佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

夏期限定トロピカルパフェ事件

 小佐内さんは、甘いものを二番目に愛している。甘いもののためなら、体力と資金の許す限りどこまでも行く。

 ……そして、そんな小佐内さんが一番愛しているのは、実は「復讐」だったりする。

                                     (本書P19より)

 

 

 

夏期限定トロピカルパフェ事件』(米澤穂信・著/創元推理文庫)を読みました。三日前のブログ『春期限定いちごタルト事件』につづき、この季節感の無さは何なんだ? えっ、なめとんのか、コラッ! とお考えの諸兄諸姉もいらっしゃることと思います。

http://hyocom.jp/blog/blog.php?key=207468

実際に『秋期限定栗きんとん事件』が出版されていることを考えれば、「それを読まんか、バカ野郎!」とのお叱りもごもっとも。ひたすら頭を垂れるしかないのですが、これには事情があるのです。これらの小説は<小市民>シリーズと呼ばれる一連の作品であって、シリーズものである以上、それを味わう正しい方法は第一作から、第二作、第三作へと順番に読んでいくしかないのです。そうでなければ著者の目論見の一部を無視してしまう事になるのです。『栗きんとん』を食べる前に『いちごタルト』を食べ、続いて『トロピカルパフェ』を食べ、しかる後に『栗きんとん』を食べる。それが著者に対するリスペクトを表すことになるのです。

 

出版社の紹介文を引きます。


小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を!そんな高校二年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは“小佐内スイーツセレクション・夏”!?待望のシリーズ第二弾。


 

 

思えば私が米澤穂信氏と出会った作品は本書第一章「シャルロットだけはぼくのもの」であった。『きみが見つける物語 十代のための新名作 休日編』(角川文庫)にこの一編が収められていたのだ。秀逸な作品で私のお気に入りである。

それにしても小学生のような背丈、ボブカットに童顔の女子高生、その名も小佐内ゆきは怖いですぞ。好物の甘いものは二番目で、一番目は「復讐」だとは恐れ入る。

私がまだ女という生き物にあこがれと幻想を抱いていた純真な青年23歳の頃、「Tさん(私のこと)、女って怖いのよ」とそっとつぶやいたY子さんの言葉を思い出す。コワイ、コワイ・・・・