「野菜は旅が好きで何処にでも出かけ、気に入ったところで根を下ろして定住し、その地に順応して姿、形や性格(味)までも変えていく」ものだと思うと、とてもロマンチックでもある。人間も旅をするし旅が好きだ。古来そのポケットに「種」はあり続け、一緒に旅をしてきた。そして一つの食物としての役目にとどまらず、根を下ろした地域に独特の文化さえ創りだす大きな力にもなってきた。古代エジプトやギリシャからはるばる旅してきたという歴史に思いを馳せながらソラマメを収穫してすぐに茹で、塩をまぶしながら飲むビールは、また一味違ったものになる。
(本書P188より)
『種と遊んで』(山根成人・著/現代書館)を読みました。
種子は旅をする。旅先で根を下ろし、その土地に順応し形や性質を変えて定住する。そして、その性質(味)の中で素晴らしいものが、美味しい野菜としてその地の農家に受け継がれていく。我々の祖先は、そして我々はその恵みにあずかってきたのです。山根さんが行ってこられたフィールドワークが、多くの人々に受け入れられ拡がりを持ちつつあります。私も微力ながら応援させていただきたいと思います。
月イチの飲み会に私がこの御本を持っていくと、山根さんは二宮尊徳の歌とともにサインをして下さいました。
この秋は 雨か嵐か知らねども 今日のつとめの 田草刈るなり
まだきていない将来のことをあれこれ心配するより、今日なすべきことに全力を尽くすことの大切さを詠んだものでしょう。未熟な私への戒めとしてこの言葉を御本と一緒に大切にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。