佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『高瀬庄左衛門御留書』(砂原浩太朗:著/講談社時代小説文庫)

2024/01/22

『高瀬庄左衛門御留書』を再読した。

神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。五十歳を前に妻に先立たれ、俊才の誉れ高く、郡方本役に就いた息子を事故で失ってしまう。残された嫁の志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。しかし藩の政争の嵐が、倹しく老いてゆく庄左衛門を襲う。文学各賞を受賞した珠玉の時代小説。

第9回野村胡堂文学賞/第11回「本屋が選ぶ時代小説大賞」/第15回舟橋聖一文学賞/「本の雑誌」2021年上半期ベスト10第1位。

 

 

 私が参加している月イチの読書会『四金会』の今月の課題本である。とうぜん本書を推奨したのは私だ。日が近づいてきたので文庫本を入手し再読した。本書を読んだのは昨年の6月のこと。図書館に予約を入れ、半年ばかり待たされてやっと読めたのだった。感想はその時のブログに詳しいのでリンクを貼っておく。

jhon-wells.hatenablog.com

 

 再読であってもまったく色褪せない。もちろんあらすじは既に頭の中にある。それゆえかえって文章を味わい、登場人物の心情に思いを致しながらじっくり読むことが出来た。何度でも読み直しに耐えるだけの質をそなえた小説であることが改めて分かった。

 この年末年始、クリスマスシーズンに街を歩けば訳もなくロマンチックな気分にひたっているらしい若者たちを腐るほど目にし、嫌気がさして家でドラマや映画を観るとこれまたどれもこれも愛だの恋だの生きるの死ぬのと恋愛至上主義の大安売りだ。あさましいというか下品極まりない。そんな気分の中、こうした小説を読むと日本人はこうあらねばならぬなあとしみじみ思った次第。