佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『コロナと潜水服』(奥田英朗:著/光文社)

『コロナと潜水服』(奥田英朗:著/光文社)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

 ある理由で家を出た小説家が、葉山の古民家に一時避難。生活を満喫するも、そこで出会ったのは(「海の家」)。早期退職の勧告に応じず、追い出し部屋に追いやられた男性が、新たに始めたこととは(「ファイトクラブ」)。人気プロ野球選手と付き合うフリー女性アナウンサー。恋愛相談に訪れた先でのアドバイスとは(「占い師」)。五歳の息子には、新型コロナウイルスが感知できる?パパがとった究極の対応策とは(「コロナと潜水服」)。ずっと欲しかった古いイタリア車を手に入れ乗り出すと、不思議なことが次々に起こって(「パンダに乗って」)。コロナ禍の世界に贈る愛と奇想の奥田マジック。紙の本にだけ、作中の登場曲が楽しめるSpotifyのプレイリスト付き!!

 

 

 

 ちょっと不思議な物語が五つ。リアリズムこそが知性と信じている私には若干の違和感あり。「コロナと潜水服」という題名に大いに興味を惹かれたのだが、そういうことだったのか。タイムリーな作品だし、ユーモラスだった。「海の家」大人でいるってことは切ない。「ファイトクラブ」主人公の心の変化が興味深い。その気分、良く分かります。「占い師」ありがちな話だな。ここにある生き方を否定はしないが、好きじゃ無い。伴侶を計算でしか選べない人は切り捨てられても文句は言えない。先で泣きを見ても自業自得としか言いようがない。「パンダに乗って」いい話だ。小説にはこれが出来る。これこそが小説の力。永井博さんやわたせせいぞうさんのイラストを見たい気分だ。救いようのない現実を目をそらさず見つめることも大切だが、神は我々に小説を与えたもうた。