佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

乙嫁語り(おとよめがたり) 2

乙嫁語り 2巻』(著者:森薫/BEAM COMIX)を読みました。

 

 

まずは出版社HPから紹介文を引きます。


しあわせも不安も越えて結ばれる、遊牧民と定住民の昼と夜。
遠くからやってきた騎兵の群れは、アミルのお兄様と、おじ様たち。結婚式以来のなつかしい顔ぶれに、大きな笑顔を見せるアミル! しかし馬上から見下ろしたまま、おじはこう言った「逆らうつもりか、村へ帰るんだアミル」……!!! 悠久の大地を舞台に描かれる、20歳のヨメと12歳のムコとの恋愛、そして……。人気絶好調、第2巻!


 出身部族の長たる叔父から結婚を解消して戻るよう命令されたアミル。当時の中央アジアにおける結婚は家と家の縁結びでもあったし、父または父に代わる長の命令は絶対。実力行使でアミルを連れ帰ろうとする動きに、夫たるカルルクの家族と部族は抵抗。アミル自身も帰りたがらない。刀を抜いてアミルを取り返そうとする叔父の前に立ちはだかり、命がけでアミルを守るカルルク。身を呈して自分を守ってくれたカルルクに姐さん女房アミルは嫁心がついた。19世紀の中央アジアで生きていくなら命のやりとりは十分あり得ること。大切なもののために命をかけて闘う覚悟は一人前の大人なら皆が持っていたはず。わずか12歳のカルルクもいつ死んでも良い覚悟で生きていた。けっして命を軽んじるのではない。命の儚さを知っているからこそ、愛する人はかけがえのないものなのでしょう。その人を守るためなら己が命と引き替えにしても悔いはない。その覚悟を幼い夫に見たとき嫁心はついた。嫁心とは相手の覚悟を同じ気持ちで受けとめるということか。
 当時のアジアの結婚について考えさせられる巻であった。当時の家族の長の命令は絶対で、娘の嫁ぎ先も家の事情で決められる。アミルもカルルクも結婚するまでお互いの顔や性格ばかりか年齢すら知らなかった。それでも家と家が結婚を決めればそれは成り立つ。そのような結婚であっても、結婚したからにはその相手を大切にする。皆が皆、そうではなかったかもしれない。しかし、多くはそうしたはずである。妻を娶ったからには、妻を慈しみ、妻の身に危険が及ぼうとしたら命がけで妻を守る。そうした姿に妻は夫を一途に愛するようになる。その気持ちに夫もまた応える。結婚はお互いの愛が先にあって成り立つものだとするのは現代の常識かもしれないが、まず先に結婚があって、その後にお互いの愛がついてくるというのもあり得ることなのだ。考えてみれば日本でもつい最近まではそうであったのだから。そして、そのような結婚のあり方でも、今の夫婦より、より深くお互いを思いやり愛し合うということもあるのだということでしょう。結婚はそこに至るまでの過程の結末ではなく、二人が一緒になってからのありようなのだということを改めて考えさせられました。