この主人公の
流され方に、
自分は違うと
言い切れますか。
- 作者: 佐藤正午
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/07/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『身の上話』(佐藤正午/著・光文社)を読みました。
2009年12月26日、週間ブックレビューで中江有里さんのオススメ本として紹介された本です。
さすが中江さん。間違いないとは思っていましたがストライクど真ん中!良い本でした。
番組HP上で紹介された紹介文を引きます。
海沿いの小さな町の書店員・古川ミチル。ミチルを?妻?と呼ぶ語り手が彼女の身に起きた出来事を淡々と語り続けます。ちょっとしたことから東京へ行くことになり、職場の先輩に頼まれて買った宝くじを持ち逃げすることになってしまったミチル。東京にいる幼なじみの男性のもとに身を寄せるも、宝くじの1枚が2億円の当選券だったことからミチルの運命は大きく変わり始めます。
私はこの小説を読む間中「運命」という言葉を思いうかべていました。
この小説の主人公"古川ミチル”の流され方には、単に流されていると片付けられない事情があります。
「あぁ、そうなってしまうよなぁ」と思ってしまうような状況がそこにあるのです。
もちろん違う道を選ぶこともできたはずです。
しかし、自分が違う道を選ぶだろうかというと自信が持てない。
ミチルと同じ道を選んでしまうのではないかと、いやきっと同じ道を選んでしまうと思う自分に愕然とする。
読み終わって、しばらくして小説の世界とある程度距離をおくと、やっぱり違う道を選んだだろうと思うのですが、
小説を読んでいるあいだは迷いながらもミチルと同じ選択をしてしまう。
このあたりが佐藤氏の巧さだと思うのです。これこそ小説。これこそミステリだと太鼓判を押したい。