彫師伊之助捕物覚え第3弾である。藤沢周平の持ち味である人情ものではなく、ジャンルとしてはミステリー(ハードボイルド)に分類して良いだろう。私は個人的に本シリーズを「目明かしハードボイルド」と呼んでいる。
氏は海外ミステリー好きであったらしくこのような作品もきちんと読ませてくれる。ただ、ハードボイルドとして読むには、主人公伊之助のキャラクターにもう少し灰汁の強さが欲しい気がする。伊之助の持つ規範がどのようなものか、そういったことが描き込まれていないことが少し残念である。しかし、ミステリー小説として十分読み応えがあるものだ。
- 作者:藤沢 周平
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1988/09/28
- メディア: 文庫