佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『白い国籍のスパイ/ヨハネス・マリオ ジンメル[Johannes Mario Simmel](著) , 中西 和雄 (翻訳)』(祥伝社 ノン・ポシェット)を読む

 白い国籍のスパイ〈上〉闇の部 、〈下〉光の部 を読み終えました。charlieさんご推奨の長編ミステリーです。

 

 写真のとおり本の帯に養老孟司氏絶賛! 読んでいて嬉しくなる・・・こんな小説、ほかにはない!」とある。出版社の宣伝文句には騙されることが多いのだが、この文句に偽りはない。単に面白いだけでなく、他に類のない個性的な小説だ。まさに「こんな小説、ほかにはない!」なのだ。

上巻裏表紙の紹介文を引く


「逮捕する?誰がだ」「ゲシュタポがだ」一九三九年、第二次大戦前夜の暗雲たれこめるドイツ。出張中のロンドンの若き敏腕銀行家、トーマス・リーヴェンは、突然無実の罪で逮捕された。「なぜ、私を…」窮地に追い込まれたリーヴェンだったが、ゲシュタポは、釈放するかわりに法外な条件を突きつけた。これが、悪夢とも呼ぶべきスパイ生活の始まりだった…。


 第二次世界大戦前後のヨーロッパを舞台にしたスパイものだ。スパイものには緊迫感を持って書かれるものが多いのだが、この小説は軽妙洒脱でユーモアたっぷりに書かれている。主人公トーマス・リーヴェンが類い希な才能を遺憾なく発揮して、ドイツ・ゲシュタポだけでなく、イギリス、フランス、ソ連アメリカ各国のスパイを出し抜き、一泡吹かせてしまうまことに痛快な小説である。しかも、このトーマス・リーヴェンという男、見目麗しく優男であるが、柔術をたしなみ剛の者でもある。しかも知性に溢れユーモアを解するナイスガイ。騎士道精神に溢れ、女性を「Lady」としてあつかう紳士である。当然、女性にもてる。女性はトーマス・リーヴェンに会うなり全員が彼に魅了されてしまうのだ。しかし、トーマス・リーヴェンの一番の魅力は、実は女性に甘いところである。お人好しで女性に弱く女性には何度も手痛い目に遭わせられる。そんな目にあっても、この男、愚痴一つ言わず、その女性を許してしまうのだ。許すというより、そんな目に遭わされてなおその女性に惚れている風情がある。男としてかくありたいものだ。

 このような素晴らしい古典(といっても良いと思う)に出会うきっかけを作って下さったcharlieさんに深謝。