佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

5月の読書メーター

5月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2847ページ

 

 

5月は8冊と通常ペースで読めました。全て面白く読ませていただきました。高田郁さんの「澪つくしシリーズ」はますます面白くなっていきます。誉田哲也さんからも目が離せない。どの本を読んでも期待を裏切ったことがない。しばらく有川浩さんを読まなかったので禁断症状が出た。とりあえず『シアター!』を読み虫押さえ。

 

 

 

シアター! (メディアワークス文庫)シアター! (メディアワークス文庫)
有川氏の小説を読んでいていつも感じることは、小説の奥底にある氏の想いは気高くしかも深いものがあるにもかかわらず、あくまで小説としては軽く読みやすいものに仕上げているのではないかということ。そして文学性よりも読者を楽しませることを優先しているのではないかということ。読者を自分の作品世界に引き込み、楽しませ、充分に満足させること、それがプロの小説家なのだと有川氏は言っているような気がする。
読了日:05月28日 著者:有川 浩

 

 

 


天平の甍 (新潮文庫)天平の甍 (新潮文庫)
小説としてもっと劇的に描くことも可能だったはずだが、井上氏はあえて恬淡とした筆致で描いている。そこに井上氏のどのような意図があるのかは計り知れないが、そのような描き方をすることでそれぞれの留学僧の生き方について読者自身が自らの視点で思いを馳せることが出来るのではないかと思う。そして海の藻屑と消えた数々の無名の留学生を想うとき、歴史とは「才能の屍の積み重ね」なのだと改めて想う。
読了日:05月25日 著者:井上 靖

 

 


借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫)借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫)
このシリーズなかなか良いです。リストラ請負人といういけ好かない仕事を生業にしている主人公・真介によこしまな思いはないし、相手を蔑むようなことは決してしない。一方、リストラ対象となる社員もまた決して使えない人間ではない。その証拠に彼(彼女)たちは決して会社にぶら下がってはいない。首を切られるかもしれない状況にあっても、他のせいにしない。つまり一人の人間として自立し、逆境にあってなお、毅然としているのだ。垣根氏は読者に対しこう言いたいのではないか。「矜持を持て。大切なのは生きることではなく、生き方なのだ」と。
読了日:05月23日 著者:垣根 涼介

 

 


ソウルケイジ (光文社文庫)ソウルケイジ (光文社文庫)
430Pたらずの小説だが、200P近くまで読むと大方のからくりが読めてしまう。その想定は概ね当たっていた。だからといって本書がつまらない小説だというわけではない。謎が解けてしまってはミステリとしての楽しみは半減するかもしれないが、この物語にはそれを補ってあまりある人間像がある。読者はそれぞれの登場人物の心情に共感しながら応援する。読者は想定したシナリオがはたしてそのとおりであったことを確認しながら読み進め、そうあって欲しかった結末を見て救われる。
読了日:05月20日 著者:誉田 哲也

 

 


リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)
主人公の樋口顕は決してヒーロータイプではありません。ワーカホリックぎみな中年男、妻を愛しているが多くの日本人家庭と同じく愛情表現は控えめ、というより愛情表現は皆無に等しい。一人娘を愛しているが娘が自分をどう見ているか気になる40歳。仕事上も上司や部下の自分に対する評価がどうなのかが気になり、ときどきそんなことをうじうじ気にしている自分がイヤになる。そんな強行犯係係長(ハンチョウ)樋口顕が普通にカッコイイ!
読了日:05月20日 著者:今野 敏

 

 


朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)
ひとたび事件が起これば家庭を顧みず捜査に没頭する警視庁強行犯係・係長(ハンチョウ)樋口顕。そんな夫に愚痴ひとつ言わず内助の功で支える妻・恵子。結婚して日常を重ねていくうちにいつの間にか二人の関係は男と女から夫と妻、家族へと一見冷めた関係になっている。果たしてそれで良いのかと。しかしやはり私は日本人、しかも旧人類である。「公(仕事)」と「私(家庭)」があれば、公を優先するのが当然だと感じるし、それが美徳だとも考えている。そして、そのような考えの私にとって主人公の妻・恵子さんは実に魅力的なのだなあ、これが。
読了日:05月17日 著者:今野 敏

 

 


想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)
「雲外蒼天」の相と占われた主人公の澪と、「旭日昇天」の相と占われた高麗橋にある大店のこいさん野江。大坂で生まれ仲良しだった二人はひとたびは離ればなれになったが、数奇な運命は江戸でふたたび交差する。女であるがゆえに正当に評価されることのない時代に料理人を志し、懸命に働く澪に降りかかる艱難辛苦。自らの努力と創意でその苦難を乗り切る。そしてそこには澪を温かく見守る周りの人々の人情があった。物語を読み進めるにつれ澪の活躍に拍手喝采し、下町の人情に心温まり目頭を熱くします。
読了日:05月12日 著者:高田 郁

 

 


お腹召しませ (中公文庫)お腹召しませ (中公文庫)
『五郎治殿御始末』につづく幕末もの短編集。さすが浅田氏は短編の名手、どれも素晴らしい。しみじみとした悲哀を感じるが、浅田氏お得意の「泣かせ」はない。泣ける話も入れてほしかったな。
読了日:05月07日 著者:浅田 次郎

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