佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『サラリーマン居酒屋放浪記』(藤枝暁生:著/朝日新書)

2024/10/07

『サラリーマン居酒屋放浪記』(藤枝暁生:著/朝日新書)を読んだ。

 まずは出版社の紹介文を引く。

酒場とは、酒飲むだけの場所にはあらず。酒場では、ひとりひとりの誰もが主役。ひとり飲む酒、友と酌み交わす酒。静かに過去を想うもよし、気心の知れた者同士、朗らかに未来を語り合うもよし。明日への活力源となるならば、多少の失態もご愛嬌。現役サラリーマンならではの切り口で、愚痴やボヤキもたそがれも、まるっとまるごと包み込む、あの酒場の喜怒哀楽を、温かく軽やかに描き切る。

 

 サラリーマンとして全国各地に出張する。出張先で繁華街をうろつき、自分の目でここと見定めた居酒屋に入る。地産のものを肴に酒を飲む。うまい。自分の眼に間違いはなかったと満足しホテルに戻る。呑兵衛のサラリーマンの憧れだろう。出張が羨ましいわけではない。全国各地の居酒屋を探訪できるのが羨ましいのだ。「居酒屋放浪記」となっているが、本書は「居酒屋探訪記」と呼ぶにふさわしい。探訪記といっても、著者・藤枝氏の酒場訪問はさらりとしている。まず、必ずしも本やネットでの情報収集に頼らない。自分の勘を信じて町を歩き、ピンときた店に入る。店は敷居の高い気取ったところではなく、地元の人が日常づかいするような気安い店。財布にもやさしい店だ。かといってよくあるチェーン店でなんかではない。あまり大きくなく、店主夫婦とひとり二人の店員といった風情の店が好みの様子。立ち吞みの店も多く紹介されている。決して高級を求めず、さりとて実があり、大いに満足できる居酒屋。飲み歩きのプロとしてのこだわりがありながら、実にさらりとした軽さを感じさせるところがカッコイイ。私も見習いたいものだ。

 見習いたいと言えば各章の末尾にコラムとして「立ち飲みの作法」が書いてある。立ち位置、ドリンクの注文、おつまみの注文、混んでいる店で飲んでいて客が来たとき、従業員への配慮、会計の仕方。繁盛していて忙しい立ち吞み居酒屋で嫌われる客にならないために、店員やまわりの客に「コイツ出来るな」と思われるために、どう立ち回るべきかの作法を教えてくれる。このコラムを読むだけでも値打ちがある。

 本書に紹介された店に行くも良し、藤枝氏のように自分の眼で選んだ店の暖簾をくぐるも良し。居酒屋探訪は無限の広がりと楽しみを提供してくれるだろう。

 私はといえば本書にチラリと出てきた、「サンダル履きの気取らぬ服装で、カウンターで独り酒を飲みながら本を読んでいる客」を理想としたい。

(フェリーの出航待ちの小樽港にて、乗船まで酒が飲めずもだえ苦しみながら・・・)