佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『ライトニング』(ディーン・R・クーンツ:著/野村芳夫:訳/文春文庫)

『ライトニング』(ディーン・R・クーンツ:著/野村芳夫:訳/文春文庫)を読みました。

 まずお断りしておきます。この本をこれから読もうとされるならば、このブログはお読みにならない方がよろしいかと思います。読んでの驚きが半減します。前半の疑問??と、後半のえぇっ!そうなの?!という驚きこそがこの小説の値打ちなのですから、予備知識は持たずに読まれることをおすすめします。

 そうはいっても実は私、20年ばかり前に一度本書を読んでいるので、このたびが2回目。再読であっても充分楽しめる作品ではあります。

 出版社の紹介文を引きます。

いまは流行作家としてときめくローラ・シェーン、かつては孤児院で辛酸をなめた薄倖の美少女だった。これまでの生涯、何度か人生の危機や事故に見舞われそうになったが、そのつど、どこからともなく立ち現われて危難から救ってくれた“騎士”がいた。そのたびに、空には閃光が…。ジャンルを超えた傑作スーパー・スリラー。

 

ライトニング (文春文庫)

ライトニング (文春文庫)

 

 

 本書の魅力は端的に言って4点。天涯孤独の身になった美少女の行く末への興味。少女のピンチのたびに閃光と共に現れる騎士の正体。タイムパラドックスをかいくぐっての正義と悪の虚虚実実の戦い。ヒトラーチャーチルを物語に登場させるほどの壮大な意外性。

 なにしろ孤児ものとタイムトラベルものという読者を惹きつけてやまない要素が合体しているのでエンタテインメントとして超一級の作品です。

 

『雪の断章』(佐々木丸美・著/創元推理文庫)

『雪の断章』(佐々木丸美・著/創元推理文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

迷子になった五歳の孤児・飛鳥は親切な青年に救われる。二年後、引き取られた家での虐めに耐えかね逃げ出した飛鳥に手を伸べ、手元に引き取ったのも、かの青年・滝杷祐也だった。飛鳥の頑なな心は、祐也や周囲の人々との交流を経て徐々に変化してゆくが…。ある毒殺事件を巡り交錯する人々の思いと、孤独な少女と青年の心の葛藤を、雪の結晶の如き繊細な筆致で描く著者の代表作。 

 

雪の断章 (創元推理文庫)

雪の断章 (創元推理文庫)

 

 

 孤児モノです。孤児モノといえば『小公女』『アルプスの少女ハイジ』『みなしごハッチ』『タイガーマスク』『ジェイン・エア』『赤毛のアン』『ライトニング』とアニメにせよ、小説にせよ枚挙に暇がない。天涯孤独の境遇にあっても、強い意志と真心で立ち向かえばいつか成功と幸せを勝ち取れるといったハッピーエンドは少年少女の心を強烈に熱くするものだった。私もそのひとりである。

 本書は読者受けする(著者がそれを狙ったかどうかは定かではないが)黄金パターンを踏襲している。そのパターンとは「身寄りのない境遇→孤児院での苦労(ヒールの存在)→里親先での艱難辛苦(ヒールの存在)→白馬の王子の登場→恋心→恋愛成就」。読者(特に子供など社会的弱者)は己の人生に対する不安感から主人公に感情移入し、憎らしいヒールに徹底的にいたぶられてもくじけず誠実に生きようとする主人公に拍手喝采し、白馬の王子の登場に歓喜し、紆余曲折を経ながらもハッピーエンドにおさまり胸をなで下ろし幸福に浸るのである。特に前半は続きが気になって読むのをやめられない。おもしろくないはずがないのだ。傑作と言って良いだろう。

 この種の物語には悪役(ヒール)の存在が肝である。ヒールが憎らしければ憎らしいほど読者の感情が高まるからである。ドラマで言えば『おしん』『細腕繁盛記』がその典型だ。その点で本書はいい線いってるがもう一押しあっても良かったかもしれない。残念な点である。もう一つ残念なのは、主人公の心が頑なすぎていささか辟易してしまう点。著者として主人公の心の襞を表したかったのだろうが、私のような粗忽者にはしつこく感じられて読みづらい。しかしこのあたりが本書のテイストでもあるので、ここは意見の分かれるところだろう。

 さて、かなり前に読んだ『ライトニング』(ディーン・R・クーンツ)を読みたくなった。孤児モノにしてタイムパラドクスを扱ったSFスリラー。この小説のヒール役と白馬の王子が意外や意外・・・。なかなかすごい構想なのだ。もう一度読んでみようか。

 

ライトニング (文春文庫)

ライトニング (文春文庫)

 

 

 

 

 

 

 

酒膳 彩(いろどり)

2018/11/13

 用があって和歌山泊まり。

 21:00ごろ和歌山城にほど近いホテルにチェックイン。夕飯がてらの居酒屋をと特にあてもなく街をぶらぶら。店の外に出してあるメニューをみて、「よし! この店」と決めた。店の名は『酒膳 彩』。あれ? ここの大将どこかで会ったかな? と一瞬思ったのだが、原因はすぐに分かった。なんとなく風貌がドランクドラゴン塚地武雅に似ているのだ。風貌どおりフランクで人なつこい。

 酒は和歌山に敬意を表して「黒牛 純米」をぬる燗にしてもらった。刺身はカツオ。うまい。

 続いては「牡蠣の昆布焼き」。量はサービスしてくれた様子。酒は滋賀県の銘酒「松の司 アゾラ」。

 クエを仕入れたというので小鍋にしてもらった。肝と胃袋もおまけで出してくれた。内臓を食えるのも貴重な経験。仕入れてすぐの魚であればこそだろう。

 

 当然、〆は雑炊。 おいしゅうございました。

『食べごしらえ おままごと』(石牟礼道子・著/中公文庫)

『食べごしらえ おままごと』(石牟礼道子・著/中公文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

食べることには憂愁が伴う。猫が青草を噛んで、もどすときのように―父がつくったぶえんずし、獅子舞の口にさしだした鯛の身。土地に根ざした食と四季について、記憶を自在に行き来しながら多彩なことばでつづる豊饒のエッセイ。著者てずからの「食べごしらえ」も口絵に収録。

 

食べごしらえおままごと (中公文庫)

食べごしらえおままごと (中公文庫)

 

 

 まず巻頭のエッセイ「ぶえんずし」の書き出しに心をつかまれる。

 貧乏、ということは、気位が高い人間のことだと思いこんでいたのは、父をみて育ったからだと、わたしは思っている。

  残念ながら私は娘にこんなことを言ってもらえるほどの生き方をしていない。書き出しのこの一言で石牟礼さんが何を大切に生きていらっしゃったかが判る。石牟礼さんはそれをお父様から学ばれたのだ。

 ここに書かれているのは季節のうつろい、節気ごとに食べものと行事があるということ。そしてそれは現在進行形ではなく郷愁として語られる。それは最近の野菜のおいしくなさを憂える心の表れだろう。太陽とすこやかな土で育った野菜は滋味にあふれ、塩でゆでただけでおいしいものなのに、季節も何も関係なく機械設備で育てられた野菜は色や形こそ良いが水っぽくぶよぶよした曖昧な味しかしない。モノは豊かになってもニセモノだらけでホンモノは少ない。そのようなモノを何の疑問もなく食べ続けることによって、日本文化の根底に在ったものがいつの間にか失われてしまう。それで良いのか。良いはずはない。

 題名に使われた「おままごと」という言葉に少々違和感を覚えていたのだが、「お料理」というべきところを気恥ずかしいと照れて使われたようだ。

 

とんかつまい泉

今日の昼ごはんは「とんかつまい泉」の黒豚ロースかつ。酒は「真澄」。

トンカツがうまいのは言わずもがな。黒豚とんかつ用のソースをかけたキャベツがうまい。キャベツだけで酒が飲めます。私はキャベツを二回おかわりしました。だって、店員さんが私がキャベツを食べきるのをめざとく見つけて薦めてくれるんだもの (^^ゞ

 

CYCLE MODE international 2018 (幕張メッセ)

 

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 日本最大のスポーツ自転車フェスティバル『CYCLE MODE international 2018 (幕張メッセ)』に参加してきました。

 目の毒ですなぁ。欲しいものがいっぱい。それにしても自転車は美しい。

 はりまサイクルツーリズムも出展。

 

はりまサイクルツーリズム「bGo]

「bGo(ビーゴー)」とは、播州(播磨の別称)の地を自転車で巡ろうという意味。播磨地域は平野が多く走りやすく、海、山、川などの自然、歴史の趣、特産品など、豊富な地域資源が魅力の地域です。ぜひ、この播磨の魅力をご自慢の自転車で巡ってみてください!

 

『消えた女 彫師伊之助捕物覚え』(藤沢周平・著/新潮文庫)

『消えた女 彫師伊之助捕物覚え』(藤沢周平・著/新潮文庫)を読みました。最近古本屋で目にして買ったもの。夜を徹して一気読みです。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

版木彫り職人の伊之助は、元凄腕の岡っ引。逃げた女房が男と心中して以来、浮かない日を送っていたが、弥八親分から娘のおようが失踪したと告げられて、重い腰を上げた。おようの行方を追う先々で起こる怪事件。その裏に、材木商高麗屋と作事奉行の黒いつながりが浮かびあがってきた……。時代小説の名手・藤沢周平が初めて挑んだ、新趣向の捕物帖――シリーズ第一作!

 

消えた女―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)

消えた女―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)

 

 

「彫師伊之助捕物覚え」シリーズ三部作の一作目である。我が読書記録をひもといてみると三部作の第三作『ささやく河』は既に2007年9月22日に読んでいる。第二作『漆黒の霧の中で』は未読のまま本棚にひかえている。ずいぶんいい加減な読み方である。体系的に本を読まず、行き当たりばったり、その時の縁と気分で本を読んでいるからこんなことになってしまう。藤沢周平については古本屋で並んでいる廉価な文庫をまとめ買いしておき、思いのままたまに本棚から取り出して読んでいるのでこういうことになる。つまりその時その古本屋にたまたまシリーズ第三作『ささやく河』だけがあった。その後、第二作『漆黒の霧の中で』を書い足し、今回『消えた女』を買ったということなのだ。

 さてこの『消えた女』ですが、イイ! すごくイイ!! なにがイイかといえば、ハードボイルド臭プンプンしているところがイイのだ。主人公伊之助の(酒にも女にも)ストイックな態度、心に持つ哀しみの影、揺るぎない強さがイイ。この強さはけっして勇猛果敢の類いではない。危険に際して敏感でむしろ用心してかかる。しかし、ここ一番対決せねばならぬとあっては腹を据え、絶体絶命の局面では命をかけてみせる勇気を持つ、そうした強さである。幼なじみの”おまさ”でなくても惚れようというもの。

 第二作『漆黒の霧の中で』を読むのが楽しみである。