佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

【鼓舞】

今日の『緑雨警語』


 

元氣を鼓舞すといふことあり、金魚に蕃椒水(たうがらしみづ)を與(あた)ふる如し、短きほどの事なり。


                       -『緑雨警語』 (冨山房百科文庫)P21より-

 

 

 最近とみに「モチベーション」という言葉を聞く。食傷ぎみである。「メンバーや部下のやる気を鼓舞するために……」というやつである。こういうことを云うヤツの理屈は大抵は「ご褒美」である。要はご機嫌取り。あるいは馬の前にぶら下げるニンジンの類である。そんなものでモチベーションとやらが上がるのなら世の中、苦労はしない。駄々をこねる子供に飴をしゃぶらせるがごとき対応はその場しのぎにしかならず、しかもその者の為にもならないことは明らか。逆に叱咤激励の類もその効果のほどは疑わしい。「短きほどの事なり」と切って捨てた斎藤緑雨の言葉に胸のすく思いである。

 ちなみに、編者の中野三敏氏が緑雨のこの言葉につけたコメントがふるっている。曰く「長ければ鼓舞とは言い難し、拷問なり」。笑える。