佐々陽太朗の日記

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『沈黙の春(SILENT SPRING)』(レイチェル・カーソン/著、青樹簗一/訳、新潮文庫)

7月31日

沈黙の春 SILENT SPRING

   ブリーイエ博士の言葉――

私たちが危険な道を進んでいることは疑うまでもなく明らかだ……私たちはほかの防除方法を目指して研究にはげまなければならない。化学的防除ではなく、生物的防除こそ、とるべき道であろう。暴力をふるうのではなく、できるだけ注意して自然のいとなみを望ましい方向に導くことこそ、私たちの目的でなければならない……。

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沈黙の春(SILENT SPRING)』(レイチェル・カーソン/著、青樹簗一/訳、新潮文庫)を読みました。

裏表紙の紹介文を引きます。

自然を忘れた現代人に魂のふるさとを思い起こさせる美しい声と、自然を破壊し人体を蝕む化学薬品の浸透、循環、蓄積を追究する冷徹な眼、そして、いま私たちは何をなすべきかを訴えるたくましい実行力。三つを備えた、自然保護と化学物質公害追及の先駆的な本がこれだ。ドイツ、アメリカなど多くの国の人々はこの声に耳を傾け、現実を変革してきた。日本人は何をしてきたか?

一九五〇年代にアメリカにおいて、大量の農薬や殺虫剤をまくという暴力的な化学的防除策が惹き起こした生態系破壊、人体への悪影響を克明にレポートし、全世界に警告を発することで環境汚染問題を先駆的に取り上げた書です。人類が自然の摂理に逆らい、自らに都合の良い自然を創ろうと思い上がった行動に出ても、人類に都合の良い環境どころか自らの生存に危険が迫るという好まざる結果を生んでしまったという皮肉。それは自然は人類の浅知恵など及びもしない複雑で精緻なバランスを持っており、人類がその一部を無理矢理変えようとすると、その変化は一部にとどまらず次々と別の変化を連鎖的に惹き起こすからである。

本書が書かれたのは一九六二年。それから五〇年近く経った今、本書を読むと、後世に如何に意味のある書であったかをあらためて思い知る。

余談だが本書が書かれた頃、私は未だ小さい子供だった。うちは農家だったので納屋に農薬や肥料が入った袋がいろいろと置いてあった。小学生になる前の幼い頃、納屋で遊んでいて「ひきつけ」をおこして死にそうになったことがあると親から何度も聴かされた。『沈黙の春』を読みながら、ひょっとしたら農薬の影響だったのではないかなどとあれこれ考えた。また小学校六年生頃のこと、塩素系洗剤を使っていて気分が悪くなり激しく嘔吐したことがある。今、考えると一歩間違えば命がなかったのかも知れないと思う。我々の周りには化学系の危険が驚くほど数多く潜んでいる。

 

沈黙の春 (新潮文庫)

沈黙の春 (新潮文庫)

 

 

 

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