『姉上は麗しの名医』(馳月基矢:著/小学館時代小説文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
老師範の代わりに、少年たちへ剣を指南している瓜生清太郎は稽古の後、小間物問屋の息子・直二から「最近、犬がたくさん死んでる。たぶん毒を食べさせられた」と耳にする。一方、定廻り同心の藤代彦馬がいま携わっているのは、医者が毒を誤飲した死亡事件。その経緯から不審を覚えた彦馬は、腕の立つ女医者の真澄に知恵を借りるべく、清太郎の家にやって来た。真澄は、清太郎自慢の姉なのだ。薬絡みの事件に、「わたしも力になりたい」と、周りの制止も聞かず、ひとりで探索に乗り出す真澄。しかし、行方不明になって…。あぶない相棒が江戸の町で大暴れする!
「日本おいしい小説大賞」の隠し玉が描く、軽妙爽快な書き下ろし時代活劇
馳月基矢さん、初読みです。それもそのはず、本書が馳月さんのデビュー作なのです。馳月さんがデビューなさったきっかけは、小学館の「日本おいしい小説大賞」に「ハツコイ・ウェーブ!」(当時の筆名は、氷月あや)で応募され見事最終選考に残られたことにあります。そのあたりの経緯は小学館のサイト「小説丸」に紹介されています。
https://www.shosetsu-maru.com/column/editors/2020-04-14
本書の筆名から男性かと勘違いしておりましたが、女性と判明。(文末に著者ご本人による動画を載せております。なかなか見目麗しく凜々しいお顔立ちです。
本書の発刊は2020年4月12日。しかし馳月さんのTwitterには4月7日デビューと書いてあります。そうです、奇しくも4月7日は緊急事態宣言が発令された日なのです。多くの書店が店を閉めています。しかし、ステイホーム要請で本を読む時間はたっぷりある。これは幸運なのか不運なのか。やはり書店に並ぶ機会を失したという点で新人には不利なのでしょう。されば応援しようではないか。
読みやすい文体、魅力的なキャラクター、女性の筆ながら緊迫感のある剣戟、続編が書かれるにつれ尻上がりにおもしろみが増していく予感がします。続編を心待ちにいたしましょう。
#ためしよみ読んでみた のトリセツと『姉上は麗しの名医』朗読 take 2