佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『模倣犯 ①②』(宮部みゆき:著/新潮文庫)

2021/07/26

模倣犯』(宮部みゆき:著/新潮文庫)の全5巻のうち第2巻までを読んだ。

 とうとう手を出してしまった。5月の「本の会」でTさんが紹介して下さってからずっと読みたいと思っていた本。Tさんがこの第3巻を読み終えられたとき、たまたま外出先だったそうで、家に帰れば第4巻があるのにすぐに読みたいが為にダブるのを承知で本屋に駆け込んで買われたそうだ。それほど読者を夢中にさせる本とはどんなものだろう、これは読んでみなくてはと思ったのだった。もともと映画化やドラマ化されたほどの話題作。その評判が高いことも承知していたからなおさらである。ただ、全5巻の長編で、第1巻は584P、第2巻は413P、それ以降もけっこう分厚い。一気に読み通してしまわなければ、さりげなく書かれてはいるが実は後になって重要な意味を持つ伏線を見逃してしまったり、登場人物の記憶が曖昧になったりしかねない。旅行や雑事に煩わされることのなさそうな時季を待っていた。よろしくないことではあるが今はコロナ第五波に入ってきている。猛暑もあって、しばらくは旅行に出かけようという気にもならない。チャンス到来というわけである。

 第1巻、第2巻の出版社の紹介文を引き、それぞれ簡単に感想を書く。

【第1巻】 

 墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。やがてバッグの持主は、三ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明するが、「犯人」は「右腕は鞠子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけたうえ、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかった。ほどなく鞠子は白骨死体となって見つかった――。

 未曾有の連続誘拐殺人事件を重層的に描いた現代ミステリの金字塔、いよいよ開幕!

 

 どうしてこんな邪な輩がいるのだろう。もちろんこれはフィクションだ。しかしかたちの違い、程度の差こそあれ、現実社会にもここにあるような犯罪者がいる。彼らにも事情はあるだろう。彼らもまた社会の犠牲者だという声もある。だが仮にそうだとしても、踏みにじられて良い命などない。真っ当に生きる命が奪われて良いはずはない。それだけは確かだ。

 またこの種の事件を扱うマスゴミのたちの悪さには辟易する。興味本位で被害者とその家族の心情などお構いなしの傍若無人ぶり。犯罪者側にも権利があるなどと、ただただ警察権力を貶めたいだけの悪意ある報道。大衆の下世話な興味をかき立て、注目を集めることのみに執心し、自らの報道がどのような結果を生むのか、どれほど人を傷つけるのかといったことには全く考えの及ばぬ無責任な輩だ。

 この救いのない物語は始まったばかり。まだ残り4巻ある。この物語の行く末を見届けたい気持ちと、もう読むのをやめたい気持ちが相半ばしている。しかしどうあっても正義の裁きを見たい。次巻へすすむ。

 

【第2巻】 

 鞠子の遺体が発見されたのは、「犯人」がHBSテレビに通報したからだった。自らの犯行を誇るような異常な手口に、日本国中は騒然とする。墨東署では合同特捜本部を設置し、前科者リストを洗っていた。一方、ルポライターの前畑滋子は、右腕の第一発見者であり、家族を惨殺された過去を負う高校生・塚田真一を追い掛けはじめた――。

 事件は周囲の者たちを巻込みながら暗転していく。 

 

(ネタバレ注意)

 被疑者死亡で終わった第1巻。第2巻は死亡した被疑者二人とその同級生であるピースを中心に、時を遡って物語が展開する。被疑者の一人は見かけだけは良いがどうしようもないクズ。もう一人は底抜けのお人好し。あぁ、この幼なじみの組合せは最悪のパターンだ。真っ当で無垢なお人好しは極悪人からすれば格好な獲物。バカと虐げられ、利用され、搾取される。 お人好しはそれも判りながら幼なじみを拒絶できない。並はずれた優しさの持ち主でもある。さらにもう一人の同級生ピースはとんでもなく頭が切れるサイコパス。ピースによって二人の人生はそうとは知らずどんどん狂わされていき、捜査は混乱していく。救いのない物語だ。もう読むのをやめたい。しかし続きを読まずにいられない。ピースに正義の鉄槌が下されんことを願いつつ次巻に進む。