはならないものは「文化」であり「心のあり方としての正気」であるという。「モノと金」が幸せの尺度であったかつての日本を反省し、今大切にすべきは何か、大人は子どもたちに何をどう伝えるべきかを考える。それが本書の主題です。
読了日:04月27日 著者:大林 宣彦


北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参 (小学館時代小説文庫)北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参 (小学館時代小説文庫)感想
ワクワクしています、今、私。新しい赤穂浪士、新しい忠臣蔵の物語が始まりそうです。これまで、映画で、ドラマで、演劇で、講談で数々見聞きしてきた忠臣蔵とは違う物語が楽しめそうです。史実として確認されていること、フィクションかもしれないが赤穂浪士の物語として語り継がれていることを織り交ぜながら、新しい創作を加えて全く新しい時代劇を展開しようとしている。謎を秘め魅力的な登場人物、読者の興味を引くいくつかのエピソード、随所にちりばめられた伏線が今後どのように奇想天外な物語を紡いでいくのか。早く次巻を読みたい。
読了日:04月24日 著者:赤神 諒


へうげもの 十二服 (講談社文庫)へうげもの 十二服 (講談社文庫)感想
文庫本で発刊されているものの最終巻である。しかしどうもおかしい。講談社のサイトで単行本版の目次と照らし合わせてみると、単行本版の第17巻の最終話が「第百八十六席 けだもの来たりて」となっており、本書「十二服」と同期している。単行本版にはこの後、第18巻~第25巻まであるではないか。本書の発売日が2016/10/14であるから、もう三年半の間、文庫本の続編が刊行されていない。どうやら講談社の意向はもう文庫本は発刊してやらないから続きを読みたければ単行本を買えということらしい。ふん。意地でも読んでやるものか。
読了日:04月18日 著者:山田 芳裕


へうげもの 十一服 (講談社文庫)へうげもの 十一服 (講談社文庫)感想
三成の最期にしびれた。斬首される前に白湯を所望し、白湯など無い、干し柿ならあるといわれ、「干し柿は痰の毒ぞ」と言ったエピソード。おそらくこれは三成を蔑んだ作り話だろう。しかし、もしこれが本当だったとしたら「大望を抱く者は、たとえ首をはねられる間際まででも命を惜しむもの」という心だったと信じたい。『へうげもの』は戦国の勇ましい武将をヒーローとして描くのではなく、「美」や「数寄」にスポットライトを当てたところに独創があるのだ。体育会系バカ武将などはあくまで脇役である。あれ?三成愛が過ぎて偏向したレビューだな。
読了日:04月18日 著者:山田 芳裕


へうげもの 十服 (講談社文庫)へうげもの 十服 (講談社文庫)感想
関ヶ原の合戦に至る道程の中で諸侯の思い、腹の読み合い探り合い、どちらに付くか、静か動か、不確実性の中で歴史は動く。己の信念、己の価値観にあまりに忠実であれば死するかもしれぬ峻烈さのなかで、己がDNAを残すは誰ぞ。もはや美しく生きることはできないのか。美は滅ぶ宿命なのか。いや滅び行くものの中にこそ美があるのか。答えなどない。歴史に必然はない。勝てば官軍。負けた三成はここまで無様に描かれるのか。三成ファンの私には辛い描写が続く。
読了日:04月18日 著者:山田 芳裕


へうげもの 九服 (講談社文庫)へうげもの 九服 (講談社文庫)感想
利休に学び、利休に追いつこうとしていた織部の数寄も、いまや利休を離れ自分なりの数寄を求めるようになった。その席を面白うするには定石をわきまえつつ、どこかでそれを外さねばならぬとの境地に至った織部。これが最高の美であると極めたものが「甲」の作法であれば、その堅苦しきを嫌い、一段格を落とし一笑を誘う。それこそが「乙」なもの。  いよいよ秀吉の命が崩え、諸侯それぞれの思惑があらたな混沌を生み出しつつある。新たな時代の秩序とは、そして新たな時代の美とはいかなるものか。織部よこの混沌をどう生きる?
読了日:04月17日 著者:山田 芳裕


へうげもの 八服 (講談社文庫)へうげもの 八服 (講談社文庫)感想
【再読】織部は数寄の頂上を極めるため朝鮮へ密航。登窯を視察し量産を準備に入る。しかし太閤秀吉の天下にも落日の気配。時代変革のマグマはいよいよ最高潮に達した。織部よどう動く。といったところで文庫版の既刊本はここまで。講談社によると「文庫版はとりあえず完結。モーニングでの連載はまだまだ続くので九服、十服と続刊の可能性もなくはない」だとぉ?! このはっきりせん態度はなんじゃぁ! 責任者出てこいっ! 出てきて出すか出さんかはっきりせいっ!(怒)←こう書いたのが2012年9月のこと。その後、十二服まで続刊が出たね。
読了日:04月17日 著者:山田 芳裕


へうげもの 七服 (講談社文庫)へうげもの 七服 (講談社文庫)
【再読】ついに利休は秀吉から死を賜った。介錯人はなんと古田織部正。ついに古田織部は武を捨てることはできなかった。織部は利休を師と慕う者たちから茶頭筆頭の地位のために裏切ったと非難を受ける。しかし、そんな織部を利休は末期において理解していた。お互い美の追求者の極みにある者同士なればこその理解であったろう。それにしても山田さん、織部介錯させるとは、そこまで史実を曲げていいの? 余談ながら、三成について人の情を解さぬ冷血漢ではなく、うまく喜怒哀楽を表せない不器用な男なのだとの見方には少しばかり救われました。

読了日:04月17日 著者:山田 芳裕


へうげもの 六服 (講談社文庫)へうげもの 六服 (講談社文庫)
【再読】業を捨てられぬ利休。関白秀吉から娘のお吟も差し出せと命ぜられ、ついに秀吉を亡き者にせんと謀反を企む。秀吉に恭順の意を示せぬ利休はついに堺に閉門。一方、石田治部少輔三成は大徳寺三門の利休木像に言い掛かりをつけ、利休処刑を関白秀吉に進言する。なんだかどんどん三成が悪者に描かれていく。三成ファンの私としては複雑な思い・・・。山田さん、三成をもう少し格好良く描いてくれ~~~! 三成にもっと華を~~~!

読了日:04月17日 著者:山田 芳裕


へうげもの 五服 (講談社文庫)へうげもの 五服 (講談社文庫)
【再読】真のわび数寄を追求する利休。しかし求めるものが崇高すぎてかえって窮屈か。利休の高弟・山上宗二は秀吉の怒りを買い打ち首に。いよいよ秀吉と利休に埋まることのない溝が。三成はいよいよ忍城を水攻めに。そんな中、古田織部は剽げつつ美意識を昇華させ、わび数寄を極めようとする。物語はいよいよクライマックスを迎える予感。それにしても、石田三成を格好悪く描きすぎです、山田さん。三成にももっと華をお願いします。三浦しをんさんの解説には唸った。へうげものの描く世界が「ひとはパンのみにて生きるにあらず」だと看破する鋭さに感服。

読了日:04月17日 著者:山田 芳裕


へうげもの 四服 (講談社文庫)へうげもの 四服 (講談社文庫)感想
【再読】古田左介あらため古田織部正となり、数寄の頂を目指す。丿貫との出会いで侘び数寄へと方向性を定めた。「侘び」を極め日本一の数寄者と称されたい想いが嵩じるにつれ、ますます「侘び」の境地から離れていく皮肉がおもしろい。一方で秀吉を千利休の考えの食い違いが緊張感を帯びてきた。今後の展開が楽しみだ。丿貫の言葉「要は重うならんこと。物も生き様も軽うなければ」を考えるとき、「一つ一つは美しいものも洪水のように押し寄せてくればうるさい。美の洪水ではなく、削ぎおとされシンプルものこそ美しい」ということか。
読了日:04月16日 著者:山田 芳裕


へうげもの 三服 (講談社文庫)へうげもの 三服 (講談社文庫)感想
【再読】光秀の無念の最期に泪。そして、今や天下人になろうとする秀吉の孤独をひしひしと感じた。志を胸に大切なものと引き替えにひたすら突き進んだ男の非業の死と数寄者として剽げた者の生、さらに家康のごとくひたすら生き抜くことを考え己を殺した生き方を見るに、人としてどのように生きるべきか、自分はどう生きたいのかを考えさせられた。「月さびよ明智が妻の話せん」光秀が最期に詠んだかのような場面が第三十二席にある。芭蕉の句であり歴史的にあり得ない。本作が歴史の虚実織り交ぜて描かれていることをわきまえていなければ恥をかくので注意。
読了日:04月16日 著者:山田 芳裕


ザ・プロフェッサー (小学館文庫)ザ・プロフェッサー (小学館文庫)感想
うまいなぁ。人物の登場させ方なんて、その人物の人となりを端的に顕すエピソードで読み手の心を鷲づかみする。悪人はあくまでいやらしく、善人にはアメリカらしい心意気を持たせて。何度もこれで万事休すかと思わせるピンチも、不屈の闘志と粘り、そして並外れた才気で乗り切る。そして最後には人としての良心と絶対邪なものに屈しないという矜持が大逆転劇を演出する。恥ずかしくなるほどアメリカらしいスリラーである。でもそれが良いのだ。素直にヒーローに拍手喝采をおくり、ヒールにざまあみろと溜飲を下げる。あぁ~、カ♡イ♡カ♡ン♡!!
読了日:04月15日 著者:ロバート ベイリー


へうげもの 二服 (講談社文庫)へうげもの 二服 (講談社文庫)感想
【再読】本能寺の変、秀吉陰謀説ですか。いや実行犯説? 斬新というか、かなり思い切った説ですね。しかし、そのような秀吉像であればこそ、これからの秀吉と利休とのからみが面白そうだ。利休はどうして秀吉から死を賜ったのか。そして、古田織部はそれをどのようにとらえ、どのように振る舞うのか。秀吉と織部の関係がどう描かれるのかが楽しみである。
読了日:04月12日 著者:山田 芳裕


へうげもの 一服 (講談社文庫)へうげもの 一服 (講談社文庫)感想
【再読】『利休にたずねよ』(山本兼一・著)を読んで以来、古田織部という数寄者に興味を持った。「剽げる」とは新明解国語辞典(第四版)によると「気軽に、こっけいなことを言ったり、したりして見せる」とある。この世には二通りのものがある。美しいものとそうでないものだ。人の価値観、美意識はさまざまだ。だからといって「美しいもの」の存在が揺らぐことはない。美は確かにそこにある。そのものの持つ何が人をして美しいと感じさせるのか、それを見極めたいと思った男たちの織り成す人間絵巻に心躍る。本能寺の変秀吉陰謀説。いやその裏に?
読了日:04月12日 著者:山田 芳裕


紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)感想
ケン・リュウの短編が15編収められている。巻頭の「紙の動物園」はAmazonKindle版・無料サンプルで一度読んだことがあるのだが、二度目、三度目と読んだ。それほど私の胸にズシンときた。初回読みの時も泣いたが、今回はさらに泣いた。「親孝行したい時分に親はなし」 子どもは一生親を超えることはできない。子が親を思う心など、親が子を思う心に比べれば遠く及ばない。この作品を読んでそれをひしひしと感じる。もう私の両親はこの世にいない。私は良い息子ではなかった。悔恨の念に煩悶するがゆえの涙が止まらなかった。
読了日:04月11日 著者:ケン・リュウ


ステップ (中公文庫)ステップ (中公文庫)感想
親にとって子どもは宝ものだ。子どもの成長の思い出もまたかけがえのない宝ものである。その思い出はたいていの場合、夫婦で共有するものだ。しかしそれができなかったとしたら。子どもの成長の責任を一身に背負った重圧、子どもとの思い出を共有できなかったさみしさ、子どもが成長していく姿を見守るよろこびを自分だけが感じていることへの申し訳ないような気持ち、そうしたものが胸にせまって遣る瀬ない。ここに確かな幸せがあり、その幸せを守ろうとするひたむきな真心があった。温かい物語でした。『とんび』を読んだときと同じだけ泣いた。
読了日:04月08日 著者:重松 清


十字架のカルテ十字架のカルテ感想
プロローグからエピローグまでひとつの物語としてまとまりを持ちながら一話一話が完結しているので読みやすい。主人公が精神鑑定医を志したきっかけでもあり、ずっと抱えてきた屈託についに決着が付き一件落着と思いきや、さらにどんでん返しのサプライズ。ううぅ~~上手い! 食べものに例えると赤羽の名店「川栄」の『しのび丼』です。ふんわりしていながら香ばしく焼けた極上鰻とタレの染みこんだごはんをわしわしと食べていくと、ごはんの中にまた鰻が入っていたという二度おいしいサプライズ。分かるかな~♬ 分かんねぇだろうな~♬
読了日:04月06日 著者:知念 実希人


どんぶり委員長 : 2 (アクションコミックス)どんぶり委員長 : 2 (アクションコミックス)感想
作ってみたいと思わせるのは「文明開化の香りするカレーパン丼」「秋ナスはステーキにして委員長だけに食わせろ丼」「お値打ちマグロのガーリックマグタマ丼」ですな。どんぶり鉢にごはんをいれおいしい具を載せればとりあえず丼は完成する。だれでも創意工夫で変わった丼を作ることができる。学歴や資格は入らないし、金もあまり要らない。丼の下に人は皆平等である。それにしてもカレーパン丼などは常識的発想を超えている。これはそのような発想ができるものだけのものだ。すごい。いや全然すごくないけれどすごい。
読了日:04月03日 著者:市川ヒロシ


どんぶり委員長 : 1 (アクションコミックス)どんぶり委員長 : 1 (アクションコミックス)感想
参考になったのは「即席おんたま乗せ親子丼」で紹介されたレンジで「おんたま」を作る方法。これは脳にメモりました。作ってみたいのは「パスタを超える絶品ナポリタン丼」「3色缶詰開栓丼」。「野菜オンリースープあんかけ丼」もおいしそうだ。 考えてみるにどんぶり鉢の中のごはんと上に載せる具の組合せは創意工夫次第で無限にある。であれば、どんぶり鉢の中は創造の小宇宙といえる。丼を下品な食べものと侮ってはいけない。あれこれ作ってみよう。
読了日:04月02日 著者:市川ヒロシ

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