佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2010年1月の読書メーター

2月5日

2010年1月の読書メーター

1月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3451ページ


 

2010年の新春は森見登美彦氏の『新釈 走れメロス 他四篇』からスタート。森見氏の小説に出会ったのは昨年の僥倖であった。1月は10冊と一日100ページを超すペース。結構読みました。1月の収穫は有川浩氏の『空の中』。すばらしい小説でした。今、有川氏のデビュー作『塩の街』を読んでいる最中だが、これがまためったやたらと面白い。有川浩氏との出会いを心から喜びたい。もう一つ、佐藤正午氏の『身の上話』もすばらしい小説でした。こちらはベテラン作家の巧さが光った作品。NHK「週間ブックレビュー」で中江有里さんが推奨されただけのことはあります。私もお薦めしたいと思います。


身の上話身の上話
私はこの小説を読む間中「運命」という言葉を思いうかべていました。この小説の主人公"古川ミチル”の流され方には、単に流されていると片付けられない事情があります。「あぁ、そうなってしまうよなぁ」と思ってしまうような状況がそこにあるのです。もちろん違う道を選ぶこともできたはずです。しかし、自分が違う道を選ぶだろうかというと自信が持てない。ミチルと同じ道を選んでしまうのではないかと、いやきっと同じ道を選んでしまうと思う自分に愕然とする。
読了日:01月29日 著者:佐藤正午

太田和彦の居酒屋味酒覧 第2版―精選173太田和彦の居酒屋味酒覧 第2版―精選173
この本の1ページ、1ページを捲りながら、その居酒屋の佇まいに思いを馳せ、最初の一献を口に含む我が身を想像する。それだけで私は幸せになれるのです。そしていつかはその店の暖簾をくぐろうと静かに決意する。そうすることで明日への希望、生きる活力が湧いてこようというもの。ありがたい本です。今後、遠方への出張には携帯しなければなりません。全国の居酒屋を飲み歩くのだ。
読了日:01月27日 著者:太田 和彦

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)
ミステリーは読者を驚かせればよいというものではありません。読者が想像しないような意外な結末を用意すればよいというものでもありません。確かに、いろいろな技巧が凝らされていました。その技巧は高度なものであることも認めます。しかし、私に言わせれば、これは小説ではありません。以上。
読了日:01月25日 著者:道尾 秀介


空の中 (角川文庫)空の中 (角川文庫)
生物と無生物。感情と論理。政府と自衛隊員。宮じいと僕、そして佳江。春名高巳と武田光稀三慰。単一と分裂、そして統合。淡き恋、ふたつ。この小説を読むと、如何に我々が非論理的世界に生きているか、如何に他を顧みず自分勝手に生きているかを思い知る。そして如何に人生がすばらしいかを・・・
読了日:01月24日 著者:有川 浩


遊戯 (講談社文庫 ふ 45-6)遊戯 (講談社文庫 ふ 45-6)
読まなければよかった。藤原氏がこの物語にどのような結末を用意していたのか、気になって仕方がない。思えばこの本を手に取った時から読んで後悔することはわかっていたのだ。だって、未完の小説なんて、〆の河豚雑炊が無い「河豚のフルコース」のようなものだからね。かくなる上は、どなたかに物語の続きを書いてもらうしかない。1989年にロバート.B.パーカーがレイモンド・チャンドラーの遺作「プードル・スプリングス物語」を完成させたように。どなたかお願いします。大沢在昌さん、石田衣良さん、志水辰夫さん、お願いします。
読了日:01月18日 著者:藤原 伊織

つばさよつばさ〔文庫〕つばさよつばさ〔文庫〕
考えさせられるのは「ありがとう」に出てくる日本の青年。極端な例ではあるが、これが甘ったれた現代日本人の姿だ。最近の日本の姿は情けないこと甚だしい。誰もが国や行政や企業に対して「アレをして欲しい。コレをして欲しい」と声高に叫ぶ。それをしてくれなければひどいことのように非難する。民主党政権になってその傾向にさらに拍車がかかっている。日本は「おねだりの国」になり果ててしまった。もうこの国には「自己責任」という言葉はない。嘆かわしいことだ。
読了日:01月18日 著者:浅田 次郎

或る「小倉日記」伝 (新潮文庫―傑作短編集)或る「小倉日記」伝 (新潮文庫―傑作短編集)
収められているのは12編。その多くの作品に共通するのは、非凡な才能を持ちながら世間から正統な評価を受けられない人を描いている点である。評価されないのは生まれ、貧乏、学歴、身障の故である。貧乏な家に生まれて、高等小学校卒業後すぐ働きに出て、苦労しながら小説を書いた氏の境遇が色濃く反映されていると思える。その思いは相当深く鬱積しており、屈折しているようにも見える。怨念といってもよいだろう。この劣等感にも似た想いの深さが氏をして原稿用紙に向かわしめたのか。
読了日:01月17日 著者:松本 清張

闘う純米酒 神亀ひこ孫物語闘う純米酒 神亀ひこ孫物語
日本酒について、教えられ、考えさせられるところ多い本です。埼玉県は蓮田の小さな蔵、神亀酒造七代目蔵元、小川原良征氏が昔ながらの酒造りにこだわり、造りの全量を純米酒に切り替えることによって本物の日本酒を全国に知らしめていった軌跡を追う。この本を読むと、小川原氏のような方がいて、我々が美味しい酒をいただけるのだという感謝の念でいっぱいになる。実際に「ひこ孫」を飲んで、これが本来の熟成酒なのだと再確認した次第。ありがとうございます。
読了日:01月09日 著者:上野 敏彦

四畳半神話大系 (角川文庫)四畳半神話大系 (角川文庫)
ここにひとりの男がいる。頭脳は明晰なれど、現実世界を生き抜くにはいささか実戦不足。他にとりたてて特徴なく、容姿も十人並みである。そんな彼の最大関心事は学問でもなく芸術でもなく女である。しかし彼の有り余る知性はそれをあっさり認めてしまうことを許さない。彼は屈折した自意識過剰という名のストイシズムの権化である。そんな彼にも運命の乙女が現れる。いかにして彼は運命の女(ひと)に巡り逢えたのか?それをここで語るわけにはいかない。「成就した恋ほど語るに値しないものはない」けだし名言である。
読了日:01月06日 著者:森見 登美彦

新釈 走れメロス 他四篇新釈 走れメロス 他四篇
小説を書くとは何なのか。映画を撮るとは何なのか。恋とは何か。学生の街、京都には無駄遣いされた才能の屍が累々と積み重なっている。その果てしない浪費の中にキラリと光る美があり、真実があり、あるいは真実と見紛う幻がある。森見氏の小説を読むと京の街をぶらつき、才能の屍を拾い集めたくなる。
読了日:01月03日 著者:森見 登美彦

 

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